受験を超えて

鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -


国際バカロレア(IB)始動! 横浜国際高校の改革と挑戦

2018.06.30


やはりというべきかついにというべきか。神奈川県立の横浜国際高校が国際バカロレア(IB)コース(仮称)を2019年春から開始します。近隣では都立国際高校や学芸大附属国際、2018年度新たに指定された法政国際高校などに続いての認定校です。満を持して開設された横浜国際高校のIBコースを「国際バカロレアって何?」というところも踏まえつつご紹介します。

国際バカロレアとは

国際バカロレアは、1968年に設置された3歳〜19歳までの教育プログラムで、世界中で高い評価と注目を集めています。年齢に応じて3段階に分かれており、16歳〜19歳向けのディプロマプログラム(DP)と呼ばれる部分が日本の高校でも導入され始めています。IBの理念は以下の通りです。

国際バカロレア(IB)は、多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成を目的としています。この目的のため、IBは、学校や政府、国際機関と協力しながら、チャレンジに満ちた国際教育プログラムと厳格な評価の仕組みの開発に取り組んでいます。IBのプログラムは、世界各地で学ぶ児童生徒に、人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続けるよう働きかけています。(文部科学省HPによる)

簡単に言うと「世界でたくましく生きる力を育むための世界標準の学習指導要領」みたいなものです。日本には長らく学習指導要領というものがあって、それに沿って各学年での学習内容が決められていますが、その世界標準となるものがIBだと考えれば良いでしょう。

この教育プログラムは、IB機構が認可した小・中・高校のみが提供でき、独自カリキュラムで授業を受けます。課程を履修後に実施することになるIB認定試験に合格するとディプロマが与えられ、これは世界75か国約2500以上の大学の入試で自身の能力を証明できる、非常に価値がある資格となります。この数を見ると日本のセンター試験が霞んで見えますね。このディプロマ試験で満点に近いハイスコアを獲得するとTOEFLやSATなどのスコアと同様に海外の難関大学合格に大変有利だと言われています。

IBが高く評価されている理由は、IB機構が掲げる教育理念が思考力・表現力に重点を置いたもので、異文化理解や平和な世界を創り出す子どもたちを育むものだからです。日本の教育がこれから伸ばしていこうとしている能力とも合致していますね。

IBが目指す学習者像

(文部科学省HPより 一部抜粋)

子どもたちがどのような視野を持って、何を大切にしながら学び過ごしていけば良いかということが分かる内容になっています。「探究する人」や「信念をもつ人」、「バランスのとれた人」などグッと心を掴まれる言葉が並んでいます。

ディプロマ・プログラム(DP)について

今回、横浜国際高校が導入するディプロマプログラム(DP)の対象と目的は下記の通りとなっており、これが世界で定められている標準です。学習者がひとりで、または他の人々と協力して、生涯学び続けるための力を引き出す教育プログラムと言えます。

  • 対象:16歳〜19歳(高校レベルのプログラム)
  • 目的:大学受験やその先の人生を見据え、強みや個性を明確にして、自らが進む道を見極められる人間になることを目指す

「探究」、「行動」、「振り返り」を通じて、思考や自己管理、社会的なコミュニケーション、研究などのためのさまざまなスキルを発達させることを目指しています。法政国際高校のホームページにより分かりやすくIBのディプロマプログラムについての解説がありますので、ご覧ください。

(参考:法政国際高校ホームページ IBコース

IBコースの素晴らしいところ

厳しい審査があるため高水準の教師陣

IBの認定を受けた学校は教える側の高いティーチングスキルをIB機構から求められます。勉強会や研修など生徒以上に学び続ける存在でなければなりません。生徒をコーチングしながら最適な環境を準備して共に歩んでいける豊かな人材が不可欠です。

学校には五年ごとに国際バカロレア機構の監査が入ることになっていて、数日間に渡りIB校としてふさわしい教育が行われているかがチェックされます。教員の授業の質、提供されている空間のクオリティなども審査し、もし基準を満たしていなければ指導が入ってそれでも改善が見られない場合は認定校の資格が取り消されることもあるようです。

