鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2020.05.14
本を読むことで広がる世界があります。自分の心や身体が縮こまってしまっている時、言葉が、文章が、物語が、私たちを冒険や空想の世界へ連れて行ってくれる時がある。だから、本を読もう。そして、せっかく読むならいっとう楽しく、読後に自分自身の見えている範囲が心なしか開けたと、そう思えるような良質な本をご紹介してまいります。
目次
今回はいろんな本に触れて欲しいという思いから、敢えてジャンルを広めにご案内します。小学4年生・5年生・6年生あたりが対象ですが、中学生にとっても面白くためになるものばかりです。
改めて読んでほしい世界と日本の名作、想像力を掻き立ててくれてワクワクさせてくれるような作品、ベストセラー作家のヤングアダルト(中高生向け)の隠れた名作、そして、ここ数年で最も衝撃を受けた学校モノの秀作(超おすすめ)を一挙紹介。
今回は、やや「読書慣れ」した方向けのご紹介となります。読書がどうも好きになれなくて……という方には、こちらの記事がおすすめです。
(参考記事:小学校高学年向け「本を好きになる、おすすめの10冊+7冊」)
ここからは、ここ数年で最も衝撃を受けて読みながら震えた学校モノの連作短編の一冊、楽しみながら宇宙への知識を深められる作品、分かりやすく面白い森絵都ワールド全開のヤングアダルトの秀作をご紹介。
タイトルが秀逸すぎて(表紙がかわいくて)手に取らざるを得ない一冊でした。「君たちは今が世界(すべて)」の世界に「すべて」とルビが振ってあります。
等身大──。使い古された言葉ではありますが、やはりこの表現がしっくり来る小学校5・6年を舞台とした小説です。
一緒にいるけど、どこか仲良くなりきれないメンバー。
幼なじみだけど、学年が上がってくると距離をおきたくなる二人。
クラスのこと何も分かっていないくせに、交友関係に口を出してくる親。
いちいち描写が細かくて唸らされます。
いわゆる“学校モノ”はかなり読んできているという自負があります。でも、本作ほど「みんな」の心理にスポットを当てた作品はありませんでした。多くの物語は「展開」を大事にするあまり、動き始めると一方向に進んでいきます。
しかしながら、この「君たちは今が世界」は揺れ続ける。不安定にたゆたい、着地点を見失うこともありながら時間が過ぎていきます。でも、この不安定さこそがまさに子どもの、小学校高学年のリアルであり、異常なまでの納得感がありました。
連作短編であるため、同一舞台の中で章ごとに主人公が入れ替わるパターンです。森絵都「クラスメイツ」もそうですが、学校モノの主人公入れ替わりパターンはすごくいいですね。複数の視点から級友や先生を眺めていくと物語が立体的になります。
そして、本作では同一人物であっても、人によって(章によって)感じ方・見え方が違う、それもかなり大きく異なって描かれるわけですが、それでもキャラ設定にブレがありません。著者の筆力の高さが滲み出ています。
第一章では、登場人物の多さから話のつかみにくさが若干ありますが、それはすべて二章以降への布石。第二章以降はストレスなく、テンポを上げて読み進められます。文章の組み立て、作り込みも丁寧で流れるように読めますね。
そして、圧巻は第三章。もし、第三章にたどり着かずにこの本を閉じた人がいたとしたら、その損失は計り知れません。鋭さの中にも豊かで優しさがあって、読む者の心を揺さぶり、没入させる。ここ数年の読書で最も心が動いた時間を過ごしたのが、この三章を読んでいる時でした。
大きな出来事や事件での悲しみではなく、日常の、日々の生活の中に溶け込んでいる、でも確かに時々はやってくる胸を締めつけるような悲しみ。それを巧みに切り取って描き上げています。
「えもいわれぬ悲しみ」を愛おしむように大事に表現されてるのが本作です。
すべての章のラストも素晴らしい。
唐突に終わるもの、余韻を残すもの、グッと胸を締めつけるもの。強烈で切なく、痛快です。
