受験を超えて

鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -


大船高校か、七里ガ浜高校か

2017.12.24


旧鎌倉・藤沢学区には、長らく続く因縁の対決があります。北鎌倉の山の自然に囲まれた「大船高校」と、日本一海に近い全校オーシャンビュー「七里ガ浜高校」の進路選択です。「鎌倉」という土地柄もあって非常に人気がある二校は、地域でも愛されている学校です。今回は、その人気の秘密と、この究極の選択を正しいものにしていくために在校生や卒業生、塾業界での情報を元に両校の徹底比較をしていきます。

では、なぜこの二校がライバルと言われているのかについて簡単にご紹介しておきます。大きく分けると三点理由があると思います。一つ目は当たり前ですが、同じ地域にあり、両校とも毎年人を集めている人気校であるということです。この学区には全県でもトップである湘南高校と、二番手校ではあるものの常に人気があり、高い進学実績を誇るため他地区のトップ校と肩を並べるレベルの鎌倉高校があります。必然的に地域三番手校のレベルは引き上がり、「トップ・準トップには届かないものの…」という層が目指す学校となるため、他地域からの流入もかなり多くなっています。実際に大船高校は3割が横浜市から来ていて、茅ヶ崎市の生徒も1割程度通っています。

二点目は校風です。二校の特徴が大きく異なるため、生徒や保護者の好みでどちらを目指すかが分かれます。「学力や内申があるならこっち」という選択になりにくいというわけです。特にどちらでも選べる内申点を持っている生徒は、校風で決めていくことになります。校長先生によってはお互いを明確に意識をしている時期もあり、両校は切磋琢磨しながら高め合ってきたという経緯があります。だからこそ、この二校はいつでも活気があり、生徒たちに色褪せることなく魅力的に映るのかもしれません。

三番手校を争う大船・七里、という構図はもう十何年も続いています。かつて三番手校だった七里ガ浜が落ちてきたというより、大船高校が伸びてきた、という印象が強いですね。ここ数年、倍率の隔年現象が明確に現れていたのもこの二校の特徴です。七里ガ浜の倍率が高くなった時は難易度が上がり、そのため翌年は七里を敬遠して大船を選ぶ生徒が増える。またその逆も然りということで、両校の偏差値と合格者の内申点平均は毎年マッチレースを繰り広げてきました。

地域が近いということ、両校の校風が大きく異なること、そして偏差値や合格者内申平均が極めて拮抗していることがこの二校がライバルである所以ではないでしょうか。

それでは比較に入ります。まずは、両校の大きな特徴と客観的なデータから。

大船高校

昭和58年に創立。グラウンド越しに富士山が眺望可能な高台にあります。周辺は住宅地で閑静な環境で勉強にもその他の活動にも集中できる環境です。校舎内は明るく清潔に保たれていて、伸び伸びと高校生活を送ることができる環境です。「知育・徳育・体育の三つの調和のとれた人間の形成とともに、鎌倉の自然と文化に学び、郷土を敬愛する心豊かな人間を育てること」が教育の理念です。

七里ガ浜高校

昭和51年に開校。「日本一海に近い高校」として有名で、江ノ島電鉄七里ヶ浜駅から徒歩1分。校舎のどこからでも海が見えます。地域との連携も大切にしながら、子どもたちを自由に育てる学校です。「確かな学力を身につけさせ、健全な精神と身体を育成し、自主自立の精神を養う」という教育目標です。また、神奈川県より「授業力向上推進重点校」としての指定を受けており、新たな学力観の中で思考力・判断力・表現力を伸ばすための取り組みが増えています。

合格者内申平均(過去3年間)

合格者平均内申点 2017 2016 2015
大船 109.6 110.4 111.2
七里ガ浜 109.2 106.8 106.6
0.4 3.6 4.6

合格者平均内申点(伸学工房調べ)を見てみましょう。135点満点(中2:45点+中3:45点×2)での成績です。いずれも108を超えてきており、オール4以上の生徒が集まっていることが分かります。過去3年の値を見ると、差が縮まっています。2017年度はその差わずかに0.4としばらく低迷していた七里がその差を埋めてきています。2018年度は進路希望調査や模擬試験のデータから見えてきているのは、大船高校の人気がいつもよりも低く、一方で七里ガ浜の人気が高いということです。2018年度の内申点平均は、久々の逆転の年になるかもしれません。

