受験を超えて

鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -


小学生向け 国語の家庭学習 おすすめ問題集2021

2021.07.16


「うちの子、国語が苦手で…」とおっしゃる保護者の方、本当にたくさんいらっしゃいます。「国語力がないから、すべての教科の学習に影響する」というお話もよく聞きます。今回はご不安の多い「国語力」に関して、家庭で力を伸ばすためのおすすめ問題集と学習法について2021年バージョンにリライトしました。

良くある話としては、「本を読め」ですが、もとより国語が苦手で嫌いな子に本を読ませるなんてハードルが高すぎます。

何とかしようと模索していくことになりますが、塾任せ、学校任せだけではなく、家庭での取り組みで国語力を高めていくことは可能です。いえ、むしろ家庭の方が国語力を高めていけます。

そのための問題集(ドリル)や取り組みをご紹介。以前、記事にした国語力を高める親の魔法の問いかけも参考にしていただければと思います。

国語力とは

まず、前提として国語「力」とは何なのかについて。小・中学校における国語科の観点としては、「読む力」「書く力」「話す力」「聞く力」が挙げられています。しかし、これらの力をつけていくためには、論理的思考が必要で、さらに言えば語彙力がなければ、インプットされる情報も少なくなり、的確にアウトプットしていくことも出来ません。

今回は、国語力向上のためにご家庭で磨いていただきたい力を、「論理的思考力」「語彙力(ことばの知識)」「読解力」の三つとし、それらを身につけていくことに絞って話を進めていきます。

論理的思考力

国語を通して鍛えたいと思っている力は論理的思考力です。妥当な根拠を持って考え、主張に明確な裏付けがあるのが論理的思考です。曖昧な「感覚」ではなく、客観性・一貫性を持った根拠によって推論していくことと言えます。少し乱暴に言い換えると、考えを「きちんと」伝える力であり、伝えられたものを「正しく」受け止める力であると言えます。

その先に、表現力や発想力が出てくるのですが、論理的思考が出来ないと表現や発想・アイデアも乏しくなったり、独りよがりになったりします。「すべての教科の基礎」とされる所以は、国語がこの論理的思考力を鍛える科目であるからに他なりません。算数でも理科でも社会でも、事象や計算や出来事に確かな背景があります。それをたどり、言い換えていく力が論理的思考力です。

国語力と「国語科の学び」は異なるものと捉えています。「考えを自由に言ってごらん」というアナーキー(無秩序)な「詩の鑑賞」では論理的思考力を伸ばしていくことはなかなか難しいものです。
(個人的に感性を磨く詩や俳句の鑑賞は大好きなのですが、それはまた違うジャンルなのではないかと)

また、お手軽・お気軽なインプットが増えた時代なので、根拠をしっかりと考えていく機会が減ってきています。子どもたちの論理的思考力を鍛えるチャンスは、驚くほど少ないのです。小学校の教室でも、一斉授業の塾の授業においても、一人ひとりの論理に時間をかけて向き合うことは難しくなっています。「なぜそうなるのか」「それはどういうことなのか」を的確かつ簡潔に説明出来る力をどうにかして磨いていきたいものです。

語彙力

すべての国語力を支えているのは語彙力です。語彙がないと論理的思考を裏付けていくための情報が正しく入ってきません。言葉の意味が理解できないと、新たに得た情報を的確かつ正確に処理することが出来ないのです。これも、その他の科目の習得に大きな影響を与えますね。それどころか、言葉を知らないと世の中を生きていく上で明らかに損をします。

直近のベネッセの調査でも語彙力と論理的思考力の因果関係について触れられていますね。

例えば、「ちゅうちょする」という言葉の意味を知っている小学4年生は、なかなかいません。意味は「あれこれと迷って心を決められないこと」となりますが、ほぼ同義語に「ためらう」があり、慣用句では「二の足を踏む」があります。この言葉一つとっても広がりがあり、表現力の高まりや読解力の礎となっていくわけです。語彙力を高めることには大きな意義があります。