ラストをしっかり終わらせてくれるという印象も受けました。読者の期待値が最大になるそのラストシーンに向けて物語を丁寧に編み込んでいける、稀有な作家です。
そして、そんな四編の物語のおはなしの後にはエピローグが待っています。語られる言葉の一つ一つ、登場してきた人物一人ひとりへの共感が胸に迫り、自然と涙がこぼれてきました。
最後まで悪者を描き切らないところにも感服。どんな子どもの個性も悪いはずはない、という著者の優しさが感じられました。悪者っぽく出てきた人物もラストには意味を持たせて、回収して、終わる。爽やかな読後感も特筆です。
──宝物のような、いや、宝石箱のような一冊となりました。
感動をどうしても伝えたくて紹介に力が入りましたが、ぜひ読んでほしいという思いがほとばしった結果です。
国語を大事にする、かの開成中学や海城中学がこぞって2020年度入試に出題した作品でもありますし、それも合点。
2021年度入試以降も中学入試で出題される“新定番”となる可能性も十分にある作品ですね。
ちなみに作家の朝比奈あすかさんは、文学部国文学科の先輩でもありました(ニアミスで重なってない)。
知らずに読んで最後の著者紹介で知るという……。
こちらは天才物理学者スティーヴン・ホーキング博士と、その娘で小説家のルーシーが世界中の子ども達のために書いたスペース・アドベンチャーと呼ばれる冒険物語。宇宙の神秘に触れる解説書でもあります。
主人公ジョージが宇宙について、コスモスというスーパーコンピュータと対話する際に宣誓をします。
「わたしは、科学の知識を人類のために使うことを誓います。わたしは、正しい知識を得ようとする時に、だれにも危害を加えないことを約束します」
ホーキング博士の科学に対する信念が垣間見えますね。
ストーリーに乗せて宇宙を知るというアプローチがまずとてもいい。小説はホーキング博士の娘のルーシーが執筆していますので、安心して物語を読み進められます。主人公のみならず、他の登場人物もキャラが立っていて、物語としても十分に楽しめます。
大人が読んでも発見と学びが満載の一冊です。
ホーキングの宇宙観と小説家ルーシーのストーリーのハイブリッドという贅沢な本となっています。
写真や図解も美しくとても分かりやすく、物語を追いながら抱いた疑問や知りたいと思ったことについて、スッと解説が入ってくるイメージです。
星、宇宙、科学、物理など優しく物語に乗せて学ぶことができる。理科好きの子はもう目を輝かせて読み続けるに違いありません。
小学生にはもちろんのこと中学生にも読んでほしいおすすめの一冊です。
連作となっていて、第5巻まで出版されています。まとめ買いもアリですね。
「とっつきやすい小説」も一つご紹介しておきます。この作品は「わかりやすい面白さ」ですし、児童文学・YA(ヤングアダルト)分野で抜群の安定感が定評の森絵都の名作です。
「クラスメイツ」や「カラフル」でもおなじみのリズムの良さと一人称視点のうまさは本作でも健在。読者を引き込む筆致に改めて感服します。
この「つきのふね」の主人公は中学生のさくら。そして、その友人や幼なじみとの日常が描かれています。でも、穏やかで憎めない登場人物たちが次第に壊れていき、崩壊の連鎖が止まりません。
温かく柔らかい物語の世界が、時に暴れだす。そこの不安定さに惹きつけられ、最後まで一気読み必至です。
作品全体からはライトなテイストが感じられますが、時折出てくる重厚感あふれる言葉のチョイスがたまりません。
スピード感を持ってページを繰りますが、突如出てくる力のある描写にハッとさせられる連続です。
「あたしたちはめくるめく光速で変わり続けて、どんどんあのころから遠ざかっていく」
「ゆらめく地面の上で瞬きひとつできないまま、あたしはこのときたしかに、しばらく死んだ気がする」
「この世にはあいまいにおかしい人などいくらでもいるのかもしれない」
「人より壊れやすい心に生まれついた人間は、それでも生きていくだけの強さも同時に生まれもってるものなんだよ」
「世界はしんと、音を忘れた」
描写や展開も丁寧で、そこはやはりさすが森絵都だなぁと思いました。