そもそも、両校では入試における内申点の割合が違います。大船高校が3割であるのに対して、七里ガ浜は4割。そのことからも七里ガ浜は内申重視であることが分かります。後述しますが、七里は自由な校風です。自由の中にも責任を求めるという意味で、中学校で自律した学習に取り組めた生徒を評価するようにしているのかもしれません。一方、大船は比較的真面目で落ち着いた校風ですので、実力を重視して内申点よりも入試得点の割合を高くしているという狙いが窺えます。

合格者入試得点平均

合格者平均得点 2017 2016 2015
大船 366.3 345.9 340.5
七里ガ浜 350.8 329.6 324.3
15.5 16.3 16.2

続いて合格者の入試平均得点(伸学工房調べ)を見てみましょう。こちらは、大船高校がより高得点となっています。上述した通り、大船高校は内申:入試:面接の割合が3:5:2ですので、入試での得点で合否が決まる可能性がより高くなっており、七里ガ浜とは少し差があります。ただ、わずかではありますが、差は詰まっており、2018年度入試でその差はさらに接近するのではないかと予想しています。模擬試験の偏差値設定も大船高校58に対して七里ガ浜は55となっており、内申平均と入試得点平均を含めてみても地域3番手校は大船、4番手が七里ガ浜ということが2017年度までの客観的なデータからは言えそうです。

倍率

倍率 2017 2016 2015
大船 1.3 1.24 1.33
七里ガ浜 1.38 1.26 1.18

参考までに倍率も載せておきます。七里ガ浜は2016年度→2017年度で募集定員を40名減らしています。受験者数には大きく変化はありませんので、その影響で2017年度の倍率が高く出ています。2018年度は2017年度と募集定員に変更はありませんので、同等の難易度が続くのではないでしょうか。

それでは各校の具体的な特徴をご紹介します。各校の在校生や卒業生から聞いた話を中心にまとめています。まずは大船高校から。

大船高校

校風

大船高校を一言で表すと「全部できるし、全部高水準」の学校です。高校生活の中心的取り組みと言える「勉強」「部活動」「行事」にすべて高い水準で取り組めます。そして、それを実現できる雰囲気が流れているのが大船高校の特徴です。基本的に真面目で落ち着いた生徒が多い印象です。七里ガ浜と比べると派手さ(明るさ、垢抜け度)には欠けますが、決して根暗(陰キャラ)が多いわけではなく、様々な取り組みに対してバランスよく時間と力を注げるメンバーが集まっています。おとなしめの子でも十分に楽しめる雰囲気であり、居場所を見つけることができるのではないでしょうか。

やや厳しめの校則と言われていますが、その所以は「校内でスマホが使えない」というルールです。使用しているのが見つかると没収されます。それ以外には、トレーナーやパーカーが禁止でセーターやカーディガンも色指定となっています。「自由」というには、少し厳しいと思いますが、それによって保たれている規律は間違いなくあり、生徒に迎合しすぎない学校の姿勢が、落ち着いた校風を作り上げているのでしょう。在校生からは「思っていたよりも明るい」や「明るくて真面目」と言った声が聞かれます。先輩後輩の仲も良いようです。

学校生活

 

行事

行事が多いのが大船高校の特徴です。陸上競技大会、文化祭、体育祭、球技大会(2回)、鎌倉文学散策や修学旅行、伝統芸能の鑑賞と盛りだくさんです。全員がすべての行事に全力で取り組んでいるというわけではありませんが、4月〜9月は特に行事が目白押しで、いつも行事のことを考えながら生活を送ることになりそうです。行事が大好きな人にはおすすめの学校ですね。

