受験を超えて

鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -


どうなる? 特色検査2019(共通・選択問題)教育委員会が語る未来と中学生が今備えるべきこと

2018.07.20


激変する2019年度神奈川県公立高校入試の特色検査について、2018年7月時点での最新情報を神奈川県教育委員会の岡野指導部長からお話を伺いました。県教委が目指す未来と、塾としての入試の形の予想、そして中学生は変わりゆく入試に向けてどのような準備をしていくべきかということについて書いていきます。

今回は、神奈川県内の中小学習塾の3団体主催で教育委員会の方と「神奈川県の県立高校が変わる」というテーマで教育シンポジウムを実施した際の内容です。県教委の中枢の方と学習塾がこのような形で意見交換ができる場というのは大変貴重です。貴重であるがゆえに発見も多く、有意義な会となりました。

さて、去る7月12日、神奈川県教育委員会から特色検査についてしれっと重大な発表が行われました。6月に発表された湘南、翠嵐、柏陽、厚木の進学重点4校に加えて横須賀、平塚江南、希望ヶ丘が2019年度入試で共通の特色検査を行うというものです。さらに翌2020年度入試からは鎌倉や緑ヶ丘、光陵などを含む13のエントリー校も同じく共通特色検査を行うことが決まりました。社会が激変して難化した2018年度入試を受けて2019年度共通選抜入試はどうなるのか、新形態となる特色検査の正体はどのようなものなのか、を岡野部長のお話を振り返りながら予想していきたいと思います。

岡野指導部長は翠嵐の副校長、横浜明朋高校の校長先生などを歴任されて現職に就かれた方です。確固たる信念をお持ちで、新しい神奈川の教育を引っ張ってくださっています。

2018年入試を振り返って

マークシートの入試について

導入の背景は「採点誤りの防止」。この一点。採点誤りという不祥事は二度と起こってはいけないものだという強い意志を感じました。中でも記述式の採点にミスが集中していたとのことで、必要最小限の形で記述問題を確保しつつ残りはマークシートにするように作問。中間点のある記述問題については各科目一問ずつの出題にとどめているといいます。

「時代に逆行しているのでは?」との声に対しても、採点誤りの事故を減らすことが最優先事項であるとの見解。その中でも神奈川マークシートの性質については次のように語っていらっしゃいました。

「マークシートではありますが、思考・判断の力を見られる選択問題を作っています。思考・判断・表現の表現はさすがに評価できないが、確かな学力を測れる問題になっていると思っています」

入試難易度は全科目50点が平均点となるように作成

入試の難易度については、得点が正規分布になっていない点、科目の平均点にばらつきがある点を課題と認識されています。ただ、すべての学校で共通問題を使っていることを考えると仕方ない面もあるとのこと。全体の平均点は各科目とも50点となるように作っていると何度もおっしゃっていました。

入試問題は当日まで守秘義務を交わしながら、相当いろんな人に見てもらって何度も作り直して出来上がっているもの。毎年自信を持って出題していますが、難易度の調整は困難を極めるとのこと。平均点が低い教科が出てしまっていることは決して良いことではないと思っているものの最善を尽くした結果だそうです。

各科目入試を終えての考察

各科目についてもコメントをいただきましたので記しておきます。その前に今年の入試における合格者の平均点は以下の通り。

2018 英語 数学 国語 理科 社会 合計
平均点 56.1 56.0 65.6 45.3 41.8 264.8

英語 56.1点

難易度の調整がうまくいっている。50点強を狙っているのでこのくらいがちょうど良い

国語 65.6点

昨年度は73.1点と少し簡単だったので「下げたい」と思っていて少し難しくできた。約8点平均点は下がったので下げ方が分かった

数学 56点

昨年と比べて50点に近づけることができた。英数国についてはある程度コントロールできた、良い方向性

理科 45.3点

ここ三年で一番低くなってしまった。反省。少し易しくしたいという気持ちはある。一方で良い問題だという評判もある。本音を言うと中学生にもう少し勉強して欲しい

社会 41.8点

相当難しいという声が出ている。50点を少し超えるあたりを想定していた。記述の代わりにマークシート問題で考えさせる問題を出題したらガクンと正答率が下がってしまった。歴史分野で比較的近い時代を因果関係によって並び替える問題の正答率が低かった。難しくしようという意図ではなく、マークシート化にあたって工夫したら難化してしまった。想定外だった

