鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2019.12.17
神奈川県公立高校2020年度入試の各校の人気や動向についてオリジナルの倍率予想をしていきます。毎年書くかどうか迷うのですが、2020年版を読みたい、という声が多く寄せられたのと、検証してみたいネタがあるので、今年も書くことにしました。
2020年の公立高校入試倍率「速報と分析」はこちら。
目次
この時期になると志望校の動向が気になる人も多いと思います。でも、神奈川県は倍率の話をする人が多すぎます。理由としては一昨年書いた通りです。塾主導の倍率至上主義ということですね。
「今年の〇〇高校の倍率はやばいらしい」「△△高校はうちの塾の志願者だけで募集定員を超えるんだって」など受験生を惑わせる情報が飛び交います。しかしながら、倍率を気にしたところで一点も上がることはなく、「倍率の話をしている受験生は伸びない」から「倍率の話をしている受験生は落ちる」にアップデートしておきましょう。
倍率は何も教えてくれません。倍率情報が与えてくれるのは、不安と迷いと慢心と。受験勉強で向き合ってほしいのは他の受験生ではなく、自分の内なる状態です。倍率の話をしている受験生が周りにいたら冷笑してあげましょう。
では、なぜ書くのか。情報を求めている人がいるからです。そして、書くことが一番自分の理解を深めるからです。受験生本人は気にする必要がなくても、進路指導をする側には必要です。だから、保護者と塾の先生と学校の先生に向けて書いているつもりです。(時間の都合で倍率予想を紹介する学校数が減ってしまい、申し訳ありません。。。)
倍率予想をしていく前に、倍率と関連して重要だと思われる「内申点の現状」について検証したいことがありますので、そちらについてまず書いていきます。読みたくない方は飛ばしてください。でも、大事だと思います。
私立高校を訪問している中で最近気になる言葉を聞くようになりました。それは「高い内申点を持つ子が増えてきた」というものです。私が訪問している学校は県立上位校の併願となる学校が多いわけですが、果たして本当なのでしょうか。
高い内申点の受験生が以前より増え、併願基準を簡単に満たしてしまうため、入学者が多くなってしまう。「内申インフレ」とでも言うべき状況がある、と。
倍率予想とも遠くで繋がる話ですので、検証してみたいと思います。
併願(書類選考)基準が上昇しているのは主にトップ校併願となる学校ばかり。具体的には山手学院・中央大附属横浜・鎌倉学園・桐蔭学園です。他には、併願制度利用とは異なりますが、同様に高内申点を要求される法政第二・法政国際の書類選考通過基準点も上昇しています。もちろん、各学校の魅力が上がりそれに伴って人気が出ていることもありますが、その中で複数の学校の先生が「内申インフレ」に言及していました。
逆に、オール4前後が基準となっている日大藤沢・横須賀学院・湘南工科大附属・平塚学園などの私立ではここ数年間殊更に基準を上げている様子はありません。以上のことから仮説を立てて検証していきたいと思います。
仮説1:トップ校および難関校受験者(内申40以上)で内申インフレが起きている
仮説2:上位校受験者(内申40未満)では内申インフレが起きていない検証:進学重点校/エントリー校/合格者平均内申40前後の難関校/湘南地域上位校SOFTS/各地域上位校の5グループにおいて「合格者平均内申点」の5年間の推移を追うことで、内申インフレがどのカテゴリでどの程度起きているかを測る
カテゴリごとに分けた理由はそのカテゴリ内で志望校の移動が起きやすいと考えたからです。年による人気不人気の変動をカテゴリ内で吸収するイメージですね。
まずは、進学重点校の内申推移を見ていきましょう。
進学重点校は内申平均が43.0付近で推移しています。さすがの数値ですね。翠嵐・湘南については5年間ほぼ変わりなく、柏陽が伸びてきていることがわかります。厚木はややダウンでしょうか。柏陽の上昇については、翠嵐・湘南が入試得点での実力勝負の趣が強まってきており、それを避けた「内申点が高いものの当日の入試勝負にやや不安がある層」が集まっているということが推測されます。厚木は上がったり下がったりを繰り返していますが、これは倍率との関係が強そうです。