中でも「六国祭」と呼ばれる体育祭は非常に盛り上がります。学年縦割りで四色に分かれて競い合います。応援合戦やチアリーディングなども色を添え、華やかかつ賑やかな催しです。高校生ならではの盛り上げ方で、事前準備から花火が上がる後夜祭まで、準備期間も長く最大の行事といえます。縦割りの学年横断でカラー分けをし、学校全体での団結や盛り上がりがある体育祭に対して、文化祭「白帆祭」は、クラスごとの出し物となるため、クラスの団結が強まります。一体感や周囲との関わり、自分が得意なこと出来ること、興味があることを探していくという意味で大船高校の行事設定はよく考えられていると思います。

 

部活動

七里ガ浜との一番の大きな違いは部活動かもしれません。大船高校には、剣道部、演劇部といった全国レベルの部活があり、陸上部やテニス部も強豪です。近年人気が高まりつつある弓道部もあり、文化部では新聞部も成果を残しています。演劇部や剣道部には、「大船高校でやりたいから」という理由で他校の推薦を断ったり、より上位校を受ける力がありながら大船に入学したりするというような生徒もいるようです。文化部が多いのも特徴ですね。加入率はおよそ80%程度。大船高校で部活動に加入して、その真剣さに驚く生徒も多いようです。

勉強面

真面目な生徒が多いと前述しましたが、それもあって勉強への取り組み姿勢が良い生徒が大多数です。進学校を銘打っており、学校も生徒の進路や学習のことをよく考えてくれています。進路講演会やR-CAP(適職発見プログラム)などもあり、一人一人の適性を見極めながら丁寧な進路指導を行ってくれます。先生のサポートやフォローも手厚く、進学校でありながら多様な進路を選んでいる生徒が多いのも大船高校の特徴です。

ただ、大学進学を考えた時に、難関大学への合格を目指すとなると、やはり学校の勉強だけでは不十分なようです。自分次第ではありますが、2年生・3年生は予備校・塾へ通っている生徒も多くいます。MARCHの指定校推薦枠もありますが、評定平均4.7以上が必要で、高校での成績が最上位にいないと厳しいですね。理系・文系の生徒のバランスは良いですが、文系上位の指定校推薦枠がやや少ないようにも思います。

大学進学実績過去3年(抜粋)

大船高校大学合格実績 2017 2016 2015
横浜市立 8 2 4
早稲田 6 5 6
慶應 0 5 1
上智 1 4 2
明治 22 23 22
青山 14 27 15
立教 6 11 9
中央 22 15 17
法政 51 36 40

大学合格者数の実績です。MARCHについては、強さを発揮しているかと思います。ここ数年、比較的国公立に力を入れていることもあり、2017年度は横浜市立大に8名合格者を出しました。一方、2016年度では5名いた慶應が0になっていますね。それでも、10年前と比べると大船高校の進学実績は、かなり高水準になっています。

大学指定校推薦枠(2017年度実績)

指定校推薦枠 大船高校 七里ガ浜
横浜市立 1
東京理科大 1 2
上智 1
明治 2
青山 4 6
中央 1 5
法政 1 5
学習院 3
上位校合計 13 19

2017年度入試での指定校推薦枠は、上の通りでした。充実しているとは言い難いですが、学年最上位の生徒は推薦ではなく、一般受験を選ぶことが多いので、学年でTOP15に入れば指定校を選べるような状況かと思います。

大学入試改革後の受験になる現在中学生のみなさんにとっては、今後指定校推薦は非常に価値のある制度となる可能性があります。自身が新入試制度への対応ができるかできないかによって、一般受験をするか推薦狙いでいくか、という判断を迫らることになります。その際の保険としても高校の指定校推薦枠はこれまで以上に注目されています。また、実力的に余裕がある高校に進学することで、成績上位を狙い指定校推薦に結びつけていくという考え方もこれまで以上に増えていきそうです。