語彙を高めるためには「読書が一番」ではあるのですが、前述したように国語が苦手な人に読書をさせるのは困難を極めます。読書をしている人が国語ができることが多いのは、多くの言葉に触れ、抽象と具体の行ったり来たりを活字情報から得ることが出来ているからです。

本を読むと国語力がつくのではありません。本を読んでいる人が結果的に高い国語力を持っているのです。

ことばの知識

日本語には、ことわざ・慣用句・四字熟語など、豊かな表現がたくさんあります。これは、文学的な表現でもなんでもなく、いわば日本語のルールです。

日本語のルールを知らずして、国語を語ることはできません。伝えたい内容やニュアンスを、短い言葉で端的に言い表しているという点で、見事な抽象化がなされている表現です。数多く知っていることで、言い換えのパターンが増え、表現力の向上にも有用です。

おすすめの問題集・本

ようやく本題です。前置きが長すぎました。論理的思考力を高めるための問題集、語彙力を高めるための本、読解力を高めるための問題集、ことばの知識を習得できる本の順番でご紹介いたします。

少しずつでもこれらの力を伸ばしていけるように取り組んでいくと、それぞれが有機的に関わり合って、国語の総合的な力がついていきます。

論理的思考力を高めるための問題集

論理的思考力を高めるためには、文の構造を知る(主語述語修飾語を正しく理解する)ことからやっていかなくては行けません。そして、「誰が」「何を」という部分が大事です。日本語は述語が最後にあるので、述語については比較的分かりやすいのですが、主語と修飾語が難敵です。

「誰が・何を・誰に・どのように・どんな様子で…」を的確に伝えられるようになると良いと思います。そうなると、問題集を解いているだけでは解決が出来ません。日頃の会話でのやり取りも重要になってきますね。

おすすめの問題集は、論理的思考法のパイオニア、出口先生の最新問題集とでも言えるこちらです。もともと大学受験予備校の先生として、超有名な出口汪先生の論理的思考法は「出口式」とも呼ばれており、実績や効果もすでに実証済みで、小学生向けに書き下ろしたのが、この「出口汪の日本語論理トレーニング(論理エンジンJrシリーズ)」です。

出口先生の本の良さは、ステップが細かく準備されていることです。一足飛びに難しいことをやらず、基礎編・習熟編・応用編と3分冊で順を追って学習していける構成となっています。ただ、この構成が実は諸刃の剣で、順を追って、時間をかけて学習していく根気が子どもたちにも親にもありません。

本気で国語が苦手な我が子に論理的思考力を身につけさせたいと思っている場合は、どうして間違えたのか、ここをどうやって考えたら良いのかをアドバイスしてあげる必要がありそうです。一人で黙々とこなせる子がいたら、その子はもとより国語力が高い可能性がありますよね(笑)。

この本はもっと爆発的に売れても良いのですが、今ひとつ売れていないのはおそらく付き合える親が少ないからです。楽して国語力をあげようと思ってもダメです。でも、しっかりと向き合ってあげられれば、まちがいなく力がつく構成となっています。(お忙しい方は、家庭教師を呼んで、「この問題集をとにかく一生懸命一緒にやってください」と頼むのも良いかもしれません)

一冊あたりのページ数も少なく、子どもたちは「一冊終えた」という達成感も味わえます。同じような問題の繰り返しではありますが、それが大事。サッカーのリフティングにしろ、野球の素振りにしろ、ゴルフのスイングにしろ、基礎のトレーニングで反復を蔑ろにして出来ることなどありますか? 基礎を身につけるためには、一歩ずつ着実に。これに尽きます。