2016年〜2019年の切り口だと平均して0.4ポイント上がっているという見方も出来ますが、柏陽の変動によるところが大きいので、均すと際立った変化がなく、進学重点校の合格者平均内申点からは「内申インフレは見られない」と言ってよいでしょう。
続いて進学重点エントリー13校です。
明らかに上がっていると言えるのが光陵高校、そして下がっていると言えるのが茅ヶ崎北陵高校です。他の学校については倍率とほぼ相関関係がありそうな変動です。横浜緑ケ丘や川和は非常に安定感のある推移となっていますね。茅ヶ崎北陵・横須賀の2校がダウントレンドですが、全体としては進学重点エントリー校は緩やかな内申上昇カーブを描いていると言えそうです。
グラフにするとこんな感じ。
次は進学重点校・エントリー校を除く難関校(内申平均が40付近の学校)の数字を拾いました。
市立金沢・新城はここ数年で難易度が上がった学校です。それに伴い、内申平均も上げてきています。それ以外の学校も概ね内申平均を上げてきていて、このカテゴリでは内申インフレに近いものが起きています。平均で0.5アップだとしても中3内申では2倍換算することが多いので、結構大きな変化ではないでしょうか。
最後に湘南地域上位校SOFTSとその他地域上位校は下の通り。
ほぼ完全に倍率との関連性が強い状態になっています。藤沢西は近年人気が高く難易度が上がった結果、内申平均点も上昇していますが、他は学校によってマチマチ。変動が激しい状態ですね。上位校から傾向を見出すのは難しそうです。
以上5カテゴリ別に見てきました。カテゴリごとの平均点の推移をまとめたのが下のグラフです。
検証結果としてまとめます。
……「インフレが起きている!」と声高に叫べるような結果ではありませんでした。
検証結果を私立高校と教育委員会に叩きつけて、「ヤバくない?」と脅す予定だったので忸怩たる思いですし、やや徒労感もあります。しかしながら、現場の実感値としてはインフレは起きていて(複数の他塾塾長からも同意を得ています)、私立高校も実際にそれを認めるような発言をしていますが、実証までは出来ませんでした。
諦めが悪いので、現実と照らし合わせて要因を推測してみます。近年、進学重点校や横浜緑ケ丘などの人気が爆発していて、高内申点“不”合格者が以前よりも圧倒的に増えています。高内申点を持っていると、トップ校を受験しがちですし、塾は進学実績のために突撃を推奨し、中学校は内申点でしか判断しないのでトップ校を勧めます。
結果、実力不足で不合格となる“内申弁慶”が多数出てきます。そして、私立併願校の入学者が増えすぎたり、想定していた学力層と違う受験生が入学してきたりするということが起きています。
私立としては入学者を絞るために併願内申基準を上げる。教育相談で困ってしまう中学校側は、該当しそうな生徒に忖度して甘めに内申をつける。すると基準を満たす生徒が増える。そしてまた併願内申基準が上がる……。というイタチごっこが繰り広げられているように感じます。まさにインフレ。憶測にすぎませんが、推察としてはいい線いっていると思います。
このインフレが行き着く先は、私立併願制度の頭打ちです。2020年度入試では数校で上限(45/45)に肉薄しています。
このままでは公平な入試が行われないし、正当な評価を得られず、ミスマッチが生まれる可能性があります。最悪の場合、数年内に内申バブル崩壊が起きることも考えられます。
内申バブル崩壊とは何か。インフレ現象を止めるために、内申点を抑制する(正当化・標準化する)状況が訪れることです。
起こり得ると考えているのは「中学校の序列化」です。具体的には私立高校の公立中学に対する牽制と、県教育委員会によるチャレンジテストの実施が考えられます。(あくまで個人的妄想です)
私立としては正当に評価されて内申点を取り、求める生徒像に近い生徒に入学してほしいという思惑があるはず。内申インフレはミスマッチを引き起こします。
