受験を超えて

鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -


国語力を高める親の魔法の問いかけ

2017.09.17


「うちの子、国語力がありません」というご相談をよく受けます。今回は、「国語力がない」ことでお悩みの保護者の方に、魔法の問いかけを伝授いたします。もちろん、一朝一夕に国語力を伸ばすことなんてできませんが、子どもが幼ければ幼いほど、親子や家庭での会話で言葉の力≒国語力をつけることができます。会話の際に親が心がけておきたいことと、問いかけの方法について書いていきたいと思います。幼稚園児から小学校四年生くらいまでが対象ですが、話題を高度にすれば小学校高学年にも応用可能です。

言葉が巧みになると、吸収できる情報量が増え、子どもたちはどんどん「表現」をしてくれます。話すこと、書くこと、発表すること、論じることなど、様々な場面で言葉の力は応用されていきます。言葉が巧みであることは、可能性を広げ、これからの時代で求められている思考力も判断力も表現力も高めてくれるのです。

国語力がなかなか育たない家庭の会話

一つ一つの会話が言葉の力や好奇心を育みます。子どもとの会話、ワンワード(一言)で行っていませんか?

「宿題は?」
「テレビッ!(怒)」

末路は(小学校高学年では)こうなります。

親「宿題は?」
子「終わった」
親「本当に?」
子「やったし(怒)」

親「テレビッ!」
子「…(無言でふてくされて消す)」

こんな家庭で言葉の力が育つと思いますか?
子どもは親の言葉を聞いて育ちます。一言で聞かれたことに対しては、一言で答えるようになります。そして、文章を構成することを放棄し、言葉以外で伝達しようとするようになります。親の話しかけ方、問いかけ方で子どもの言動や行動が大きく変わっていくのです。

国語力を伸ばすために大切な五つの心がけ

では、どうすれば良いのでしょうか。日々の生活の中で少しずつで構いませんので、会話の質を変えていきましょう。お子様の国語力を伸ばしていくため、お父様お母様としては次のようなことを心がけてみてください。

  1. ちょっとした会話のやり取りでも一文を長くする
  2. 少し難しめの言葉を入れてみる
  3. 先回りして答えを汲み取らない。自分で説明させる
  4. 抽象化と具体化をさせてみる
  5. 因果関係を説明させてみる

詳しく見ていきましょう

ちょっとした会話のやり取りでも一文を長くする

目的語(〜を、〜に)を意識しながら、会話をするようにしましょう。「てにをは」を気にする親も減ってきています。おうむ返しは対話を促し、一つ一つの会話を長くする上では効果的です。会話を長くすることは、子どもに話を聞く集中力をつけることにもなりますし、脳内の一時記憶へ貯蔵しする力を鍛えられます。この一時記憶の能力は、後々の学習や討論などにおいてもかなり大事です。

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少し難しめの言葉を入れてみる

子どもを侮ってはいけません。「分からないだろう」と思ってわざと簡単な言葉を使いすぎると語彙力は伸びません。難しい言葉を使って直後に説明してやればいいのです。例えば、「桐生の走りは抜群だね、あっ抜群ていうのは、他の人よりもずっとすごいってことね」という感じです。難しい言葉を自然に学べますし、分からなければ親に聞こうという気にもなります。また、分からないことや難しい内容でも説明してもらえれば分かるのだということに気づきます。

先回りして答えを汲み取らない。自分で説明させる

国語力がない子の家庭に多く見られます。親が何でも子どもの言うことを先回りする、汲み取る、という状況です。せっかちな親としっかりした親、そしてコミュニケーション能力が高い親が陥りがちなことです。
例えば、「えっとね、今日先生と太郎くんがね、言い合っててね、えっとね、太郎くんがね、先生に大きな声でね、えっと、叱られてね…」「先生に強く叱られて太郎くんが泣いちゃったの?」「うん、そう」 fin.という感じです。

子どもが一生懸命説明しようとしていたことを耐えきれず待ちきれず、答えをこちらで準備してしまうパターンです。大人同士の会話では汲み取ってあげると、スムーズに話が進みますが、子どもに対してはやってはいけません。せっかく文章を頑張って構成しようとしていた子どもの努力は水の泡です。最後まで聞いて、それでも分からなければ、「それってどういうこと?」と聞き返してあげてください。「答えの先回り」、これはかなり危険です。

抽象化と具体化をさせてみる

これは、後述しますが、言い換えの能力を鍛えるということです。大きく捉えて抽象的に言ったことが分からなければ、細かく具体的に説明する。一部分を丁寧に話しても伝わらなければ、大まかに広く説明してみる。それが人に伝えるということです。なるべく親がその力を促してあげられるといいですよね。上位語、下位語の説明とかもいい練習になります。(例:乗り物←→車←→トラック、乗用車、バス)

因果関係を説明させてみる

根拠を持って理由を明確にして述べる、ということは論理的思考の第一歩です。論理的思考力と批判的思考力の育成が必要と言われています。目の前で起きていることに対して、「なぜ」を持ち、根拠を考える。そして、それを少し俯瞰して物事の関連性をつかんでいくということが重要です。その最初のとっかかりは、幼少期の「なんで」だと思います。この子どもが発する「なんで」に向き合うことが大事です。親の接し方としておそらく正しいのは、その場で答えを教えることではなく、「なんでだと思う?」と聞き返して一緒に考えてあげることです。

五つの心がけのまとめ

我慢と忍耐と余裕が必要です。あとは笑顔。親が慌ただしそうにしていたり、雰囲気が重かったりすると、子どもだって長いセンテンスで答えたくはありません。子どもが困っていると、先に答えを言いたくなったり、もういいよと思いたくなったりしますが、ここで我慢です。親の「待ちの姿勢」が子どもを最も育てます。これは、好奇心の醸成と子どもの自己承認にもつながりますので、ぜひ待ってあげてください。

