鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2020.10.19
ギリギリのところでの合否を左右すると言ってもいい「面接」において、重要な役割を果たす面接シートの記入の仕方について、7つのコツとそれぞれの項目におけるポイントをお伝えします。大切なことは、話すための「リード」の役割をこの面接シートが担っているということです。自分が話し、伝えたいことを要約し、相手に伝わりやすくするためのツールがこの面接シートです。
はじめにお伝えしておきますが、面接シートは評価の対象にはなりません。あくまで評価は面接試験での口頭のやり取りによってなされます。ただし、一日に何十人もの受験生を一人の面接官が担当することを考えれば、話していることが面接シートにしっかりまとまっていると、メモが取りやすいですし、また試験直前に目を通した際に先入観で良い印象を与えることが出来ます。
面接官も人間です。内容が分かりにくいもの、字が雑で読みにくいものはマイナススタートになる可能性があります。「あなたは何者で、本校で何がしたくて、将来はどうしていきたいの」これを伝えることが重要です。それでは、まず七つのコツについて。
回りくどい言葉や難しい言葉を使うのではなく、簡潔かつ的確に読む人にとって分かりやすいことが重要です。保護者の方や、学校・塾の先生、国語が得意な友達に見てもらうと良いでしょう。自分が伝えたいことが文から読み取ってもらえているかを確認してください。
ポイントというのは、面接官が質問をするときのとっかかりとなる部分と考えてください。伝えたいことを五個も六個も盛り込むのではなく、二つないしは三つほどに絞ってまとめていくと良いでしょう。
あくまで「ある程度の」具体性です。なぜ強調しているかというと、面接シートは面接官にとって「全力で読む」ものではなく、「目を通す」ものだからです。具体的に書きすぎると、文字が小さくなり、面接官は読む気が失せます。
逆に抽象的すぎると、突っ込みどころを増やしてしまい、面接の場で深掘りされる可能性があります。十分に準備ができているのであれば問題ありませんが、答えられないとマイナス評価になってしまいます。
という順番でストーリーを構築していくと良いでしょう。面接官は読みやすく、実際に面接で話すときのガイドラインにもなります。
高校生活を通して二つのことを成し遂げたいと思っています。一つは、理系での専門分野を探すこと、もう一つは自分の表現力を高めることです。(①)
貴校には豊富な実験設備があり、多数の理系大学に進んだ先輩方がいらっしゃいます。先輩や先生方、卒業生の方から話を聞くことで自分に合った分野を探すことができ、また、探求活動によって自らが選んだテーマについての発表能力を高めていくことができます。(②)
将来、研究者として世界に貢献できる人材となるために必要な力を貴校で身につけられると考え、入学を希望いたします。(③)
こんな感じで書いていくと良いでしょう。過去、現在、そして未来へと続くストーリーをまとめていきます。
伝えたいことを最初に持ってくるのは、意見を伝える際の基本です。まず、結論。そして、その根拠や裏付けとなる体験を持ってきましょう。ナンバリングというのは、項目立てして伝えるということです。
例えば、「理由は二つあります。一つは、〜。もう一つは、〜。」「力を入れたことは三つあります。一つ目は、〜。二つ目は、〜。三つ目は、〜。」という形です。読む際も聞く時も明らかに受けとめやすくなりますので、おすすめです。
書かなければいけない四つの項目全体に一貫性が出ると良いでしょう。その際に、「自分のよいところ」をまず考えて、そこから導いていくと一貫性が出しやすくなります。
よいところを伸ばすために学校を選んだと考えると、志望動機が見えてきます。よいところを生かしながら、学校での教科や教科外での活動に意欲的に取り組んできたと考えると、二つ目・三つ目の項目も書きやすくなります。
あるいは、自分のよいところが、教科や教科外の活動によって発見されたというストーリーもよいでしょう。そして、それらを生かしながら将来の職業や進路を考えているという道筋が立てられると一貫性が出て、話に厚みが出てきます。
いろいろな、様々な、たくさんの
面接シートを記入していく上でもっとも気をつけた方がいいこと、最大の注意点が、このNGワードを入れてしまうことです。このNGワードを私は「マジックワード」と呼んでいますが、これを使ってしまうと「それっぽく聞こえるのに内容がない」という事態に陥ります。気をつけましょう。
もちろん、本番の面接試験でも使ってはいけません。「いろいろって?」「様々というのは?」「たくさんとはどのくらい?」という質問が来てしまいます。
(NG例)私が貴校を志願いたしましたのは、勉強だけでなく様々な活動に力を入れており、いろいろな先輩方やクラスメイトと触れ合うことで、これまでに経験することのできなかった、たくさんのことを吸収できると考えたからです。
どこの学校でも使えそうですが、全く内容がありません。でも、それっぽく聞こえます。危険です(笑)。
言うまでもありませんが、丁寧に書きましょう。字は人を表します。誠意を見せるべきです。入試や就職試験をお見合いにたとえる人がいますが、相手に気に入ってもらおうと考えているのに、雑に自己紹介をする人はいませんよね?