ミスマッチを防ぐために、実際に法政第二や法政国際では、中学校ごとに入学者の高校入学後の成績推移をデータ化して追っています。法政国際高校は書類選考の際に学校独自の係数を設定し、評価が高い中学校からの受験者を優遇しているということを明言しています(※優遇の幅は明らかになっていません)。同じ内申点であっても、中学校によって合格不合格が分かれるということです。公平性を担保する上では非常に合理的なシステムですね。
現状の併願制度での入学者選抜が機能しなくなった場合、他の私立校でも同様の制度を導入する可能性が十分にあるのではないでしょうか。それにより各中学校では無闇に内申点を出したとしても、併願合格が取れなくなります。
近隣の他中学では同じ内申点で合格しているのに…という噂が立つことは避けたいとも思うはずです。中学校への牽制として、「内申を甘く付けても無駄ですよ」「公平に評価してください」というメッセージをつきつけることができます。
2021年度入試から特進クラスを設ける山手学院も何らかの動きがありそうです。
大阪府で導入されている全中学校で一斉に実施する共通テストがチャレンジテストです。公立中学校ごとの平均点を算出し、その点数によって各中学校で付けていい平均評定の幅が決まります。いわば、「中学校評価のためのテスト」です。この制度により、中学校ごとに5が付きやすい、付きにくいなどといった不平等を最小限に食い止めることができます。
大阪府教育委員会ホームページより抜粋
ものすごく感じ悪い制度ではありますが、公立入試における内申点の公平性を高めるための一つの方法かと思います。
他にも手はあります。まずは、神奈川県として平成24年度まで公表していた「学習評価に関する調査」を再度集計・公表してはいかがでしょうか。各中学の平均評定と5の割合が分かるデータです。不平等や内申インフレに歯止めをかけるため、抑止力を発揮することができるはずです。以前やっていたわけですから、やれないことではありません。チャレンジテストの導入や私立側に主導権を渡すことよりも妙案だとは思うのですが。
(参考:平成24年度学習評価に関する調査)
さて、お待たせしました。ようやく倍率の話をします。前置きが長すぎて疲れてしまった人、ごめんなさい。
倍率予想は、11月末発表の進路状況調査・11月までの神奈川全県模試志願者動向・県模試の志願者動向の実数に加えて、情報収集した結果から弾き出しています。
昨年は地元鎌倉高校と希望ケ丘、湘南台でピタリ賞でした。緑ケ丘・多摩・横須賀・平塚江南・秦野・追浜も誤差範囲ぐらいに収められたと思います。そこそこ精度は高いと思いますが、あくまで参考程度です。(昨年度予想の結果:速報と分析 2019神奈川県公立高校入試倍率)
それではご覧ください。
注目が集まる学力進学重点校、湘南・横浜翠嵐・厚木・柏陽の進学重点校(SYAH《シャー》:ペルシャ語で “王”を意味するらしい)の倍率から見ていきましょう。
4校とも前年と比べて0.1ポイントも増減しない“無風”の倍率予想となっています。学力向上進学重点校として定着し、全県からトップ層が集結するという構図・受験者層が定まったということでしょうか。各塾の進路指導も中2の内申がこのくらいならSYAHを目指す、中3夏時点でこの偏差値なら湘南・翠嵐狙える、ということがかなり明確になってきていると思います。
各校では進学重点校として人事面での強化が進んでいます。また、進学重点校の校長先生は教育委員会を経て就任されていることが多く、県が目指す方向性を熟知したリーダーの元、各校の教育活動がブラッシュアップされているように感じます。
翠嵐と湘南を語るときに「翠嵐=ガリ勉、湘南=青春」のステレオタイプがありますが、極端すぎて当てはまりません。翠嵐は勉強および大学進学に向けての仕組みが他の県立よりも洗練されていて、学習管理を徹底することで実績を出しています。行事への取り組みは本当に盛んで、翠嵐に行ったら勉強しかしないというのは偏見です。湘南についても、部活や行事ばかりに目がいって浪人する他ない、という悪評がありますが、湘南生は生徒主体で学習へのモチベーションを上げることも多く、実際に現役合格率を比べたときにも翠嵐と湘南は大差ありません。