これだけ厳しく先生を評価する高校は国内の公立高校では存在しません。先生の質が担保されている公立高校はそれだけでも大変な価値がありますね。

国内大学への進学にも有利

IBのDP修了資格は国内大学でもすでに数多く受験の際の資料として活用されています。IB卒業時のスコアを外国語の検定資格と同様に扱うような入試もありますし、IB資格者のみにしか開かれていない入試もあります。現時点でも入学者選抜で採用されているIBですが、これからもっと増えていくことでしょう。もちろん2021年度からのい新大学入試制度における「総合型選抜」で強みを発揮するのは間違い無いですよね。

大学名 入試名称 試験導入年度 学部名 対象者
筑波大学 国際バカロレア特別入試 2014年度〜 人文・文化学群、社会・国際学群、理工学群、医学群など IB資格者のみを対象
東京大学 推薦入試 2015年度〜 法学部、教養学部、工学部 IB資格者以外も対象
東京外国語大学 帰国生等特別推薦入試 2015年度〜 国際社会学部 IB資格者以外も対象
京都大学 特色入試 2015年度〜 医学部医学科 IB資格者以外も対象
国際教養大学 AO・IB・高校留学生入試 2012年度以前から実施 国際教養学部 IB資格者以外も対象
横浜市立大学 国際バカロレア入試 2013年度〜 国際総合科学部、データサイエンス学部 IB資格者のみを対象
都留文科大学 国際バカロレア推薦入学試験 2016年度〜 文学部 IB資格者のみを対象
上智大学 国際バカロレア入試 2016年度〜 文学部、法学部、経済学部、理工学部など IB資格者のみも対象
慶應義塾大学 AO入試(IB方式) 2014年度〜 総合政策学部、環境情報学部 IB資格者またはIB資格取得見込み者のみを対象
慶應義塾大学 IB資格取得者対象入試 2014年度〜 法学部 IB資格者のみを対象
立教大学 自由選抜入試 2014年度〜 経営学部 IB資格者のみを対象

(文部科学省HPより抜粋)

海外大学の受験にも有利

また、IBの資格は国際的に通用する大学入学資格として、世界中の大学で受け入れられています。加えて、IBの上級レベル科目(HL)で基準得点を満たしている生徒に関しては、当該科目に相当する入学後の単位認定をしてもらえるケースもあります。

オックスフォードやケンブリッジ、ハーバードなど世界で名だたる学校でもIBのDP修了資格を持っていることで有利に入試を進められたり、単位免除や飛び級が認められたりしています。

学力と人間性を多角的に見た上で評価をしたいと考えている大学にとってみれば、SAT等のスコアで測りきれない部分をDP修了資格によってカバーしているとも言えます。それだけ世界中で認められ評価されている「最強の資格」ということができるでしょう。

以上、IBについて簡単に解説してきましたが、国際バカロレアについてもっと知りたい方は、こちらの本が分かりやすくて読みやすいのでおすすめです。

横浜国際高校とは

さていよいよ本題です。横浜国際高校について生徒の声なども交えつつ詳しくご案内します。

沿革

旧外語短期大学付属高校と旧六ッ川高校が再編統合して2008年に誕生した単位制の高校です。公立らしからぬ先進的なカリキュラムや真の自主性を育む校風を持っています。2014年にスーパーグローバルハイスクール(SGH)にも指定されており、ICT教育も積極的に導入しています。「英語が得意」だけではなく英語を使って世界の課題を解決し、国際社会に置いてリーダーとなれる人材を育てるという理念があります。

校内のコンビニエンスストア、日本初となる第二外国語としてのアラビア語履修、1日4回チャイム代わりに流れるオルゴールなど独特な文化を持つ横浜国際。略称はYIS(ワイズ)です。男女比は1:3となっています。校歌は谷川俊太郎作詞で伸びやかな良曲。

自由。校則はない。

最低限の守らなければいけないことは提示されますが、それ以外はほぼ自由です。制服もブレザー(olive des olive)の着用が義務付けられている以外はズボンやスカート、シャツ、リボンなども自由です。髪を染めたり、ピアスをしたりするのも自由です。全ては生徒の自主性に任されていて学校からの信頼を感じ、のびのびとした三年間を生徒は送ることができます。