その他設備など

校舎は少し凝ったデザインで、決して新しくはありませんが、綺麗に保たれています。体育館とトイレが少し古びているのが難点でしょうか。自習室が整備されていて、校内で学習に励むことができます。図書室も充実。リクエストをした本をすぐに入れてくれるのが好評です。図書館司書の方も常駐していて、しっかりとした読書への導きをしてもらえます。プールはありません。

在校生より

「落ち着いていていい学校ですが、毎日の通学は登山です」

七里ガ浜高校

校風

七里ガ浜高校を一言で言い表すと「青春」です。毎日、朝日に輝く海を眺めながら登校し、部活動や友人との楽しい時間を過ごした帰りには海に沈みゆく夕日を眺めて帰路につく。日本一海に近い高校と言われていて、3年間通っても飽きることのないこの景色は、やはり七里ガ浜に通う最大の魅力なのでしょう

明るく活発な生徒(陽キャラ)が多く、垢抜けていてセンスのある子が多いように思います。イケメンと可愛い子が多いという専らの評判ですが、真偽のほどは実際にご覧になって確かめていただくのがよろしいかと。。。楽しくワイワイするのが好きなノリの良い生徒が一番楽しめるとは思いますが、そうでない子ももちろんいます。「みんなで楽しもう」という意識が強く、おとなしい生徒でも巻き込まれて楽しんでしまうようです。生徒同士非常に仲が良く、学校全体に一体感があります。

七里ガ浜高校といえば、「チャラい」という風評がありますが、決してそうではありません。巷の評判ほど派手ではないですし、乱れていることもありません。とはいえ、江ノ電に乗っていると七里の生徒か鎌高の生徒かはなぜかすぐ分かりますが(笑)。分かりにくい表現ですが、鎌倉高校は「真面目な人が青春している感じ」で七里ガ浜高校は「青春を真面目にやっている感じ」です。

だらだらと高校生活を楽しむだけでなく、勉強するときは勉強する生徒の集まりです。オンとオフをしっかりつけられていれば、堕落した日々を送ることはありません。もちろん、楽しさにかまけて、勉強をしなくなってしまう人も一部いますが、ごく少数です。校則は緩めかと思います。基本的に髪染めは禁止ですが、あまり守られていないようです。かなり明るい髪の人も目にしますね。ただ、一昔前のように金髪や茶髪が流行っているわけではないので、今はそんなに多くはないと思います。

学校生活

 

行事

「青春」を存分に味わえる七里ガ浜高校の行事が盛り上がらないわけがありません。行事こそ七里のアイデンティティであるというくらい激しく盛り上がります。文化祭は全校をあげての大行事で、花火が上がる後夜祭まで含めて、ここでしかできない体験をみんなが追い求め、生徒主体で運営されています。学校もそれを認め、後押ししていることが素晴らしいですよね。

七里ンピックと呼ばれる体育祭も生徒たちは大好きです。色別対抗で競技だけでなく、衣装やダンスなども競っていきます。こちらも完全に生徒主体で作り上げる催しです。この「自分たちで作っていく感じ」と学校側の規制の緩さが公立ならではですし、七里ガ浜は特にその傾向が強いように思います。多くの生徒はこれらの行事を期待して入学してくるわけですが、その期待以上の1日となるようです。お隣、鎌倉高校は体育祭がなくなったこともあり、「全力で行事を楽しみたいなら七里ガ浜」という選択もあるのかもしれません。

 

部活動

七里ガ浜の部活動の多くは、楽しみながら真剣に取り組むというものです。もちろんやるからには「勝つ」や「成果を残す」という目標は持っていますが、そのためにストイックに追い込んだり、週7回活動したりという「ブラック部活」や「プロ部活動」は少ないようです。あくまで楽しい高校生活の一部としての位置付けです。テニス部が近年比較的強くて成果を出しており、ダンス部も活発です。また、ラグビー部があるのも特徴です。どの部も団結力があり、楽しく過ごすことができているようです。文化部よりも活発な運動部が多い印象です。