2019年度の大学進学実績はこちら。
両校ホームページ進学実績一覧より作成
翠嵐も湘南も現役東大合格率としては翠嵐4.2%、湘南3.3%と変わりません。湘南は東大だけでなく、京都大・一橋大と進路が多様化しているのも注目するポイントです。他には湘南は早稲田に強く、翠嵐は慶應に強さを発揮していることが分かります。私立の傾向は毎年概ね変わりません。
先日、湘南高校を訪問して校長先生・副校長先生にインタビューしてきた記事がありますので、よろしければこちらもご覧ください。
また、慧真館岸本先生による翠嵐高校訪問記も、翠嵐の現在地を知る上で貴重です。あわせてお読みください。
アドバンス校である湘南・翠嵐の後塵を拝し、一時期は差が広がった感もあった柏陽高校ですが、ここにきて人気復活の兆しです。要因としては、落ち着いた校風の再評価、最大の欠点とも言われていた“あのトイレ”が改築されて綺麗になったこと、湘南・翠嵐の高倍率を敬遠する受験生が増えたことなどが挙げられます。
厚木も進学重点校として安定した評価が根付いてきました。定員厳格化の中で健闘している私立大学合格の実績もさることながら、2年連続で現役国公立合格者数3桁を輩出するなど、進学実績の面でも実力を存分に発揮しています。
名実ともにSYAHが進学重点校として君臨する2020入試となりそうです。
続いて学力向上進学重点校エントリー校13校を見ていきましょう。長すぎるので以降SJE13(エスジェイイーサーティーン)と表記します。
2020年度からSJE13は全校共通特色検査を実施します。特色検査実施校を忌避する動きはこれまでもあり、2020年度も敬遠による人気減が予想されていました。しかしながら、12月現在でその動きは見られません。特に横浜平沼や大和などは他校へ受験生が流れるのではないかと懸念されましたが、逆に受験生を集めています。
このレベルの学校を志願する受験生たちが、「どこを受けても特色検査がある」ということで腹を括ったのではないでしょうか。前年度入試で一度「共通特色」の姿が見えてきていることも、不安を払拭する材料となっていることでしょう。
翠嵐・湘南に匹敵する倍率が続いている横浜緑ケ丘は今年も人気継続。これまでの特色検査は、独自の企画書提案型だったため、共通特色導入は緑ケ丘志願者にとっては逆風かと思われました。しかしながら、現在のところその傾向は見られず、前年までの高い人気をキープしています。理数教育推進校であることへの懸念や難関国公立大学合格者数0もどこ吹く風で、在校生曰く「いい人しかいない」校風と綺麗な校舎が人を呼び、2020年度も緑ケ丘は厳しい入試となりそうです。
進学重点校5校目の指定最有力と目される川和は堅調。高い人気が続きます。部活も勉強も行事も全力で取り組む校風は今回も健在です。プレゼンテーションやアクティブラーニングを授業に多く取り入れている光陵も高い人気を誇ります。横浜平沼・市立桜丘と比較検討されることが多い学校ですが、2020年入試では3校とも高倍率予想。受験生はどこに志願変更するのか頭を悩ますことになりそうです。
設備とバランス感の良さから人を集め1.8倍超の倍率となっていた多摩は、やや落ち着きそうです。それでも1.6倍強ですので、他のエントリー校と比べても人気が高い状態は続きそうですね。多摩高受験生は、2020年度も気が抜けません。
希望ケ丘は人気低下傾向です。学校自体はこれでもかというほど自由な学校で、広大な敷地も魅力です。2020年度は翠嵐・光陵・横浜平沼に受験生が流れている可能性はありますね。茅ケ崎北陵は前年度の特色“非”実施特需により倍率が跳ね上がりましたが、今年はある意味例年通りの倍率に戻りそうです。
