鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2021.03.04
2020年3月に開講予定だったかまくら国語塾。新型コロナウイルスの感染拡大により、本格始動は6月まで時を待たねばなりませんでした。一期生11名と過ごした時間は濃密ではありましたが、予定よりも3ヶ月短い期間での一年はやはり物足りなさが残るものでした。
11月末に第一期を終えましたが、特に六年生とはこれでお別れとなるため、最後に何か“はなむけ”は出来ないかと考えた結果、作品集第二弾のお披露目も兼ねつつ、“一期生感謝祭”の開催を決めました。
目次
かまくら国語塾の誕生からの一年間を一緒に創ってきた方々と、楽しい時間を過ごしたいと考えて企画したのが感謝祭です。
メンバーの子どもたちはもちろん、初年度から海のものとも山のものとも分からない場所に、しかも極めて不安定な日々が続くなか快く送り出して下さった勇気ある一期生保護者のみなさま。かまくら国語塾のキービジュアルである書き手の権利10箇条や作品集等を含めて、デザインを一手に引き受けてくれている専属デザイナーJumpStart河内社長。さらには、超絶クオリティとなった作品集の印刷・製本を手掛けていただいた東湘印版の石川社長。そして、一年間かまくら国語塾のアシスタントとして支えてくれた山本芽衣さん──。
しかしながら、これだけのメンバー(30人弱)を集めるとなると、このご時世、普段の教室では密になってしまいます。
そこで、お隣の面白法人カヤックさんにご相談したところ快く社屋ホールを貸していただけることになり、天井も高く換気も抜群な広々とした場所での開催が実現しました。カヤックさん、ありがとうございます!
プログラムとしてはこんな感じで進みました。
スタート予定の16:30を前に続々と集まるメンバーと保護者のみなさん。「久しぶり!」とか「楽しみにしてた!」とか、もうかけてくれる言葉が期待通りでこちらのテンションも上がります。野球の試合と重なって参加できなかった一名をのぞいた10名の一期生と保護者の方にお越しいただきました。かなり直前のご案内だったにも関わらず、高い参加率で驚いています。
久々に一期生のみんなに会えてめちゃくちゃ嬉しくて受験で疲弊した身体が潤いました。
開会宣言をして、まずは日没前に集合写真の撮影。この日のカメラマンは鎌倉で古民家スタジオ・イシワタリを運営されているカメラマンの福井隆也さん(すばる卒業生のお父様)にお願いしました。カヤック前横断歩道の味のある場所で夕暮れ逆光の素晴らしい写真を撮っていただきました。
集合写真のあと、会場に戻り一年間(実際は5ヶ月間)の振り返り動画を上映。特急で作成した動画につき、クオリティは高くはなかったと思いますが、「懐かしいー」とか「それあったなー」とかの声が聞こえました。
動画を作成しながら、3月から11月までに顔つきがみるみる変わって精悍になっていくメンバーの写真を見ていると、書き手としての成長もさることながら、このコロナの一年で彼らは逞しさを備えたのだと強く感じました。
会場がカヤックということでカヤックの文化であるブレストをやってみようと思いつきました。
「かまくら国語塾をもっと面白くするためのアイデア」を一期生のメンバーや保護者の方から募って、採用できそうなものをどんどん取り入れて二年目に反映させていくという狙いです。
慣れないブレストと場所が変わったことへの緊張感からそこまで盛り上がらず、やや滑りだったわけですが、それなりに意見は出ました。
- 3人一組で一つの小説を書く
- 小説の再現ドラマを作る
- お話を他のともだちとリレー
- 場所を変えて書く(お寺とか!)