森絵都の少年少女向け傑作といえばこちら「カラフル」。本サイトの他のブログの記事で三年連続人気No.1となっています。これは鉄板の面白さです。「永遠の出口」もおすすめですね。
続いて日本や世界の歴史的な作品を、豊富な背景知識と共に読むことができる「講談社 少年少女世界文学館・日本文学館シリーズ」をご紹介。このシリーズ凄すぎるので、その凄さについてちょっとだけ解説します。
文学作品や、少し背伸びしたレベルの小説を読むときにぶち当たる壁が「語彙」です。
「分からない言葉が出てきたら調べなさい」大人はつい簡単に言ってしまいますが、子どもはそんなことなかなか出来ません。実情は「難しい言葉が多くてなかなか読み進められないからつまらない」です。
楽しく読書をしようと思っていたモチベーションを阻むのが「知らない言葉」であることも少なくありません。(そこを乗り越えるとすごく読む力がつきますが)
このシリーズでは、後注という形で後ろに注釈がつくのではなく、その言葉の傍にすぐ意味が載っているので、読書のスピードを落とさずに意味を把握することができます。
読書慣れしている人には少し鬱陶しく感じるかもしれませんが、それでも分からない言葉の意味を即座に知ることができるメリットは大きいですね。
物語の中の世界は、現代とは時代が違ったり国や地方によって文化が違ったりします。そこにも踏み込んでタイミングよく解説が書かれています。時代と世代のギャップを埋めてくれる丁寧な作りです。
民俗学的にも、文学の中にある生活や風土を史料として、当時の様子を窺い知るというアプローチが注目されています。
地理的要素は読んでいく上で重要です。せっかく航海冒険物語を読んでいても、それが世界地図のどのあたりで起きていることなのか。ドイツのキルヒベルクと言われてもピンとこない。イーハトーヴってなんやねん、となる。
「絵」や「地図」、「ポイントを捉えた説明」でストレスなく見聞を広め、リアリティを持って話を読み進められます。
外国への興味や憧れも読書と同時に湧いてくる、そんな設計になっています。
夏目漱石、太宰治、樋口一葉など、名作と分かっていても手にとりづらく、子どもたちは忌避します。その敷居の高さは表現の難解さや語彙、地名や舞台、背景が理解できないところに依る部分も大きいのではないでしょうか。
でも、それらの要素が緻密かつ入念に編み込まれているからこその文学だと思っています。
文学の心は細部に宿る。
そこから逃げずに優しく向き合いながら、文学鑑賞の第一歩をゆっくりと踏み出させてくれるのがこのシリーズです。
読書から得られる知識の(脱線的な)広がりがデザインされています。
21世紀版ということで2009年(日本の作品)、2011年(世界の作品)に再編。地理的な部分や情報もアップデート済みです。
余裕がある方、読書慣れしている方はまとめ買いでも絶対に損はしません。
在庫僅少。随時入荷されますが、結構すぐなくなります。かまくら国語塾にも蔵書していますよ(たくさん寄贈していただきました)。
予備校現代文の神講師、小池陽慈先生(河合塾)もおすすめされていますね。
大昔にも似たようなツイートはしたけど、講談社の「少年少女日本文学館」シリーズは、中高生や受験生が文学に親しみ、さらに昔の常識や生活調度品や言い回しや文体や語彙に慣れていくうえで、最強で最高の教材だと思う。ぶっちゃけセンターの小説なんて、これ読んでりゃ高得点とれるようになりますよ! pic.twitter.com/8TuVhofyr5
— 小池陽慈『14歳からの文章術』 (@koike_youji) June 4, 2019
もちろんポップな表紙の青い鳥文庫やレトロな岩波少年文庫も素晴らしいのですが、「読んで世界を広げる」という趣旨でいくとこの少年少女文学館シリーズにかなう児童書はありません。
今回はその中でも選りすぐりの何冊かを世界文学・日本文学で分けて紹介していきます。入り口として入り込みやすいものを選びました。
では、ご覧ください。