「人は人、自分は自分」という人が多く変に周囲に流されたりすることもなくそれぞれの感性で学校生活をエンジョイしているようです。いじめなども起こりようもなく在校生からもそんな話はほとんど聞いたことがありません。いじめを引き起こしているのは、実はがんじがらめの厳しい規則なのではないかと考えさせられますね。

海外っぽい文化祭とあまり活発でない部活動

文化祭もYISの色を存分に感じることができるオープンなものです。他の公立高校とは随分と違うインターナショナルな雰囲気が味わえます。普段から自由な生徒たちにとってその自分を表現していけるオープンな場としてフェスティバルを楽しんでいることが伝わってくる一日となります。内輪ネタだけでなく来場者を楽しませる仕組みもあるようです。

一方で部活動の環境は活発とは言えません。週4日で18時までという制限があります。SGHに加えIBの認定も控えているため先生方は会議が多く、顧問があまり部活に来られずいろんな調整も部長や部員がやっているようです。少しやりづらさを感じている生徒もいると聞いています。

学校の考えとしては家庭で過ごす時間や学校外での活動も大切にしてほしいということがあり、やや部活動に制限をかけていますが、部活を全力でやりたいという生徒とは温度差がありそうです。それでも人数は少ないながらも部活動の種類は数多くあるので、楽しみながらやる部活と考えると「ほどよい」のかもしれません。

英語を使って世界を見据える授業展開

在校生もYISは「英語の学校」だと語ります。

「最大の魅力は英語の勉強を思う存分できるところです。授業もプリントもテストも全部英語。英語に触れる時間は他の高校とは大きく違う。二年生になるとエッセイやプレゼンも英語でどんどんやっていきます。『英語なら横浜国際』で(高校2年生)

「英語の授業は基本的にすべて英語なので常に集中していなくてはいけない。質問も英語でしか受け付けてくれない。他の教科(特に理系科目)は進みがかなり遅いのでそこまで心配する必要はありません」(高校1年生)

「通っていた中学の英語が得意な人たちが集まっている印象。でも、ペラペラに話せる人はクラスに一人か二人でほとんどの人はそれほどでもない」(高校1年生)

ただ「英語だけ」にとどまらないのも特徴です。第二外国語も最低一年間は学習することになり、ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、ハングル、アラビア語の6ヶ国語から選べます。ただし国公立大学の受験を目指す場合は高校二年生で数学Ⅱ・数学Bを履修しなければならず、単位数の関係で第二外国語は履修できなくなってしまうのが現状なので注意が必要です。

また、スタディーツアーと呼ばれているマレーシア、ベトナム、カンボジアなどに四日間程度行って、孤児院に行ったり歴史を学んだりするプログラムもあります。これは三年間を通して自分が研究する三つの大きなテーマ、「グローバルビジネス」「国際平和貢献」「環境問題」について考えを深めるためのもの。「気づき、考え、行動するグローバル・リーダー育成の戦略的プログラム」の研究構想のもと日本の強みを海外にどう売り込むか、を生徒たちは考えます。事前準備から始まって帰国後の発表まで、一貫したテーマと意図を持った学習内容です。

交換留学生も多数受け入れています。

「クラスにタイからの留学生が来ていて日本語を教えたり、タイの文化を学んだりするのがとても楽しい。二週間前まではニューカレドニアからの留学生も来ていたし、本当にグローバル」(高校1年生)

二週間の姉妹校ホームステイプログラムもあります。(アメリカ、オーストラリア、フランス、スペイン、ドイツ、上海、韓国など)期間が手頃なため大人気。時にはクラス40人のうち30人くらいが海外へ行ってしまい行事がままならないこともあると言います。さすがですね。

補習・習熟度別もある

補習や習熟度別授業も行われます。特に英語では20人前後の少人数制授業となっており、帰国生を中心としたアドバンスクラスも設置されています。国公立大学進学者向けへのサポートも決して多いとは言えないものの始めているようです。先生たちも質問に行けば答えてくれますし、授業中も丁寧に疑問に答えようとしてくれます。何より先生と生徒の距離感が近いのがYISです。