- スポーツをやる
- アイデアを出し合う会議
- 自分の作品だけで本を作る
- 歌詞を考えて曲をつけてもらう
- それぞれの特技を小説にする
再現ドラマはやってみたいなー。VTRの創り方を学んでワンシーンだけでもみんなに提供できるといいなぁ。映像に朗読で音声をつけていくとかでも雰囲気は出せそう。
「かまくら国語塾@〇〇寺」は二年目必ず実現したいですね。ご協力いただける寺院の方、ご紹介いただける方いらっしゃればよろしくお願いします。
歌詞を考えて曲をつけてもらうのは、みんなでかまくら国語塾の詩、創りたいですね。歌詞講座をやってくれる方、募集中です。作曲してくれる方も募集中です。
さて、続いてはこの日のメインイベントである「みんなで創るひとつのおはなし」です。
これは森沢明夫さんが“作家のセカイ”で、かまくら国語塾に来てくれた時にやった講座で、メンバーから大変好評でしたし、もう一度やりたいという要望もいただいていたので、やってみました。
メンバー一人ワンフレーズずつ回していく形でしたが、今回は親子参加が多かったので一家族で一チームとなってもらい、メインは子ども、時々親も創る、という形を取りました。
ブレストの時の様子だと、親に頼ってしまうかな? という懸念がありましたが杞憂でした。メンバーたちが「こっからは俺ら私らの出番な」という感じで、突如温度が上がります。
夕暮れの校庭でタンポポの花が揺れているのをシンジはじっとながめていた。なまあたたかい春風がシンジのぬれたほおをそっとなでる。
というフレーズから物語はスタート。続きをみんなで考えていきます。
四周回って、作品が完成。出来上がった作品を発表する時も盛り上がりました。石川さんや河内さん、アシスタントの山本さん、書記で参加してくれた熊谷さん(すばるの先生)も無茶振りに応えて、作品作りに加わってくれました。
いやー、楽しかったですね。これ。みんなが生き生きしているのが伝わってきて、「かまくら国語塾では作家が育っている」ということをひしひしと感じた瞬間でした。
最後は一月末に完成した作品集第二弾のお披露目です。作品集第二弾では、第一弾よりもさらに進化したメンバーの作品が収められていて、文章の作り込み方、テーマの設定、場面の描き方など、たった数ヶ月で目を見張るような成長が分かります。
「素敵な時間を過ごしたということが分かる作品集でした。色々な出版物を手がけてきましたが、その中でもとりわけ胸にグッとくる作品です」(石川社長)
「デザインとして関わっていく中でも、一作目と二作目で皆さんの成長が分かりましたし、今日こうして参加してみて、皆さんが楽しんで取り組んでいるのだということがすごくよく分かりました」(河内社長)
第一弾では三作品まで掲載OKでしたが、第二弾は二作品までと限定しました。しかも、巻末に載っている私の作品は短編で一つだけ(第一弾では二つ)。にも関わらず、ページ数が増えているため、力作が収録されていることが分かります。ただ長くなっただけでなく、内容もグッと濃くなっているので、見た目のページ数以上に厚みが増していると言えます。
袋の包みを開けるところから、みんなにやってもらいました。持っていくなりページを捲って晴れやかな表情になる姿が見られて、やはりこの作品集制作が持つ力、得られる喜びは非常に大きなものであると実感しました。
また、最後には田丸雅智さんから一期生へのメッセージもいただきました。
一年間、お話を書きつづけたこと、本当に素晴らしいです。書きつづけられたということに、ぜひ自信をもっていただきたいと思います。講座のときは、みなさんが夢中で執筆に取り組んでいる姿勢がとても印象的でした。今後、もしかすると創作の上で苦しむ場面もあるかもしれませんが、そんなときも、どうか楽しむ気持ちを忘れないでくださいね。創作の道を、これからも楽しみながら一緒に歩んでいきましょう!
(ショートショート作家 田丸雅智)
たくさんの方に支えられて、最高の二時間を過ごすことが出来ました。ご協力いただいた皆さん、ありがとうございました。
「また会えますよね」
そう言いながら場を去っていくメンバーも。
「はい、必ず」
力強くお答えしました。
僕たちは、会えます。
言葉は一瞬で距離を0にしてくれます。
メールやLINEのやりとりでも、インターネット上での作品のやりとりでも、いくらでも会うことが出来ます。
それ以外にも今回のようなイベントや卒業メンバーを交えての活動など、大切な一期生のメンバーとの繋がりは今後も必ずや続けていきたいと思っています。
初年度で「やりたかったけど出来なかったこと」は僅かしかなくて、「いつかやりたいと思っていたけど出来ちゃったこと」「こんなこと出来ると思ってなかったけど実現したこと」の方が圧倒的に上回りました。作家のセカイとかBYODとかゲストを呼ぶとかこの感謝祭とかですね。
想いを形にすることで生まれたかまくら国語塾は、想いに支えられて一年目を終えました。
特別な一日で最高の一期生との別れを彩れたのは幸せでした。
一期生のみなさん、ありがとうございました。楽しかったね。
3月6日、かまくら国語塾二年目の始動です。
※集合写真の時だけマスクを外しています。