鎌倉はプレハブの影響でしょうか。校舎建て替えのため、これから3年間は校庭が3分の2しか使えません。特に野球部やサッカー部に入ろうと思っている人には気が進まないかもしれません。あわせて今年から始まる共通特色検査も鎌倉高校志願者層には重たい。悪条件が重なっているので、倍率は低めを予想します。2019年1月に鎌倉高校を訪問した際の記事はこちら。校舎建て替えや理数教育推進校としての取り組み、鎌倉学にも触れています。
ここ数年、倍率が高めで推移している小田原高校。この多様性の時代に“単位制普通科進学校”の響きが改めて評価されていて人気を集めているのかもしれません。全体傾向としても神奈川総合・市立東・市立戸塚などの単位制上位校は人気を集めていますね。前年度特色検査実施による敬遠が起きていた平塚江南には人が戻ってきそうです。湘南・厚木のレベルが上がってきているので、そこに一歩届かない層は平塚江南に流れていくのではないでしょうか。
4:4:2校であり、高内申の生徒が多い横浜平沼。特色検査を実施するため敬遠から発表当初は人が集まらないのではないかという憶測が流れました。しかし、その予想を大幅に裏切る高倍率となりそうです。校舎が比較的綺麗なこと、落ち着いた校風、グローバル教育推進校といったあたりが評価されての人気でしょうか。進学実績の面ではSJE内で下位に沈む横浜平沼。ここからの奮起が期待されますが、人気が出て受験生や保護者に支持されると一気に学校としては盛り上がりますよね。
地域的に人を集めにくい横須賀高校はそれでも、1.3倍近い倍率となりそうです。選択の俎上に上がる市立金沢のレベルも上がってきており、両校の難易度が拮抗しています。最近よく耳にするのが、横須賀の雰囲気がいいということです。説明会での落ち着きや学習への真剣な取り組み姿勢などが、生徒や保護者に響いているようです。
校舎は古いですが、穏やかで学習にも行事にも一生懸命な大和も前年同様の人気です。女子サッカー部があるのは珍しいですよね。東大合格2名が出た相模原は文武両道で部活動も活発、きっちりとした進学指導が評価されて人を集めています。
個人的に実績重視はあまり好きではありませんが、「進学重点」と謳うからにはきっと進学実績が重要なのだと思います。実力値ということで進学重点校および進学重点エントリー校17校の2019年度大学進学実績比較表を載せておきます。詳細の数字は各校のホームページなどで拾ってください。
現役・浪人合わせた2019年度大学入試合格者数となり、高校入試での学力検査合格者平均点順に上から並べています。コッコーリツという括りはあまり意味がないと思っているので、国公立も便宜上二つに分けました。首都圏以外の国公立で素晴らしい大学もたくさんあるのですが、拾いきれないのでご容赦ください。(作るの大変だったので「早慶上理だろ!」とか「今時GMARCHでしょ」とか言わないでください)
各校発表の進学実績資料より作成
青色(多い)<<<>>>オレンジ(少ない)
翠嵐・湘南が抜きん出ていること、横浜平沼・茅ケ崎北陵はかなり厳しい状況だということが見て取れます。国公立大学の合格者数(100名超え?)が基準と言われている進学重点校に、次に指定されるのは川和一択で、その他の学校はエントリー校の域を出るのは難しそうです。また、大人気の横浜緑ケ丘が難関国公立0となっているのは気になるところですね。
この17校では頻繁に会議などを実施して進路指導ノウハウを共有したり、合同の英語スピーチコンテストを開催したりしているようですので、切磋琢磨しながら全体としての底上げ、そして躍進が期待できるのではないでしょうか。
次は人気が高い横浜市立4校の予想です。
横浜サイエンスフロンティアは附属中学校から進学してくる第1期生と合流する関係で定員が2クラス分減少しています。そのため倍率は上がっていますが、昨年までの募集数が238人だったことを考えると志願者自体は随分と減っていることが分かります。内進生と合流することへの抵抗は少なからずあるようです。市立南とは違って割合が高入生の方が多いので、そこは安心感があると思いますが。
また、独自の特色検査があることも敬遠の理由になりそうです。他の学校と天秤にかけられる学校ではないということですね。もともと独自色を出そうとしていますので、学校としては狙い通りなのかもしれません。