「英語のレベルは全員がものすごく高いというわけではないです。帰国子女が集まっているアドバンストクラスは異様に出来ますが、そこは別クラスという構成で一緒に英語の授業を受けることは出来ません」(高校1年生)

大学との連携によるキャンパス訪問や講演会なども豊富

東京外国語大学と高大連携協定が結ばれていて、特別講演会やキャンパス訪問などを実施しています。慶應SFCや上智、横浜市大とも活発に交流し、英語による発展的な専門授業や講演会など、高校での学びを超えて深めることも広げることもできる環境です。

こんな人は横浜国際に行ってはいけない

  • 英語が得意だけど好きじゃない人
  • 自分で決められない人
  • 理系で難関大学への進学をしたい人

「英語が得意なほうだけど好きではない、という人はきついと思います。本当に『英語ばっか』だから中途半端だと英語が嫌いになってしまうかな、と思います。あと自分で決められない人、自分から行動できない人は向いてないですね」(高校2年生)

「英語が得意で好きじゃない」よりも「得意というわけではないが大好き」という人の方が充実した学校生活を送れるでしょう。また単位制ですので自分で決めて自分で学習をしていかなくてはいけません。履修した科目以外の時間をどう使うかも大切になってきます。言われなければやらない人は向いていません。横浜国際に通った人がいつも輝いて見えるのはこの「自学自習」ができるからなのでしょう。大学選び会社選びに至るまで一貫して自分がどうしたいか、何を成し遂げたいかを考えながら行動できる人が輩出されます。難関大学への合格率・進学実績とかで判断できるものではありません。

ただ理系進学についてはどうしても弱さを感じてしまいます。実際に理系を目指している生徒もいますが、授業自体が英語・グローバル最優先で理系科目の進みも早くありません。一般入試を突破するためには予備校に通ったりしながら鍛えていかないと難しそうです。前述したように国公立を目指す場合は、第二外国語を我慢しなければならないという事態も起きているようです。

ここ数年サイエンスフロンティアも国際化を果たしているので、理系の国際科ならサイフロ、文系なら横浜国際という切り分けでも良いかもしれません。ただYISもこれからはIBコースで理系の選択も多くできるようになりますし、そもそも科目横断的な学習が多いので国公立目指すならIBコースという選択肢も浮上してくるでしょう。

指定校推薦とAO入試を多用。難関大学に一般入試で合格するのは至難

指定校推薦で進むのは毎年20%程度。それ以外にもAO入試をフル活用して進学を決めます。大学進学実績を見ると上智、国際基督教大、慶応、早稲田と錚々たる名前が並びますが、AOや自己推薦・指定校推薦での進学も数多くあります。やはり進学先は国際語系の学部が圧倒的に多いようです。

そうは言っても気になる進学実績。2018年度は良かったようです。

参考:平成30年度横浜国際高校進学実績

横浜国際高校のバカロレアとは

  • ディプロマプログラム
  • DLDP(デュアル・ランゲージ・ディプロマ・プログラム)
  • 高校卒業資格とIBディプロマ資格

前述した国際バカロレアの理念、教育内容を実行していくのはもちろんのこと、DLDPと呼ばれるプログラムを導入します。一般的には英語もしくはフランス語で行われるIBのDPですが、横浜国際では英語と数学の授業のみを英語で実施し、他の科目は日本語で実施される予定となっています。

また文部科学省が定める高校学習指導要領の基準も満たしたカリキュラムとなっているので、高校卒業の資格と同時にIBのDP修了資格も取得できます(世界統一試験の結果などIBの基準を満たす必要あり)

横浜国際バカロレアコースのカリキュラム(予定)

1年次、4月〜12月で高校学習指導要領で定める必履修科目を中心に学習。1年生の1月からいよいよIBのカリキュラムがスタート。DP科目以外では体育や保健の授業は三年間必ず行われ、家庭科や情報などの授業も随時実施されます。

DP科目(コア)

