鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2020.09.24
新型コロナウイルスの影響で注目されていた2021年度入試の出題範囲ですが、神奈川県の範囲削減はわずかで、過去問や対策テキストが使えるかどうかという点では大きな問題がなかったように見え、安堵のため息が神奈川県中の塾から漏れました。
しかし、です。
その後、8月に発表された入試出題範囲削減に伴ういわゆる「除外リスト」は私の安堵のため息を青息吐息に変えるくらいのインパクトがありました。除外漢字その数なんと764字。これは中学校で学習する漢字1110字の69%にあたります。除外し過ぎ、です。
過去数年、塾生の高い正答率を支えてきた自作プリントたちが、ただの紙切れに、、、もといデータなのでただのキロバイトに──。
悲観していても仕方がないので、各方面からの期待に応えて(結構がんばって)2021年度入試(限定)除外リスト完全対応漢字教材80を作成しました!
神奈川県の受験生のみなさんのお力添えになればと思い、販売することにいたします。
の二種類の販売です。
目次
新型コロナウイルスの影響に伴う入試出題範囲削減についての2020年7月3日の県教委発表の抜粋です。
ここから分かることは除外リストに掲載されている漢字は、
ということになります。文章題に使用される場合はルビがつくそうですね。
そして、この発表から二ヶ月が経過し、去る8月28日「除外リスト」が発表されました。それがこちら。
……多っ!
とにかく除外しまくっているのですが、中にはまさかの除外漢字も。
江・含・充・粗・抵・販・妨・刃
もう除外されている漢字だけで文章も作れちゃいます。
凡庸と愚かさが倒錯する。
奴隷への苛酷な懲罰を忌むべきことだと憤慨した妃。
いっぽうで煩悩を拭えず賄賂の誘いに魅了されてしまったがゆえ、更迭の憂きめに遭った帝。
妃が侮蔑と寂しさを含む涙を瞳に湛えるも、帝は惨めにも猛り狂う。
嵐の嘲りが渦を為して聴こえる。
泥沼だった──。
(中本 順也「除外リストな物語」)
全部除外漢字です(笑)。
冗談はさておき、このリストからすると過去20年の高校入試でもっとも多く出題されたことで有名な「指摘」を出題することも出来ません。
とんでもないことをしてくれたな、と。
なぜって、漢字の学習は語彙学習にも繋がるわけです。除外リストを意識してたら「抽象」も「真摯」も「殊勝」も「漸次」も「暫時」も書けなくても読めなくてもいいってことになります。
「覚えなくていいじゃんラッキー」と思った方。
全然ラッキーではありません。
受験勉強での漢字学習を通して語彙を身に付け、訓読みと共に熟語のルールを知り、形声文字を理解することで部首との関係性を学んでいく、ということが出来なくなります。畢竟、説明的文章を読むときも苦労しますし、特色検査の高難易度の超長文出題文を読むのも大変です。
これまで語彙の勉強、頑張ってきた方にはアドバンテージがありそうですが、そうでない方は少し苦労するかもしれません。
でも、まぁ発表されてしまったものは仕方ないですし、出題される範囲内で学習が出来れば効率もよくて、他教科の学習にも力を注ぎやすいですよね。
ということで、除外リストを反映させて作成した対策教材の内容です。
・問1(イ)の徹底対策
・すべて「客観式」=「選択問題」
・80の異なる問題
・難易度 普通〜やや高め
・解答付き
教科書でも、ワークでも、塾のテキストでも、漢検でも、これらの除外漢字を考慮した形の問題は存在しません。
入試対策テキストである県トレ(10題)でも、極める神奈川(20題)でも、入試同様の選択問題は数が少なく、不足しています。
また、本教材では選択肢が五択です。四択から五択になることで難易度は一気に上がると言われており、学習の幅の広がりもねらいです。
他には語彙力低下対策として、出題可能漢字の中から少し難易度高めの語彙を載せることで、言葉調べを促し語彙力を高めることも企図しています。
この教材をダウンロード&印刷しても、ひたすら選択肢を選ぶだけの学習では効果薄です。
おすすめの取り組み方を以下に示しますので、参考にして取り組んでみてください。
BASEにて受験生向けには問題PDFデータを1000円(税込)で販売します。基本再配布は禁止です。
塾・学校の先生対象としてwordデータで販売します。編集・再配布可能です。ただし、当方macで作成しているため多少レイアウトが崩れる可能性がありますので、そちらだけご了承ください。
(頑張って作成した中本をねぎらう意味で高い方買ってやるよ! という方もこちら)
①生徒の到達度に応じて四択にカスタマイズ
②1日1題テスト推奨。1分で終わる
③順番やレイアウトは変更する
順番やレイアウトについては、生徒・保護者も購入する可能性があるので変更してお使いいただくことをお勧めします。「先生“あのプリント”使ってますね?」とか言われると沽券に関わりますし。
除外漢字を除外すると入試問題の出題の幅が狭まります。元々、漢字選択の問題は小学校該当漢字から出題されていたという説はありますが、リストを考慮すると読みも含めて随分と絞り込まれてしまう印象です。
そこで、2021の漢字を巡る出題はこうなるのでは? ということを予想してみました。
①超簡単になる
②めったに聞かない語彙が出る
③漢字がらみの問題数が減る
①簡単になる可能性はそこまでないかな、と。県教委の発言からはあくまで平均点は例年通りに持っていくことが汲み取れます。漢字は難易度調整がしやすいので、ここの変動はあまりなさそうです。むしろ読みの出題に苦慮しそうですので、その分の調整が選択問題の方に来て難化するかもしれませんね。
②今回のプリントにも出題したのですが、「好事家」や「下戸」、「説破」など中学生として馴染みが薄い語彙で作問してくる可能性は大いにあります。そうなった場合は、読書家が有利かもしれません。
③漢字がらみの問題数が減るかもしれません。特に読みを減らしてその分を読解の配点を増やすことで調整してくることも十分に考えられます。国語は数年間、出題形式も配点も変化がありません。これを機に変えてくる可能性はあります。
さて、結果やいかに。
漢字以上に英単語も影響が大きいですから、リスニングテスト含めて傾向の変化は必至ですよね。
今回、このプリントを作成していて思ったことは、結構大きな機会損失であるということ。昨年まで作成していた同様の100個の選択式問題は、入試に出題されるかされないかは置いておいて、語彙学習には多大な効果があったと思います。
実際に高校生になった生徒から、「直前漢字プリントや語彙テストで勉強した熟語って大学入試でめっちゃ出てきますね」というコメントももらっています。
これまで語彙や漢字学習を頑張ってきた方が、「高校入試で出題されないから無駄になった」と思う必要はありません。今後に必ず生きてきます。
逆にこれまでやらずに受験勉強でもやらないことになった受験生の方は、どこかで取り返す学習をしましょう。損失を埋めてください。入試が終わったら漢検を受けるといいですね。
ご利用いただいたみなさんが入試の漢字で満点を取れたら、また漢字学習を通して言葉への興味を持っていただけたら大変幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
問1(ウ)の文法識別問題50も販売しています。2020年でまさか「が」が出題されるとは思いませんでした。よろしければ。