市立金沢は、思っていたよりも落ち着いた倍率となりそうです。“特色検査を実施しない学校のトップ”という位置を確固たるものとしようとしていて、横浜緑ケ丘・横須賀・鎌倉あたりからどんどん流れ込んでくると思っていただけに、昨年より減少傾向なのは意外です。市立金沢の難易度がここ数年上がり続けていて、他校を避けてきても簡単には合格できない、という状態になっていることも原因でしょうか。落ち着いた校風と部活動や行事への真剣な取り組みは健在で、1.4倍予想は十分に高倍率です。
市立桜丘は人気が出そうです。大きなニュースとしては2020年度から制服が新しくなるという点。公立で制服リニューアルは珍しいので、注目度は高いですね。特に女子ウケは良さそうです。あわせて、“特色検査避け”の受験生が流れ込んでいる可能性がありますね。8%の市外枠を今年は超えそうな勢いですので、注意が必要です。文武両道の学校として定評があります。
市立戸塚は“単位制普通科進学校”の波に乗りそうです。私立並みの設備と自由な校風は昨今の受験生のニーズとマッチしています。部活動も強いですし、進学実績がついてくれば、一気に難関校に仲間入りをするかもしれません。頑張ってほしいですね。
横浜市立の情報については少し古いですがこちらの記事もご覧ください。
湘南地域上位校SOFTS(七里ガ浜・大船・藤沢西・鶴嶺・湘南台)の傾向はどうなっているでしょうか。
SOFTSは地域的には流入が多くて人気のある地域なのですが、なぜか3校も定員が減らされていますので厳しい入試になりそうです。
七里ガ浜は隔年現象と言えばそれまでですが、定員減の影響を受けて倍率は跳ね上がっています。前年度より志願者を多く集めていますので、評価も高まっています。豊富な指定校推薦枠があり、説明会等でその世相を捉えたアピールに成功しているというのも大きな要因かもしれません。一方大船は前年に引き続き落ち着いた倍率となりそうです。派手さはありませんが、真面目でありつつ行事も多いという特徴があるので、七里ガ浜・藤沢西の高倍率を懸念している方は一度検討してみると良いでしょう。
藤沢西の人気が止まりません。かっこいい新校舎は言わずもがな、個性あふれる生徒も多く、科目選択の幅も普通科としては豊富です。人気沸騰、高倍率が続いているにも関わらずなぜか定員が減ったため、厳しい争いとなりそうです。合格者平均内申点はすでに七里ガ浜・大船を抜いていて、オール4では平均に届きません。偏差値も二校に肉薄しています。七里vs大船vs藤沢西で2020年に記事を書きたいですね。
鶴嶺は数年続く低倍率から2020年も抜け出すのは難しそうです。 国際色が強いわけですが、あまり知られていません。“鶴嶺国際”爆誕待ったなし、とずっと言ってるんですが、気配すら感じませんね。逆に言えば、グローバルに興味があるSOFTS狙いの受験生は検討してみると良い選択となるかもしれません。自由で穏やかでいい学校ですよ。湘南台は倍率が上がっているように見えますが、これは定員減によるものです。志願者数は前年よりも減少予想となっています。規律ある学校生活を送りつつ、部活動で成果を残せる湘南台は、人によってはとてもいい選択になると思うのですが。なお、湘南台高校は2020年度入試よりインクルーシブ教育実践推進校として21名の定員枠がありますので、238名+21名の259名の新学年募集となっています。
昨年も書きましたが、自由度で比べると、七里ガ浜≧鶴嶺>藤沢西>大船>湘南台となるでしょうか。SOFTSはお互いに影響しあっていますし、生徒も動きます。さらに各校の色もはっきりしていて自分に合わせて選択できるのもこの地区のいいところです。
横浜国際、神奈川総合、市立横浜商業(国際)は人気が出そうですので、やはり“国際強し”ということになりそうです。小田原・市立東・市立戸塚・相模原弥栄などの「単位制普通科進学校」も人気キーワードとなりそうです。自分がやりたいこと、自分の得意なことを伸ばしたい、という気持ちが受験生にあるようです。旧進学重点校の秦野・追浜は今年も倍率は低めの予想です。