全員が以下に示す三つの必修要件に二年間取り組みます。授業は日本語で実施。

①知の理論:知識とはどのようなものかを分析し、どう構築されているかを探究していく。プレゼンテーションと論文を提出することで学習成果を表現し、評価する

②創造性・活動・奉仕:芸術などのアイデア活動、身体的活動、他者とともに共同でとりく活動の三種類の体験的な学習

③課題論文:生徒各自が履修しているDP科目に関連した研究分野について特に興味のあるトピックを一つ選び、個人研究に取り組む。リサーチスキルや記述力を育む

DP6科目

DPでは3つの必修要件である「コア」と6つのDP科目を同時並行で学びます。各グループから1科目ずつ選択して二年間取り組んでいくことに。グループ6の音楽はグループ4の1科目で代替することができるようです。SL(標準レベル)を3科目、HL(上級レベル)を3科目履修します。

HLの授業で高評価を得られることが海外大学の入学後単位になることもあるので生徒にとって励みにもなりますね。

グループ名 YISで実施予定のDP科目と内容 学習言語

言語と文学

(母語)

日本語A:言語と文学(SL/HL)

日本語で書かれた作品の分析を通して、作品文化の関係や言語の役割等を学ぶ

日本語

言語習得

(外国語)

English B(SL/HL)

身近な話題から、文化、地球規模の問題まで多様性について理解を深め、国際的な視野を広げていく

英語

個人と社会

歴史(SL/HL)

世界史をプレゼンテーションや議論を中心に学ぶ。比較や分析を通して批判的思考力を育成。国際社会の課題の解決策を模索し、歴史研究の基礎スキルも身につく

日本語
 

理科

物理(HL)、化学(SL/HL)、生物(SL/HL)

観察・実験・ディスカッションを通じて自然現象を深く分析する。科学の本質を学んでいく

日本語

数学

数学(SL/HL)

原点から数学の世界を探究。知識、考え方を学び科学技術を数学の観点から見直していく

英語

音楽または選択科目

音楽(SL)

表現活動を中心に。自分の手で音楽を作り出す喜びを味わう

日本語

(学校紹介パンフレットから抜粋 一部省略)

横浜国際IBコースの先生は選りすぐり

前述のようにIBのカリキュラムを教えられるのは厳しい審査をくぐり抜けた人、十分にトレーニングを積んだ人のみです。必然的に優れたコーチングとファシリテーションスキルを持った先生しか担当が出来ないということになります。

横浜国際高校のIBコースを担当するのは、以前からいらっしゃる先生の中でも力がある先生、そしてIBコース設立準備のために他校から異動して来られた先生、ということになります。IB機構から「NO」と言われるわけにはいかないため、全県から力のある先生が集められているのは容易に想像でき、IBコースでハイレベルで面白い教育が受けられるのはどうやら間違いなさそうです。

こういう先生がIBコースで英語で音楽を教えることになるのでしょう。

「音楽の先生は音楽高校・音楽大学卒でイギリスの大学院にピアニストとして留学して、日本に戻ってからは青年海外協力隊での活動もしていたそうです。中国語、アラビア語少し、スペイン語、フランス語、イギリス英語が話せるというマルチリンガルな先生です」(高校3年生)

入試概要

まず、国際科本体(普通コースのことを「本体」と呼ぶらしい笑)かIBコースかで第一希望・第二希望を出すことになります。国際科本体第一希望の場合の募集も一部変更となっています。

本体入試

内申 学力検査 日本語面接 英語面接
一次選考

定員の80%

二次選考

定員の20%

一次選考と二次選考の考え方は今まで通りですが、2019年度の横浜国際は定員の80%までが一次選考(内申4:学力検査4:面接2:英語面接3)。他校では一次選考は定員の90%までが内申を含めたS値による選考ですのでここがまず違います。

そして二次選考の20%枠に関しては、「本体第一希望で一次選考に漏れた人」と「IBコース第一志望で基準を満たさなかった本体第二希望の人」でS値順(内申0:学力検査8:面接2:英語面接5)で並び替えて定員まで合格者を出すという流れです。

