鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2020.04.17
3月2日から始まった一斉休校。そして、4月7日の緊急事態宣言。子どもたちの新しい生活は始まらず、学びの場も失われている状態が続きます。塾として子どもたちに何が出来るのかを考えて試行錯誤しながら向き合ってきました。少しずつ形が見えてきましたので、私たちが取り組んでいる現状について運用方法と効果と留意点についてまとめてみます。誰かの参考になれば嬉しいです。
目次
この局面において大事にしているのは、「子どもたちの安全を最大限配慮した上で学ぶ機会を提供し続けること」です。3月以降全ての決定をこれを基に動いています。そして、今は何よりstay home。みんな、うちにいよう。
元々すばるが目指しているのは「自学自考」で、自ら主体的に動く子どもたちを応援することです。まさに自学姿勢が試される日々が続きますね。理念を大切に、自ら学ぶ生徒たちを応援するために私たちに出来ることを考えて、施策を実行に移してきました。
4月17日現在、現状に対するすばるの主な取り組みは下記の三つ。
それぞれについて、どう運用し、どのような効果が見られ、何に注意すべきかという点について気づいたことをまとめていきます。(今回の記事はちょっと画像多めです)
まず、塾の根幹となる授業についてはzoomを使用して双方向性を保ちつつ全面オンライン授業を実施しています。これ自体は何ら目新しいことではありませんね。
朝10:00から時間割を組み、その時間に指定のzoom用アドレスにアクセスしてもらうという形をとっています。
指定のzoomアドレスおよびIDは塾生専用ページにアップしています。
zoom使用開始まではズームのインストールの仕方のレクチャーから全家庭との接続テストに至るまで大変な苦労を強いられました。正直言ってzoom導入への最大の障壁はここです。「家庭とつながれるか」ですね。
みなさまのご協力のおかげで現在は全クラスでの運用が出来ています。
全家庭と接続テストを実施するにあたっては、
という形で行いました。
これまで宿題等の連絡用に運用していたメールアドレスと塾生向けwebページを活用しながら、連絡の徹底を図りました。やはりそれでも保護者に案内が行き届かないこともあり、最後は電話で個別に連絡という形になりました。「全家庭に迅速に徹底する方法」という点は今後の課題です。
接続テスト当日はクラスごとに接続テスト時間割を作成し、その時間内に入っていただく、という対応を朝から三人体制で行いました。チェックリストを作りながら180名の全生徒との通信確認をしていき、一日でおよそ8割程度の家庭と接続確認が取れました。その後、家庭の環境やデバイスを変えていただきながらおよそ4日間で全家庭との接続確認が完了。
zoomの使用環境としては、やはりノートPCが最強。次いでタブレットです。デスクトップPCは集音マイクとカメラがデフォルトでついていない可能性があり、そこがつらいところですね。スマホは画面の小ささとパケット通信が難点。
すばるの保護者の接続デバイスの割合は下記の通りです。
接続環境が悪い時は、
ことで解決することがほとんどです。
塾の通信環境が悪くなるのは、「同時に4台以上のPCでzoom授業をやっている時」、「3台程度稼働させながらカメラも音声もONにしている時」、というのが分かってきています。各教室で調整を図りながらより快適な環境での通信を模索しながら現在は続けています。ちなみに中学生はカメラoff・音声offでも大丈夫ですが、小学生はカメラはonにしたいところですね。お互いを見ながらやった方が逆に落ち着きます。
zoomはサービスとして画期的です。そして、twitter等で某中学受験塾のzoom授業は面白いという評判も目にします。先生たちは双方向授業のプロですから、たとえzoomだとしても画面の向こう側の生徒(そして観覧しているかもしれない保護者)を意識した授業は出来るはずです。
すばるでも、チャット機能やリアクションボタンなどをうまく使いながら工夫してやっています。「次の問題は、、、チャットに一文字打ち込むのが一番遅かった人に答えてもらいます!」とかやってズバババと文字が並ぶのとか盛り上がりますね。チャットは使い方次第では、生徒の能動的な授業への参加を促せるツールです。
また、質問が多くなる理数科目については授業前後にzoom内に質問部屋を設けて、そこで個別対応をするようにしています。
