鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2017.09.26
神奈川県に古くから残る私立併願制度。特に他県から引っ越してこられた方や、高校受験を初めて経験されるご家庭には、馴染みが薄く、よく分からないという声を聞きます。「公立高校を一校選ぶのは分かるが、私立はどうしたらいいのか」との相談を多くいただきます。長年進路指導をしている経験から、神奈川県特有の私立入試の制度について、また最近の傾向についても説明いたします。2018年度入試版に加筆修正いたしました。
おすすめ併願校についてはこちらの記事をご覧ください。
神奈川県の私立高校の受け方は大きく分けると二つあります。
細かく見ていきます。
まず、オープン入試ですが、こちらは当日の3科目筆記試験の点数だけで合否が決まる入試です。神奈川の高校入試といえば「内申点」というイメージがありますが、私立のオープン入試は内申が関係ありません。実力一本での勝負は中学受験に似ていますが、基本的には誰でも受けることが可能ですので、倍率が高くなる傾向があります(*1)。ほとんどが、2/10〜2/14の間に行われ、日程さえ重ならなければ、何校でも受験可能です。
続いて教育相談による確約型の入試です。神奈川県の高校入試では、確約校を一人一校12月上旬までに決めなくてはいけません。就活で言うところの「内定」にあたります。公立高校の志望校は出願時(1月下旬ごろ)までに決めれば良いので、まず最初に決めるのが確約校ということになります。
どのようにして確約を取るかということですが、この確約の基準は、主に内申点。加えて、中学校での取り組み(生徒会、部活動での実績、検定など)となっており、高校ごとに定められています。
そして、この基準は毎年のように変わります。10月頃に中学校や塾に通達され、11月下旬から12月上旬にかけて所属の中学校で行われる三者面談で確約校を確認されることになります。気をつけたいのは、保護者や受験生向けにはオープンになっていない、というところです。
そのため、塾の進路指導を中心に確約校を絞っていくということになります。
確約の形をさらに分けていくと次の三つがあります。
推薦入試は、その私立を第一志望とする場合、基準を満たした上で、中学校長からの推薦を得て、合格となります。最も早く終わる入試です。筆記試験もありません。ただし、他校は受けられません。人数に縛りがあったりします。例外としては、慶應義塾や中央大学附属横浜、青山学院の推薦入試のように不合格となるものも一部あります。
単願入試は、その私立を第一志望としていて、基準を満たしていれば合格です。2月に筆記試験を行いますが、基本的に不合格になることはありません。中学校長の推薦は不要です。こちらも、他校は受けられません。例外として、法政第二や法政女子の選考のように不合格となる専願入試もあります。
さて、ここからが併願入試制度の説明です。
併願確約校の合格を持ちながら、他の私立や公立高校を受験することが可能な受験形式で、もっとも多くの受験生が利用している制度です。言葉は悪いですが、他校が不合格だった場合の「受け皿」「滑り止め」となるため、言うなれば「15の春を泣かせないシステム」です。
内申点や検定などの基準点を満たしていれば合格です。2月に筆記試験を行うか、最近増えている書類による選考方法(鎌倉学園、中央大附属横浜、横須賀学院、湘南工科大などが実施)があります。
公立高校を第一志望で受ける生徒も、まずは併願の私立を決めていくというのが、神奈川県の暗黙のルールです。不合格になる可能性についてですが、「ほぼ0%」です。よほどのことがない限り不合格になることはありません。
ただし、2018年度の中央大学附属横浜がもうけた書類選考による併願制度が、他とは一線を画したものになっています。他校では基本的に「併願基準」と言われる数値をクリアしていれば、全員(時には1000人以上)が確実に確約を取れるのですが、中大横浜は2018年度より併願に定員を作り、調査書での数値が上位の人から確約を決めていくように変更となりました。
場合によっては目安となる併願基準を満たしていても定数に達した場合、あぶれた生徒は「差し戻し」となり、他の併願校を探すことになります。これは12月15日〜16日の中学校から高校に対して行われる「教育相談」の時に判明するため、中大横浜の併願が取れなかった場合、そこから他の併願校を探すことになります。おそらく山手学院、日大日吉、鎌倉学園あたりが候補となってくるかと思いますが、山手学院も鎌倉学園も基準を満たしてさえいれば、中大横浜が駄目だった場合も受け入れる、との回答をいただいております。
では、次に各校でどのような併願校を考える人が多いかを挙げてみます。
湘南や翠嵐、柏陽、緑が丘、横須賀など旧学区トップ校 |
山手学院、中央大学附属横浜、鎌倉学園、桐蔭学園、日本大学(日吉)、青稜、日大藤沢、横須賀学院(選抜)、平塚学園(特進)、横浜隼人(特進)など |
鎌倉、市立金沢、市立桜丘、横浜平沼、追浜など |
日大藤沢、桜美林、湘南工科大付属、横須賀学院、平塚学園、横浜隼人(国際)、鵠沼(英語) |
大船、七里ガ浜、市立戸塚、鶴嶺、藤沢西、横浜栄など |
湘南工科大付属、横須賀学院、平塚学園、鵠沼、横浜隼人 |
藤沢清流、横須賀総合、深沢など |
横浜、藤嶺藤沢、湘南学院、三浦学苑、湘南学院、横浜創英、横浜翠陵 |
ここ数年、神奈川県の入試問題が難化しました。これまで私立オープン受験の難関校(法政・山手学院・鎌倉学園・日本大学・中央大附属横浜など)と、公立高校の問題には難易度に開きがありましたが、急激にその差が縮まっています。そのため、私立向けの対策を少し積むことで、公立での高得点を狙いつつ、オープン入試実施校に合格することもできるようになってきました。
併願確約で一つ確かな学校をキープしつつ、オープンで法政や山手学院を受験し、そして、本命の公立高校を受験する、というパターンが増えてきました。これによって、併願校以外に実力(オープン試験)で第二志望の学校を取りに行くという流れがあります。
(依然として早慶や学芸大などの最難関校とは、入試難度に差はあります)
例)
良い傾向だとは思いますが、それでも私立オープンの壁は高いので、生半可な気持ちで私立オープンは合格できません。倍率と難易度が高いため、特に英数国三科目でかなりの実力が必要です。早いうちに内申点対応だけではない、オープンにも対応出来る実力を養うことが入試での選択の幅を広げることにつながりますので、先を見据えた応用力を身につけておきたいものですね。
参考までに2017年度の主なオープン入試実施校とその倍率を上げておきます。
公立の最高倍率である新城高校が1.71倍(今年の翠嵐は1.61倍)であることを考えると、恐ろしい倍率です。狭き門であることを十分に理解した上でオープン入試へ臨んでいただきたいと思います。
各私立高校の倍率を調べたい方はこちらから(育伸社HP)
以上、私立高校の入試制度についてのご説明でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
大事な15の進路選択のお役に立てましたら幸いです。
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