進学重点校について

進学重点校は3年間の指定

三年後に取り組み状況を見て、場合によっては指定を取り消す可能性もあるとのこと。一方でエントリー校は三年間指定ですが毎年実績を見て状況によってはエントリーを取り消すこともあるとのことでした。最終的には10校程度に落ち着くのでは? という見解でした。発表資料の抜粋は以下の通り。

進学重点校は予算が多い

進学重点校については教員を三人増員しているとのこと(エントリー校は一名増員)。ICT環境を優先的に整えたり、備品で必要なものがあったら購入したりと設備・環境は整えられるようにしているそうです。

特色検査について

新コンセプトは基盤の共通化

これまでは各学校にお任せだった「問題」や「出題コンセプト」を今後は県の施策の中で共通基盤を設けたいとのことでした。どこの進学重点校に入ったとしても、ある程度学力の担保ができているような状態を目指しているようで、その基盤の上で各校の特色を出していってほしいとの考え方のようです。

共通特色と選択特色

次年度入試から特色検査実施校(現中3生は湘南・翠嵐・柏陽・厚木・横須賀・平塚江南・希望ヶ丘)で特色検査が一部共通化されます。この「共通特色」を誰が作るかは言えないとのこと。難易度も今の時点ではノーコメント。さらに、この共通特色に加えて数題作成した問題の中から各校で選択して課すことができる「選択特色」があります。ここで各学校の色を出していくことになります。例えば、10問程度選択問題を作った中でどれを使うかは各学校が選んで良いという形式のもの。イメージは下記の通り。

(参照:勉強犬さんBLOG「HOME〜私の好きな塾という場所〜」)

ちなみにこの「選択特色」は「みんなで一緒につくる」そうです。みんなって誰でしょうね? 少なくとも教育委員会のみで作るようではなさそうです。今回の特色検査実施校激増決定については次のように語ってくださいました。

「原則として学力進学重点校は必ず特色検査をやるということがあります。ということはエントリーしている学校も進学重点校を”目指している”わけだから当然やってもらうことになります。ですが、それぞれの学校の事情や準備、体力のようなものもありますので、2019年度はどうするか、とエントリー校会議で諮ったところ3校(横須賀、希望ヶ丘、平塚江南)が手を挙げたということです」

「モデル問題については発表する予定はありません」

「内容については五教科のやり直し、追加問題のようなものを特色検査で出題するつもりはありません。教科横断的な性質の強いものとなります。学力向上進学重点校にふさわしい幅広い学力を測れるような問題を作っていこうと思っています」

以上が岡野指導部長の話を元にしたレポートです。教育委員会の中の人からこんなにもたくさんの話が聞けるとは驚きでした。公教育と私教育の境が少しずつ取り払われているように感じて、嬉しくもあったシンポジウムとなりました。進学重点校の今後についての指針は以下の通り。

特色検査はどうなる?

さて、ここまでまとめてきて朧げではありますが新・特色検査の姿が見えてきました。簡単にまとめると、、、

  • 教科横断型
  • 決して易しくはない、差がつく問題
  • 思考力・判断力を問う
  • 選択問題は各校の色が出せるように

選択問題についてはおそらく各校の色が出しやすいように理数強化型や資料読み取り強化型、論理パズル強化型(九教科横断型は湘南だけだから消えるかな?)などが作られることになるのではないでしょうか。

受験生はまずは五教科。さらに特色検査過去問を幅広く触れる

岡野指導部長の話にもありましたが、学力進学重点校にふさわしい幅広い学力を持った生徒を選抜する検査になります。そう考えるとこれまでの偏って尖った特色検査ではなく、基盤が見られるような少し角が丸まった試験になるのではないでしょうか。五科目の試験で言えば今年正答率が下がった社会の歴史の選択問題のような難しさ。一捻りあって表面的ではない思考を使う問題を準備してくるような気がします。

様子がおかしいくらい長い文章を読ませる翠嵐の問題や、サイエンスフロンティアや緑ヶ丘のプレゼン記述のような問題は完全に鳴りを潜めることになりそうです。厚木・湘南・希望ヶ丘・柏陽の2018モデルは参考になると思います。

共通特色および選択特色はマークシートになる!?