いかに画面の向こう側にいる生徒に「参加している感」を持ってもらうか、が最大の焦点です。いくらzoomが優秀なサービスであってもここは講師の腕の見せ所でしょう。
ただ、数週間使用してzoomでは不十分だということが見えてきています。手元は見えませんし、授業の緊張感も不足しています。「何となく出来てない」「分かりませんでした」に対する追求が非常にやりづらい。生徒の理解度・定着度を測る、高めるという点はzoomでは補いきれません。今、大手塾が躍起になってzoomを取り入れようとしていますがそこに気づかなければ導入しても効果薄ですね。zoomが出来たから「ハイ、万事解決」となりませんからね。保護者の皆様も期待しすぎないようにしてください。
youtubeによる授業の配信も考えられますが、現状すばるではzoomとその他サービスの併用が一番しっくりきています。「オンライン」+「オフラインの充実」が鍵です。
さて、zoomとは直接関係ありませんが、この一ヶ月、塾の授業の実施方法や今後の対応等を含めて数多くご家庭に発信をしてきました。ただ、やはり通常のメールでのやり取りでは限界がありますし、塾生専用クラス別webページは能動的に見にきていただかないといけないので通達には向きません。
これを機に確実に家庭と連絡を取れる方法を模索する必要があると感じています。方法としては、
が挙げられると思います。
まず、LINE公式ですが、こちらは一斉送信には向きますが、少しクローズにしたいときや、グループごとに送るという点では少し難がありそうです。対象人数が少ないなら個別送信と既読確認が出来るので「アリ」です。
今後Google classroomの運用なども考慮すると全家庭にGmailアドレス・Googleアカウントを取得していただく方法がベストでだと今のところ考えています。既読確認が出来ませんが、Gmailならほぼ確実に届くのではないかという信頼を持っています。
塾の指導の根幹である授業については、zoomで「ある程度」補えることが見えてきました。ただ、それだけでは不十分です。生徒の定着状況の確認や、単純なやり取り・接触回数の不足により、日頃の通塾時に提供しているクオリティを担保できません。そこで、かまくら国語塾で既に導入しているGoogle classroomをすばるでも始めます(まずは中学部から)。
Google classroomは課題の提示・管理・添削などの「やりとり」に絶大な効果を発揮します。Googleの無料のサービスで、ネット上にクラスを開設するイメージです。掲示板的な機能もあり、一日に一度アクセスしてもらうことをマストにすれば諸連絡事項の通達にもかなり使えそうです。
聖光学院でも早くから導入していましたし、今はどこの私立でもやっていますね。神奈川県の公立高校も始めるとか始めないとかという話ですが、どうなっているのでしょう…。
Google classroomは仕様もどんどん変わっていて「採点」や「評価」もかなり使えます。小テスト、演習問題などのチェックをこれでやっていきます。宿題や追加の問題などもクラスごと、生徒ごとに出せるのも特徴です。とにかくこのサービスが無料だというのだから驚きです。検討中の皆さま、ご興味を持たれた皆さま、ぜひ積極的に取り入れてほしいと思います。
小テストの実施もこちらで出来ます。課題設定→提出→採点→返却という流れが全てオンラインで完結します。
ただ、私が担当している国語という科目の性質上、「タイピング」だと漢字や熟語をテストする意味がだいぶ薄れてしまいますので、手書きにしなくてはいけません。
今トライしているのは、
という形です。アナログ+デジタルの融合といえば聞こえはいいですが、スマートではありませんね。でも、意外とうまくできていると思っています。
小・中学生を指導されている塾の場合、生徒には手書きでやってもらいたいというケースも多いと思いますので参考にしてみてください。そして、もっといいやり方があれば教えてください。
全員の提出が確認された後に解答をアップ。採点後に平均点をアップしています。
限定公開のコメント(個別コメント)も出来ますし、いい感じで運用していけそうです。なお、採点と採点答案の返却はipad+apple pencilが一番使い勝手が良いので、そちらも合わせて購入するといいと思います。(品薄らしい)
採点答案返却ページはこんな感じ。
生徒に返却時のコメントをして復習ポイントなどを伝えることも出来ます。生徒からも即座に返信が返ってきて、むしろオンラインの方が能弁な生徒もいるぐらいです笑