小1からありますので、まずは今の学年の基礎編を。簡単すぎると思ったら応用編。クリアできそうならどんどん上の学年をやってみるといいでしょう。

また、小・中学生の国語の力を伸ばすことに注力されている福嶋隆史先生の問題集もオススメです。国語に関して、高い熱量で研究をされており、効果も数多く実証されています。中学受験対策にも効果的です。ふくしま式と呼ばれる学習法で、「言いかえる力」「たどる力」「くらべる力」を磨ける構成となっております。特に「言い換え」のところは、論理国語の学習において肝となる部分で、ここに焦点を当てられている問題集は他になく、「端的に言い表す力」(抽象化する力)を身につけることが可能です。

小学生版となっていますが、最難関中学入試にも対応する力をつけられる問題集です。現実にこの「言い換え」の力を応用した入試問題は慶應湘南藤沢や筑波大付属駒場などの記述問題で頻出します。記述問題については、200字作文の問題集がとても良くできているので、おすすめです。ただし、どちらも小学校低学年では難しいかもしれません。一人で取り組むのは大変なので、チェックして評価してあげる大人が必要です。

語彙力を高めるための問題集

語彙力を高めるためには、楽しみながら言葉を知っていくのが一番です。「覚えておきたい語彙2000」とか辞書的に重要語が並んでいる本もありますが、どうやってこれを覚えていくのか、そのモチベーションはどこから持って来れば良いのか、非常に扱いが難しいのが語彙トレーニング本です。

ここで力を借りたいのが「マンガ」です。偉大なる日本文化であるマンガは、子どもたちの言葉を覚えることへのハードルを一気に下げてくれます。物語や説明文を読む気が一切無くても、この本であればスラスラ読んでくれます。実際に当塾の塾生にも大人気で、休み時間は取り合いになるくらいで、超おすすめです。

小学生がいるご家庭必携の一冊といえるでしょう。この本を読んでいた我が子がある日突然、難しい語彙を使って話し始めますよ。一冊目をマスターしたら、レベルアップ編もあります。


読解力を高めるための問題集

論理的思考の回路を身につけ、語彙力を高められてきたら、今度は読解問題で正解したいですよね。「国語力」の力試しといった側面もある読解問題のテキストを二種類ご紹介します。これをクリアできるようになっていれば、国語の「テスト」で良い点を取ることができるようになります。(最終ゴールではありませんが)

読解が苦手な人に。学研「おはなしドリル」

まずは小学校低学年から楽しめる「おはなしドリル」。学研から出版されていて「宇宙」「恐竜」「危険生物」「科学」などラインナップも豊富です。

子どもの興味に合わせた一冊をセレクトすることが可能で、読解の第一歩をゆっくりと踏み出したい方には最適です。内容も面白く、読むだけで勉強になるものばかり。子どもたちは喜んで取り組むことでしょう。

問題の取り組み方は、「最初から順番に」というよりも興味を持ったページ、楽しそうなページからやってみると良いと思います。一日一題でも積み重ねていけば安定した読み取りの力が身に付きますよ。

学年が上がってきたら《謎解き》をベースにした「おはなし推理ドリル」もあり、こちらも良く練られた構成で楽しみながら読解を進められます。




受験に向けての読解力を高めたい人に。「啓明館が紡ぐ 小学国語読解」

東海地方で知らないものはいない佐鳴予備校グループの傘下に入った神奈川の中学受験塾「啓明館」が編纂し、販売している問題集です。Amazonで買える問題集でこれに勝るものはありません。(こちらの問題集は書店では売っていません。)

小学校3年生から取り組めるようになっていて、基礎・応用・完成の三部構成となっています。

この問題集の最大の特長は、掲載されている素材文が洗練されていることです。梨木香歩「西の魔女が死んだ」や佐藤多佳子「一瞬の風になれ」などの読んでいて楽しい名作から、難関校でよく出題される小川洋子などの定番文学作品までセレクトされています。説明文のテーマも面白く興味深い、学問の入り口としてふさわしいものが取り揃えられています。

