鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2019.03.09
2019年中学入試問題分析です。各校の問題の特徴と傾向、攻略に必要な力、学校のねらい等について分析記事を書いてまいります。第4弾は共学最難関の渋谷教育学園渋谷です。
目次
小説と説明文で合計10000字を超える中学受験最長レベルの文章題。全15問中、11題が選択肢問題。50字以内×2と60字以内の記述問題、文章題の中に漢字問題が含まれています。記述偏重ということもなくバランス型の出題となっています。
文学的文章は栄光学園出身の保坂和志「生きる歓び」。猫好きらしい保坂の猫愛が溢れ出た小説です。6500字程度の超長文での出題。読み切るのが大変です。一人称で語られる主人公の心の機微を繊細に読み取っていく必要があります。語感を大切にしながら感情を捉えていきましょう。文章レベルは特筆すべき難しさではありませんが、問題の難易度は高めです。
説明的文章は最上敏樹「いま平和とは」。4000字程度の長文。人権や平和についての文章となっていて小学生としては馴染みが薄いものですが、問いかけが多く丁寧に書かれています。渋渋を受験するレベルの受験生たちなら筆者の主張を十分に受け止められるのではないでしょうか。テーマとキーワードをうまく掴みながら解き進めていけば正解に近づけるはずです。
漢字は小説文と説明的文章の中から出題。
など使い慣れない見慣れない書き問題があるため、正答率はそれほど高くなさそうです。局面や調停、列記などは文脈からしっかりと意味を引き出し、的確な漢字を書きたいところですね。8題中なんとか5題は正解したいレベルです。
長い。一つひとつの選択肢がとにかく長い。しかも五択。パッと見て選べたり消去できたりする選択肢は少なく、吟味しながら文章と照らし合わせ、出題の意図と筆者の意図を鑑みて選択していくことになり、かなり骨の折れる問題群です。
小説文では微妙な心の動きを集中して選びとっていかなくてはいけませんし、説明文ではキーワードや主張の中心を文章中から捉えてそれを選択肢問題の文と照合していく作業が必要です。「明らかな根拠」となる箇所が見つかりにくいので、複数のヒントを組み合わせながら正答を導いていかなくてはなりません。文中の「 」の意図を問う問題などもあり、バリエーションも豊かです。
二択に絞ってからさらに選んでいく練習が必要です。精密に読んでいっても最後を感覚に頼ると間違えることになります。文章中の表現の意図を正確に汲み取っていきましょう。
記述問題は3題+1題。41字以上50字以内が2題と51字以上60字以内が1題。また、大問1問3で「二つの文中表現に共通することを11字以上15字以内でまとめる」という問題もあり、かなり文章力を必要とします。
文章中の言葉を繋ぐだけでなく、出題意図を捉えつつ、表現や主張から読み取ったことをまとめていく作業となります。抽象的な表現や比喩的表現を言い換えて、自分の言葉を用いながら指定字数内に収めるのは大変です。筆者の主張や人物の想いを自分の中で納得しながら読める読解力が試されています。
語彙の選択問題は出題されていません。ただし、本文中には脚注がほとんどなく、「うつつを抜かす」「斟酌」「鎮圧」「席巻」「先鋭」などの言葉が普通に出てきます。高レベルの語彙力が必要で、また文脈から意味を推測しなくてはなりません。分からない言葉が出てきたときにいちいち引っかかっていると読み進められないので、「きっとこういう意味だろう」という予想を立てながら読み切ることが重要です。過去問の取り組み等で分からない語彙があった時は都度調べてまとめておくと良いでしょう。
渋渋の国語にも語彙力は不可欠です。語彙力と共に大量の文章を読んでおく必要があります。スピーディーに読み、瞬時に筆者の主張の中心を掴む力や心情曲線の揺れを把握していく力が求められています。過去問の文章を200字程度で要約したりあらすじをまとめたりする練習は効果的でしょう。
語彙力アップにはこの漫画が最強。難関校受験者は一家に一冊(標準編とレベルアップ編の二冊)必要ですね。名探偵コナンのものもありますが、使いにくいですからオススメしません。(無類のコナン好きならありかもしれません)
まずは合計10,000字超の文章題を読み切る力があるか、が渋渋への挑戦資格です。その上で少し背伸びをした社会問題や学術的文章、大正から昭和中期くらいまでの含蓄ある文学的文章などにも触れておくと良いでしょう。先鋭的な学校ですが、その根底に流れるフィロソフィーは確かなものがあります。国語の問題からも求める生徒像と学校のアイデンティティが滲み出ていますね。
ただ、個人的には2019年第一回の国語はあまり好みではありませんでした。。。