この「やりとり」なくして“すばるオンライン”は完成しないと思っています。よりブラッシュアップして効果を高めていきたいところです。Google classroomは通塾による対面授業が復活した後も使い続けるべきサービスだと位置付けています。
社会科では 若手講師がclassroomとGoogleフォームの合わせ技で小テストを作ったりしてます。こんな使い方もありです。
また、友人の小林勇輔さんと山田美奈都さんが、「どこがく」の中でGoogle classroomの使い方について解説してくれています。今、日本語の classroomの動画でこれに勝るものはないでしょう。
導入予定の先生も、これから使ってみようと思っている保護者・生徒の方もぜひご覧になってください。(そして、高評価&チャンネル登録してあげてください)
オフラインでの生徒の学習記録も報告してもらっています。
「計画」も大事なのですが、継続性があるのなら「記録」がより意味を持つと考えています。そのため、その日の終わりにGoogleフォームを使用して一日の学習内容を報告してもらうものが「まいにち学習レコード」です。
科目・内容・自己評価・振り返り・明日への意気込みなどを書くものですが、慣れれば5分で終わります。自己の学習のレコーディングによる可視化が主な目的です。学習内容について偏りがあったり、効果的でない学習をしている様子が見受けられる場合、こちらからも声を掛けていきます。
質問項目はこちら
可能な限り手間をかけないように、スマホからでも楽に入力できるような仕様にしているつもりです。
そしてこの入力データは各学年の生徒同士で共有されます。比較ではなく他のメンバーの取り組みを参考にしたり刺激にしてもらう狙いもあります。共有されるのは、フォームに入力したものをスプレッドシートに出力したものです。
生徒たちは思っていた以上にしっかり書いてくれていて、こちらの狙い以上の効果が得られそうです。普段の授業の時は滅多に質問や要望をしない生徒もこの「まいにち学習レコード」にはかなり積極的に入力している様子も見えます。
生徒ごとにセル集計してその週の学習時間の偏りや合計時間などを把握できるように個別のシートを作成していきます。生徒本人も、各先生も、また他の生徒も個別シートを共有していますので勝手にライバルを作ることも可能です。
「学習管理」ではなく、「学習報告」です。あくまで生徒の自主的な学習をサポートし、促進するための方策として、位置付けています。実際にかなり積極性が見られるようになってきたので、今後が楽しみです。
塾としての取り組みはおよそこんな感じです。
思ったよりも長くなりました…(5000字オーバー)。
最後までお付き合いいただいた方、ありがとうございます。
塾の手の内を晒すようですが、そんなことよりも子どもたちの学習機会の作り方について、どなたかに届けば、という思いでまとめてみました。もし、「いいね!」と思った方がいらっしゃったら今からでも遅くはありません。ぜひ取り組んで見てください。
いずれもスピード感が重要で8割GOでスタートしており、実際にはたくさんご迷惑をおかけしています。でも、それでも、画面の向こうの子どもたちは元気で、画面越しでしか会えなくてもたくさんの勇気をもらえますし、保護者の皆様には温かいエールをいただいているので、私たちは前に進めます。ご協力いただいている保護者の皆様、本当にありがとうございます。
動くことで、課題がどんどん見えてきます。そして、ここで見えてきた課題は事態の局面が変わったり、収束したりした後に必ずや生きてくるものだと思います。これだけ便利なツールが広まり、各塾での取り組みがシェアされている中で、何も新しいことにチャレンジせずに、「感染症対策万全にして、今まで通り授業します!」と言っているだけでは保護者の信頼も得られないのではないでしょうか。
たくさんチャレンジして、失敗して、謝って、それでも子どもたちに学びの機会を提供することを諦めずに動き続けることが、今私たち塾関係者に出来ることだと心に念じています。
コロナの「せい」で出来なくなったことが多すぎるので、一つくらいコロナの「おかげ」で出来るようになったことがあってもいいと思います。すばるとしては、この機会に生徒のITスキルを一気に向上させ、対面授業が復活した後もオンラインでのサポートをしていけるように繋げたいと思っています。
生徒が来ない教室はがらんとしていて寂しいものですが、これからもどんどんアップデートを続けます。
この場所が再び子どもたちの真剣な表情と笑顔で溢れる日を心待ちにして。