このような県教委の動きを見てKING of KING(塾内のクラス名もK・I・N・Gで分かれているらしい)のステップさんが動きます。(参考:9月より全スクールで中2生の授業に特色検査・記述対策を導入します。)さすがの早さですね。やはり毎年千人単位で特色検査実施校に合格者を出す塾は違います。記述力の強化ですね、分かります。(サイフロや横浜国際IBは絶対必要)

ですが、私の見解は違います。言ったもん勝ちなので言ってしまいます。共通特色はマークシートです

進学重点校にいち早く指定された(県教委の懐刀とも言える従順な)厚木高校の2018年度の特色検査を見てみましょう。

 

 

あれ?

 

おぉ!

 

 

いかがでしょう。

英単語すら書かせません。徹底してマークシート、選択問題です。すべては採点ミスの防止のため。すべては公平な入試のため。まさに県教委がもっとも強調しておっしゃっていたことと合致します(厚木を使って実験していた?)。厚木だけでなく柏陽や希望ヶ丘もすでに選択肢の数を圧倒的に増やしています。

記述対策よりも思考力を磨く、あらゆる問題をあらゆる角度から判断して解いていく、という対策がもっとも有効なのではないでしょうか。(喧嘩を売っているわけではありません)

さぁ丁か半か。「KING」の方針が正しいか、零細個人塾長の予想が正しいか、みなさんどちらに張りますか?

正解は2019年2月15日! 首を洗って待て!

おわりに

入試制度の改革は痛みを伴うというか批判を浴びるものです。特に今回の特色検査の変更は、各トップ校がようやく出し始めた「色」を半ば消して県教委のコントロール下に置いた、という誤解も招きかねないものです。

全面的に賛成というわけではないですが、そこそこ上手くいっていたことにメスを入れて、さらによくしようとする動き自体は嫌いではありません。旧態依然のお役所仕事とは随分と違う、先を見据えた早い動きです。

共通選抜を導入した時、やはり批判的な見方も多かったと思いますが、それを乗り越えて神奈川県は全国でも評価される入試問題が実施できる県になってきています。思考力を問う出題ができる県になってきています。

初年度の生徒は変革にあたると「不運」と感じてしまうかもしれませんが、きちんと準備さえできていればチャンスです。ピンチはチャンス。発想の転換を教育に携わる我々はいつもしていかなければならないと思っています。

もちろん入試問題が頑張った子どもたちを裏切るようなものであった場合は、容赦無く批判させていただきますが、それが正常だと思います。県教委も改悪するつもりは毛頭ないはずです。正当な議論を経てさらに良いものに出来たら最高です。どんどんいい問題を作るようになって、子どもたちの頭も大人たちの頭もどんどん柔らかくなっていくことを、特色検査改革にも入試改革にも期待しています。全国に先駆けて神奈川でそれをやっていきましょう。

この日のシンポジウムの様子は各強力個人塾がこぞってブログに書いてます。どうぞご覧ください。

まずは小田原のA塾(ホンマにえぇ塾)こと慧真館。分かりやすさと面白さは抜群です。

続いて、とある個人指導塾のエリアマネージャーの勉強犬さん。途中の新特色検査の図解がすごい。

さらにこのシンポジウムを取り仕切る重鎮の一人、miyajukuさん。

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写真は神奈川県教育委員会がある関内のビルです。この日の開催場所は違いましたがこのためだけに撮ってきました。