読解問題の「つまらなさ」の原因は、素材文が大人の勝手なセレクトによるもの、または著作権がすでに切れていて掲載に支障がないものであるため、小学生が読んでもすこぶる面白くなく、興味もそそられない。説明文に至っては、「その話題は一体自分と何の関係があるのだ?」という完全なる他人事感があることです。

この問題集はそのあたりを上手にクリアしてきていて、読んでいて面白く、説明文は比較的身近な話題が選ばれています。読書の誘いとしての役割も果たしてくれそうです。

応用・完成編では、記述問題の分量が増えます。過不足なく的確な文章を書く練習もこのテキストで可能です。また、詩や短歌・俳句なども掲載されており、論理だけでなく文学の読み取りの力も養えます。鑑賞と同時に客観的な読み取りも求められており、そのバランスが良いと思います。答えの正しい導き方が丁寧かつ分かりやすく示されています。解説もそこそこ詳しく書かれているので、自宅学習が十分に可能です。

小学生の立場に配慮された問題集だと言えます。読解問題で得点したい、という方も書店であれやこれやと悩むよりもこのシリーズをやりきることを目標にしましょう。非常に完成度が高く、塾で使用しているテキストと比べてみても遜色ない出来栄えです。クオリティは保証します。時間をかけてでも、保護者が手伝ってでもこれをやりきる覚悟を持って取り組みましょう。念のため、断っておきますが啓明舎とは何の関わりもありません。回し者ではございません(笑)。



Amazon以外でご購入ということであれば、言わずと知れた四谷大塚の「予習シリーズ」これに尽きます。数年前に予習シリーズは大改訂が行われ、難易度が一気に上がりました。予習シリーズを4年上・下→5年上・下→6年上→6年難関校対策という順番で丁寧に、かつ難しい語彙をフォローし、解説とにらみつつ論理を説明できる方がいれば、家庭での学習で御三家でもフェリスでも慶應でも受かるレベルまで国語力を引き上げられます。こちらから購入できますし、四谷大塚の校舎窓口で販売されています。

ただ、5年(下巻)以降は相当難易度が高くなっています。解説は本冊よりも分厚く、これでもか、という分量で丁寧に書かれているので5年(上巻)まではご家庭で対応ができると思いますが、後半は四谷大塚の通信コース進学クラブなども併用すると良いかと思います。四谷大塚内のベテラン講師陣が分かりやすく解説してくれます。

ことばの知識を高めるための本

日本語には豊かな表現がたくさんあります。表現力の向上に役立つ「ことわざ」「慣用句」「四字熟語」なども漫画で学んでしまいましょう。もちろん、定番のちびまる子ちゃんドラえもんでも結構ですが、少し本格的に辞書編纂の第一人者、金田一秀穂さん金田一春彦さん監修のシリーズをお勧めしておきます。四コマ漫画もなかなかシュールで面白く、子どもたちはゲラゲラ笑いながら言葉を覚えていきます。ことわざや慣用句のセレクトもよく、マスター出来れば中学受験にもかなり対応できます。



おわりに

以上、国語力を高める家庭学習用おすすめ本・テキストについてご紹介してまいりました。塾や学校における大人数の集団授業で国語力をつけていくのは、なかなかに困難です。なぜなら、一人一人の論理の構築にじっくりと向き合うことが出来ないからです。とは言っても、家庭で国語をどうやって教えていいかも分からないという声もあります。

確かにそうですが、ご安心ください。実際何も教えなくても良いのです。文章を読んで一緒に考えてあげて、どう考えたかを聞いてあげる。これだけで国語の力は上がってきます。お子様の国語力向上のために時間を取ってあげてください。それは、きっと話題作りにもつながりますし、親子のコミュニケーションの時間を増やすことにもなります。ただし、すぐには結果は出ません。根気と時間が必要です。

今回の記事をお読みになって、保護者のみなさまが「国語力」について考え、お子さまと一緒になって「国語」に取り組むきっかけとなれば大変幸いです。最後までお付き合いいただきありがとうございました。