例年に比べると大きなトレンドが見当たらない倍率予想となりました。それだけ多様性が高まり、受験生それぞれの観点で学校選びをしているのではないかと思い、嬉しくなります。県立高校の情報が少しずつ表に出てきているのも一因かもしれません。
一方でチャレンジ志向・突撃型受験のさらなる増加は気になるところです。進学重点校やエントリー校を志願できるレベルの受験生が突然増えるとは考えられません。要因としては、まず一つは私立進学のハードルが下がったことが挙げられるでしょう。就学支援金制度の拡充や、入学金延納措置などにより金銭面での不安が減りました。併願私立へ進学することへの抵抗も以前より小さくなっている気がします。
公立は受けたいところ(憧れの学校)を思い切って受けて、ダメなら私立でも構わない、という生徒は実感値としても多くなっています。公立難関校へチャレンジする受験生総数は確実に増えていると思います。
そういった中で、相変わらず懸念されるのが、塾の進路指導がやや無謀な挑戦志向になっていることです。翠嵐・湘南の実績争いだけでなく、進学重点校およびエントリー校の17校の「全塾中No.1」を取りに行くために、数を受けさせようとしている気配も漂います。もちろん、数を受けさせるということは合格率もどんどん低くなるはずですので、塾としてはリスクも高いように思うのですが。STEPさんがすごいのはともかくとして、他塾のこの割合は進路指導としてまずいんじゃないですかね。
STEPホームページより抜粋
各塾の翠嵐の合格実績を調査して足していくと、あっさり372名に到達して合格者の総数(358名)をオーバーしました。講習生とかのダブルカウントがあるんでしょうね。それを差し引いたとしても、大手以外からはほとんど翠嵐に合格していない現実が見て取れます。翠嵐に合格者を出している個人塾は英雄ですね。
各塾のホームページ発表および独自取材により作成
また、こう見ていくとSTEP以外の大手塾の合格率も察するところがあります。STEPに勝つ気があるなら、他の大手塾も合格率出して堂々と勝負してほしいですね、というのは零細個人塾長の戯言です。
近年の傾向として付け加えておきたいのが、早慶開成などの難関私立と公立トップ校を両方受ける生徒が増えたことです。公立高校入試が難化したことにより、私立オープンとの問題難易度の差が小さくなりました。公立トップ校・私立オープン・私立併願という三校受験が増えています。これにより、早稲田アカデミーやSAPIXなど、難関私立高受験が中心だった塾が、公立トップ校も目指すようになったという背景も人気に拍車をかけているように感じます。
さて、今年は関係ない話が多くなりすぎて失礼しました。
少しでも精度を高めようとは思っていますが、あくまで予想は予想です。憶測や噂が大きなうねりとなって、全く違う倍率になることも十分に考えられますので参考程度としてください。
勉強時間を犠牲にして、ここまで読んでしまった受験生へ。
読まなくて良かったのに。情報を持っていても勝てないよ。知識と思考力で戦おう。
でも、せっかくだからメッセージ。
勉強すること、偏差値を上げていくこと、合格するということ。そのことに価値を見出せない人もいるかもしれません。
でも、受験もいいものです。自分が超えたいと思った壁までの距離感を測り、やらなければならないことを考え、自分の予定をコントロールしていく。目標までの道のりを自分でデザインしていく過程は、高校に入ってからもその後も必ずや生きてきます。
研ぎ澄まそう。真剣にやってみよう。勉強を積み重ねることで、知識を得ることで、脳を使い続けることで、今まで見えていなかった景色を誰にでも見せてくれるのが受験です。たくさんの子どもたちのそんな姿をずっと見てきました。だからあなたにも出来る。あなたも、輝けます。
多くの人にとってこれまでの15年間の人生で初めて選ぶことになる自分の道。その道を切り拓けるのは「あなただけ」です。
The little things make a big difference.
ちょっとずつの積み重ねが、全く違う未来を拓く。
さぁ、勉強だ。机に向かおう。