“物語”にできることがある。人は物語を読むことで、冒険の旅に繰り出し、まだ見ぬ未知との遭遇に心を躍らせ、困難を乗り越えたことに安堵することができます。
閉じ込められたり封じ込められたりしていた心が、物語によって動き始め、不思議な爽快感を与えてくれる、そんな経験が今、必要なのかもしれません。
いわゆる現実感を小説・物語に求めるのではなく、スリルや期待感などの心の上下動を味わっていただくのに最適。子どもたちはもちろん、かつて少年少女だった大人にも改めて読んでほしい一冊です。不朽の名作には不朽である理由があります。
言わずと知れた冒険物語。十五人の少年たちが無人島に流れ着き、そこで二年間を過ごします。少年たちが力を合わせ、時に衝突し、危険にさらされながらも、それを乗り越えていく話です。
ジュール・ヴェルヌが描く少年たちが眩しく、人物設定と配置が絶妙で、際立つ個性が冒険を彩ります。
どんな困難にぶつかっても、自分かってなことをしないで力をあわせ、熱心さと勇気をもってあたれば、きりぬけられないことはない。
今、響く言葉ではないでしょうか。
聖光学院の花家副校長先生からもプッシュいただいた作品ですね。
(参考記事:“神奈川の新王者”聖光学院─躍動のワケ:花家副校長インタビュー)
子どものなみだは──これは誓っていいますが──おとなのなみだより小さいというものではありません。おとなのなみだより重いことだって、いくらもあるのです。思いちがいをしないでくださいよ、みなさん。わたしたちは、なにも不必要に、なみだもろくなろうというのではありません。わたしがいうのは、ただ、人間はどんなにつらく悲しいときでも、正直でなければいけないということです。骨のずいまで正直でなければいけない、ということなのです。
「まえがき──その二──」より
“物語”の冒頭で作者ケストナーはまえがきとしてこの言葉を記しています。「子どもは正直」。よく言われるこの言葉ですが、「うちの子ズルばっかりするんです」「どうして嘘をついたの!」と我が子をたしなめる保護者も多く、そんなことはないと思われるかもしれません。
でも、そうではなく、ズルも嘘も全部「正直」の結果です。自分が守りたいもの、自分がどうしても貫きたいことを大事にしていくための、その子自身の渾身のサインです。ズルや嘘の先にある「正直」を見てください。
子どもの行動の背後にあるのは、いつも「愛」だということに気づくはずです。
そして、この「飛ぶ教室」はそれを教えてくれます。
ぜひ、お子様と一緒になって読んでみてください。子どもたちは、1933年ドイツのナチス政権下で書かれたこの物語の異国感を味わいつつも、スリルも友情も愛も込められた小さくて大きな冒険物語に胸をときめかせるはずですし、保護者のみなさまは子どもたちの心の正直さに触れることでしょう。
読み終わったあと、家族が共にいられる幸せをお互いが無言のままに噛み締める、そんな時間を生み出してくれる気がします。
好きな表現があります。この物語は「クリスマスのお話」とされていて、実際には物語のラストが「クリスマス」にあたるわけですが、安易に「メリークリスマス」とせず、「クリスマスおめでとう」と訳があてられていることです。
どこか違和感のあるこの表現の存在感が、この作品におけるクリスマスの価値を押し上げ、物語の筋を一つ作っていると感じています。
家族と離れて寄宿学校で過ごした少年たち。そして、愛する我が子のことを想う母親や父親。
みんながこぞって“正直なこころ”で祝おうとしているそんな一日。
日本ではなかなか味わえないこの幸せな感覚を「飛ぶ教室」は教えてくれます。
また、この「飛ぶ教室」の名前を冠した児童文学誌が三ヶ月に一度刊行されています。今をときめく児童文学作家たちがこぞって寄稿していて読み応え抜群です。中学受験でこの中から出題されることもかなり増えてきましたね。本好きにはたまらない、すごくいい雑誌ですので、こちらもぜひご覧ください。
この飛ぶ教室「転校生」号は執筆陣が超豪華。おすすめです。
続いて日本文学編です。日本文学の導入にあたって、走れメロスはこの上なく適したテクストとなります。畳み掛けるような冒頭部分、間接描写や伏線回収、情景描写、緻密な物語構成、踊るような言葉のリズム。疾走感溢れる展開やセリフに引き込まれます。