また、屁理屈やいい訳を言い始めたらチャンスです。子どもが言葉で親に勝負を挑んできているということの現れです。決して、頭ごなしに怒ったり、ないがしろにしたりしてはいけません。親の威厳をかけて「言葉で」戦いましょう。言葉のケンカで言葉の力が伸ばせます。

国語力を伸ばすための魔法の二つの問いかけ

さて、本題です。

国語力を伸ばすための決定的な二つの魔法の問いかけがあります。

それは、

  1. 「それってどういうこと?」
  2. 「どうしてそうなるの?」

の二つです。

これに上述した五つの心がけを組み合わせれば完璧です。

ケーススタディです。偉大なる「ドラえもん」を例に挙げさせていただきます。

「ドラえもーん、道具出してぇぇぇぇ」
「のび太くん、自分の力で何とかしなきゃダメだよ」
「だってだってだってぇぇぇぇ」
「もう、しょうがないなぁ」
テレレッテレー(効果音)「○×※♪△ー!」

親「今、ドラえもんは道具出すの、躊躇したよね。あっ躊躇っていうのは、どうしようか迷うってことね」
親「どうして、ドラえもんは躊躇したのかな?」
子「分からない」
親「じゃあ、ドラえもんはのび太に道具を出してあげたいと思ってる?」
子「思ってない」

親「どうして?」
子「のび太に自分で何とかしてほしい」
親「そうだよね、のび太に自分で何とかしてほしいと思っているからだよね」
親「じゃあ、ドラえもんがのび太に道具を出すっていうのはどういうこと?」
子「いいこと」
親「そうかな? お母さんはそう思わない」
子「どうして?」
親「どうしてだと思う?」
子「うーん、のび太が自分で何もしなくなるから」
親「そうだよね、のび太が自分で何もしなくなるからだよね」

親「ではでは、のび太に道具を出すっていうのはどういうこと?」
子「のび太にとって良くない」
親「そうだね、良くないことだよね。じゃあこういう風に相手のいいなりになって良くないことをしてあげることをなんていう?」
子「甘やかす」
親「そうだね、甘やかすことっていうね。よく知ってたね」
親「もう一回聞くね。じゃあ、ドラえもんがのび太に道具を出すっていうのはどういうこと?」
子「のび太を甘やかすってことかー」

これで、躊躇と甘やかすを覚えました。(語彙力の強化)
そして、理由・根拠について考えました。(論理的思考)
さらに、「どうして」という問いかけに対しては「から」で答えた方が良いことも少しわかりました。(因果関係の説明、論理的思考)
また、「道具を出す→甘やかす」で具体的な行動を抽象化して意味付けができました。(具体と抽象の往還)
加えて話を円滑に進めて、次を促すために「おうむ返し(相手が言ったことを繰り返す)」の手法を取っています。これは一回の会話を長くするためにも重要ですね。
ドラえもんが本当に甘やかして道具を出しているだけかの論議は、この際置いておくとして笑

毎回、こんなことをやっていては子どもに嫌われそうですから、たまにでいいとは思いますが、繰り返していくうちにかなり国語の力が伸びていきます。現にウチの息子4歳には、「パパと話してると長くなる」とすでに見破られています。でも、機関銃のように楽しく話をしてくれますよ。

なんにせよ語彙力=言葉の力は不可欠です。読書をしている人が国語ができるのは、多くの言葉に触れ、抽象化と具体化の繰り返しを活字情報から仕入れることが出来ているからです。語彙力、因果関係を導く力、抽象具体で言い換える力、比べる力を伸ばしていくことで、総合的な国語力をつけることが出来ます。本を読むと国語力がつくのではありません。本を読んでいる人が高い国語力を持っているのです。

家庭でできる国語力アップの方策としては、家庭内の環境と会話を振り返ると良いでしょう。

新聞や雑誌、本などの活字に触れる環境はありますか?
テレビでも難しい語彙に触れるニュースや教養番組を見る機会がありますか?
会話の質を高める努力をしていますか?

小学校高学年であれば、ニュースや新聞などの内容について、親子で話すことは驚くほど見識を広げます。

高学年向けの魔法の問いかけはこれです。

「〇〇はどう思う?」

自らの意見を根拠をもとに述べさせるように。しかも、子どもを尊重して、一つの立派な意見として聞きたい、という気持ちを込めて問いかけてあげてください。そして、それを否定しない。親自身の見解を述べつつも、どうして子どもがそう考えたかを聞いてみるとどんどん話は発展していくことでしょう。テーマはなんでもいいと思いますよ。話が盛り上がることが大事ですね。今、小学校高学年と盛り上がるなら「クローン」とかが良いと思います。未知な感じに加えて、ホラー的要素もあり、意見が色々出てきます。

終わりに

国語力がないと嘆く前に、まずは親が出来ることをやってみましょう。中学受験を控えた小学校六年生の国語得点力を高めるためであれば、別のテクニックを教えたほうがいいですが、小学校五年生以下の本質的な国語力を高めるには「魔法の二つの問いかけ」は大変効果的です。ぜひ実践してみてください。

国語力を伸ばしていくためのその他の具体的な方策については、またの機会に書きたいと思います。語彙力アップのためには、楽しんで自分で選んで本を読むのが一番良いのですが、少し無理してでも言葉を増やしたい時は、こちらの二冊がかなりおすすめです。「語彙力がない」「国語が嫌い」という生徒におすすめしたところ、毎日のように楽しんで読んでます。語彙力も少しずつ向上してきました。知らない言葉を知るっていうのは、それだけでも子どもたちにとっては楽しいのかもしれません。


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