「IBコース第一志望で基準を満たさなかった本体第二希望の人」はIB入試での特色検査(論文の方)は無視され、学力検査・日本語面接・英語面接が選考資料となります。

IBコースから降りてくる生徒はおそらく高学力層と考えられるので、本体第一希望の場合は学力検査に自信がなければ二次選考は受かりません。内申が足りない状況でチャレンジする場合は模擬試験等での偏差値をよく睨みながら志願していくことになるでしょう。

IB入試

一般募集 特別募集(海外帰国生徒)
募集定員 20名程度 5名程度
志願資格 公立高校と同じ(全日制) 公立高校海外帰国生募集と同じ
選抜のための検査 学力検査、面接、特色検査 学力検査、面接、作文、特色検査
選抜の方法 公立高校入学者選抜選考基準に基づいて選考

IBコースでの選考方法は次の通り

内申 学力検査 日本語面接 特色検査(論文) 英語面接

内申の割合は4割で本体と変わらずしっかりと内申点も評価されることになります。ただしIBコースでは英語内申点が2倍にはなりません。英語が5であることは当たり前で他科目とのバランスの良さを重視しているようにも見受けられます。また同様に学力検査4割も守ってきていますので数国理社のテストの出来も重要です。教科横断的な学習が展開されるIBコースとしては、「『英語だけ』の人はお断り」という意図が感じられます。

IBコースのみで実施される特色検査(自己表現検査)のサンプル問題が示されました。小論文形式で社会的・国際的な問題についての自身の考えを述べるというものです。「教科横断的な資料を読み取り、中学校までに習得した知識・技能を総合的に活用して、自分の考えを日本語や英語で記述する」という内容になります。

SDGsが題材になるのは納得です。200字以上400字以内はむしろ字数が少ないと感じますし、自らの価値観・意見を簡潔にまとめる要約力・構成力が重要となってくるかと思います。

「動物園は必要か」という英語の問題も自身の判断・思考を表現していく上で面白い出題です。正解のない問題について自分の立場を取りつつも、反対の意見を汲み入れていくというまさにグローバルな社会課題を解決していくために必要な構えを問う問題と言えるでしょう。

都立国際の小論文入試は参考になるかと思います。基本的に神奈川県は東京都の後追いが多いので、まずは都立を見るというのが鉄則です。ただ、都立国際は英語の問題は英問英答であるのに対して横浜国際のサンプル問題は和問英答となってますね。

(参考:都立国際高校のホームページ IBコースの検査問題

その他には近隣の法政国際高校がIB入試を2018年度から導入しています。そちらも参考になるかもしれません。

ただでさえ2018年度入試では募集が1クラス減の138名となり横浜国際高校は高倍率の入試となりました。そのため、合格者平均得点や平均点は高いものとなっており、2019年はIBコース設置によってそのレベルはもう1段階上がることでしょう。

おわりに

毎年のように横浜国際高校を受験していく生徒がいますが、基本的に「英語」をベースに学校選びをした結果行き着くことになる学校です。でもそれだけではなく自分で決めた学校を自分で楽しむという気持ちがあるからこそ、卒業生たちは充実した学校生活を送れているのでしょう。これにIBコース導入という新たな風・大改革が入り、在校生みんなが大好きなYISはどう変わっていくのでしょうか。

在校生の中には「優秀な先生がIBコースの設立準備に回っているため授業の質が全体的に落ちている」(高校3年生)や「ワイズのカラーが分離しちゃう」(高校3年生)というように否定的な意見も存在します。実際に校庭の一部に新校舎棟を建設するため、部活動ができなくなったり工事の音で授業に支障が出たりと具体的な影響も今後出てきそうです。IBコースを作っていくこと自体は素晴らしいことだと思いますので、在校生ファーストで全県に応援してもらえるような準備と革命を進めていってほしいものです。

どのような学校になっていくのかこれからも目が離せません。記事を書いていて胸が高鳴りました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

記事中の素敵な写真はすべて写真同好会の在校生に提供していただきました。ありがとうございます。またたくさんの情報をくれた卒塾生のみなさんもご協力ありがとうございました。