あぁ、文学ってそんなに難しくない。
そして、なんかすごい。
小学生や中学生も、そんな感想を抱く作品が走れメロスです。
本シリーズは難語への語注はもちろん、地理的な説明や動植物についての挿絵と説明がついており、文学の敷居を限りなく下げてくれています。
難しい顔をして思索に耽りながら辞書や背景知識と葛藤して読むのが文学だ、という方もいらっしゃるとは思うのですが、最初のハードルは低い方がいい。
子どもたちが文学や太宰治という小説家に興味を持つきっかけとして走れメロスは最適ではないかと思います。本書は「富嶽百景」や「御伽草子」なども収められており、ベスト盤ともいえる構成です。
また、井伏鱒二の「山椒魚」も収録されており、日本版でまずおすすめさせていただく一冊はこちらとしました。
山椒魚の苦しみ、悲哀、そして希望。「穴から出られなくなった間抜けな魚」が高尚に描かれるそのギャップが面白い。ふっと我に返ると笑えてきますが、いつの間にか山椒魚と共に苦しんでいる自分を発見するのではないでしょうか。
岩屋の中の生物や苔などの説明も詳しく情景が脳裏に浮かびやすくなっています。
日本文学を読ませたいんですよ、ということであればまずこちらから試してみてはいかがでしょう。
もちろん、夏目漱石「坊っちゃん」もおすすめです。
「児童文学」と言われて宮澤賢治を想い起こす方は多いのではないでしょうか。
ただ、私の少年時代を振り返っても、「宮澤賢治が好き」と言っている子どもに出会った記憶がありません。賢治からの子どもたちへのメッセージは伝わらないまま、子どもたちが大人になってしまいます。
どうしてでしょうか。
世界観の不思議さ、しっくりこないストーリー展開、時代や文化の違いを掴みきれない、寓意性が高く言葉が少し難解。
賢治ワールドは子どもたちには遠いものなのかもしれません。でも、そこに入り込めたごくわずかな子どもたちだけがその世界を楽しめるというのでは、それはあまりにもったいない。
入り口を入りやすくしよう。
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」
まず、読めそうなもの、楽しめそうなものから入ってみるという読み方も大事だと思っています。
本書はタイトルこそ「銀河鉄道の夜」ですが、宮澤賢治の名作の多くが収録されており、この一冊である程度「宮澤賢治」を体感することが可能です。「セロ弾きのゴーシュ」、「よだかの星」などは比較的読みやすいものになっていますので、そこから入るのも一興。
宮澤賢治読もう、じゃあ「銀河鉄道の夜」でしょ、となっても数ページで首を傾げて本を閉じてしまうこともありそうです。
「グスコーブドリの伝記」や「カイロ団長」なども面白いので、気に入った方はこのあたりも読んでみると良いでしょう。
現実が鬱屈して世界がグレーに見えるとき。物語が心を彩ってくれることがあります。
そんな時こそ、本を読もう。
今回、少年少女文学館シリーズを推して書きました。
多すぎる「ルビ」や「語注」は子どもたちの想像力を奪うのでよくない、という話もあります。それが一理あることはもちろん分かっています。でも、もっと大切なことはたくさんの子どもが名作を、文学を手に取ることではないでしょうか。
ルビや語注が鬱陶しくなった時、そこまで物語に入り込めるようになった時、子どもたちは自らこの文学館シリーズを卒業することでしょう。そこから先は自由に選んで読めばいい。岩波少年文庫に行くもよし、新潮文庫へ行くもよし、文学全集をあたってみるもよし。
触れること。
そして、日本を、世界を、知ること。
このハードルを下げることが良質な読書へのいざないとなっていくことでしょう。
良質な作品は、それを可能にします。
君たちは今がすべて、です。
どこまでも、読んでいこう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
“物語”が皆さんの心を優しく広げてくれますように。