きれいでなくても少なくとも丁寧に書くようにしましょう。そして、面接官はおそらく面接シートを斜め読みします。ですから、大きめの文字で読みやすさを追求すると、さらに良いと思います。
校風・学習体制・部活動・行事・特徴的な活動・国際理解などの切り口で考えていくと良いでしょう。
具体性が何より重要です。そして、可能な限りその学校の校風に合わせていくようにしましょう。そのためには、事前の調査が必要です。
学校について知り、その学校で自分をどう生かして活動していくか、その学校で得たことや身につけたことを将来にどう生かしていくかが見えていくような内容にしていきましょう。
正直なところ「自分の学力と内申点で行ける一番偏差値が高くて、近い学校だったから」という可能性は大いにありますが、これを書くわけにはいきません。
もし、それだけが理由だとしても後付は可能です。「なぜ、近くて一番偏差値が高い学校に行こうと思ったのか」という部分には根拠(論拠)があるからです。
学力が高いということは、自分の力を伸ばしていける可能性があり、高校での学びを通して得たいことがあるからに他なりません。また、近くの学校を選ぶということは、単に楽をしたいということもありますが、楽をすることによって生まれた時間を他に使いたい、と思っているからでしょう。そのあたりを突き詰めていくと、すべての選択には理由があるということになります。
なぜ、その学校なのか、よく考えてよく調べて、熱い思いとともに語れるような志望動機を作り上げましょう。
各教科、勉強面で力を入れて取り組んだこと、という内容を書いていきましょう。
具体的には、苦手科目の克服、得意科目の伸長などについて、工夫したことや、時間をかけたこと、強く意識していたことなどについて触れて書いていきましょう。
そして、それを通して何に気づき、何を学んだかというあたりまで含めて書いていくと、意欲が見えてくると思います。ここで書いたことから「自分のよさ」が透けて見えてくるとなお良いですね。
行事や部活動、生徒会活動や委員会活動、その他の学校外の活動などについて触れていくと良いでしょう。
クラスの団結に貢献したこと、部活動で自分のスキルを磨くために努力したこと、生徒会活動や委員会活動を通して学んだこと、学校外の活動で得たものなど、具体性がありながら、自分のよさがにつながるように書いていきましょう。
もっとも熱く語れる部分です。自信を持って話せる内容につい書いておくとよいと思います。
自己PRと考えてください。ネガティブなことを書く必要はありません。遠慮する必要もありません。日本人が苦手とするところですが、よく自分を見つめて、どんな時に自分のよさが発揮されているかを考えて、まとめていきましょう。
ここで大事なことは、この「自分自身のよいところ」というのは、面接で直接聞かれる可能性が低い、というところにあります。なぜなら、「必ず聞かれる質問項目」に上の三つは入っていますが、この「よいところ」は入っていません。どうしてでしょうか。
それは、この「よいところ」を発揮して中学校生活の中で教科や教科外の活動に意欲的に取り組んだのだろう、そして、さらに伸ばしていくために高校選びをしているのだろう、というつながりを高校側も求めているのではないでしょうか。書いていること、面接で話すことに一貫性を出していくために、このよいところから書いてみるのも一つの書き方です。
なるべく、オリジナリティを出したいと思いますが、オリジナリティを持っている中学生ばかりではありません。身内や先生、仲のよい友達などから話を聞いて、自分の良いところを探し、言葉にしていきましょう。実際の行動や活動、そして自分の選択の中にヒントがあることが多いと思いますよ。
①字もきれいですし、内容もよくまとまっています。具体性もあり、この人の話をもっと聞いてみたいと思わせてくれる面接シートです。
②きれいではないですけど、ポイントは上手くつかめています。ストーリーがしっかりしているので読みやすいですね。彼なりには精一杯の字だということでした。
③分かりやすく簡潔で、人柄がよく表れている面接シートです。「自分自身のよいところ」で主観と客観を織り交ぜながら書いているのが素晴らしいですね。
面接は非常に重要です。
もちろん、合否を左右するという点でもそうですが、受験生が自分自身を見つめ直し、自分の言葉で自分を表現するチャンスだからです。自分だけしか分かっていない自分自身、自分でも分かっていない自分自身を発見していき、それを人に伝える言葉にしていくという作業は、大変価値があります。
その意味で、面接シートの記入はその準備段階。よく考え、自分と対話して、仕上げていきましょう。そして、言うまでもなく本当に大切なのは実際の面接試験です。面接シートが書き上がったら順次、面接の練習を始めていきましょう。面接のコツについては、こちらの記事をご参照ください。
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