勉強面

「勉強するために七里を選んだ」という人はあまりいないかもしれませんが、思ったよりも勉強をしっかりとする人が多いという声も多数聞きます。テスト前には、切磋琢磨しながら高いレベルを目指していく空気も出来上がります。成績はどちらかというと取りやすい学校ですが、MARCHクラスの指定校推薦を狙うには平均評定4.5以上が必要です。

先生方は総じて熱心でいい先生がたくさんいます。生徒を尊重しながらも、困っている時は助けてくれる信頼できる先生に出会えている人が多いようです。担任の先生は特に協力的で、卒業後も連絡を取り合うような良い関係が築けます。補習も頼めばどんどんやってくれますし、センター試験や大学別の対策講座など学校全体での学習面のフォローも充実してきました。文理選択では、文系が優勢。進学先も文系学部が多くなっています。

また、国際交流にも力を入れている学校で、留学生がいたり姉妹校交流があったりと、グローバルな視野を広げていくための環境もあります。ネイティブの先生も常駐していて、自ら積極的に取り組んでいけば、英語の力を大きく伸ばすことも可能です。

「勉強中心」の雰囲気はないため、どのように結果を出していくかは結局自分次第ということになります。周囲に流されやすい人は、やるべきことを見失い、将来設計が遅れていってしまう可能性がありますので注意が必要です。

大学進学実績過去3年(抜粋)

七里ガ浜大学合格実績 2017 2016 2015
横浜市立 1 2 3
早稲田 6 5 4
慶應 0 2 1
上智 4 3 2
明治 33 28 18
青山 15 19 22
立教 14 18 11
中央 17 31 21
法政 56 54 39

大学合格者数の実績です。MARCHの中でも、特に法政大学への進学者が多いようです。明治への合格数が伸びているのは注目ポイントでしょうか。大船高校と比べると国公立志願者は少ないようですが、文系の実績は良いですし、明らかに伸びています。三年前は入学時の倍率が低く、大船高校と少し水を開けられていたことを考えると、七里ガ浜に入学してから頑張った結果と言えるでしょう。客観的な数字からも、七里ガ浜高校が決して遊んでばかりいる高校ではないということが分かります。

大学指定校推薦枠(2017年度実績)

指定校推薦枠 大船高校 七里ガ浜
横浜市立 1
東京理科大 1 2
上智 1
明治 2
青山 4 6
中央 1 5
法政 1 5
学習院 3
上位校合計 13 19

※上部掲載と同じ

2017年度入試での指定校推薦枠は、上の通りでした。高3での追い込みだけでなく、高1からコツコツ頑張っている人が上位の推薦を取っていくことが多いようです。1枠しかありませんが上智は魅力的ですし、青山・中央・法政合わせて16の枠があることでチャンスも広がります。指定校推薦だけで考えると、七里ガ浜の方が良いかもしれません。

その他設備など

駅から徒歩1分の立地は素晴らしく、校内には絶景スポットも多くあり、心が洗われる体験が出来ます。一方で塩害もあり、校舎はお世辞にも綺麗とは言えません。体育館は最近改築したためきれいですが、トイレは古いためあまりきれいではありません。このあたりは公立高校だということで目を瞑らなければいけないところでしょうか。朝の江ノ電は鎌倉高校生と七里ガ浜高校生で占拠され、大混雑です。

海の存在が七里ガ浜の青春レベルを何倍にも演出しているとは思いますが、もし大津波が来た場合、七里ガ浜高校は非常に危険な場所にあるということは頭に入れておく必要があるでしょう。もちろん、学校側は万全の体制・対策を取っているため、日頃から意識を高めておけば、被害を最小限に抑えることはできるはずです。ただ、現に東日本大震災の後の数年間は、津波懸念から七里ガ浜高校は人気が低迷し、一時は定員割れすれすれまでになったことがあります。時が経つというのは怖いもので、危機感や恐怖も減退していき、今では震災前の人気を完全に取り戻しました。鎌倉が地元である私たちは、いつも津波と隣り合わせで暮らしていますので常に意識を持っていますが、内陸からお越しの方は、ご家庭の中で一度話題にあげておく必要があると思います。

在校生より

「とにかくめっちゃ楽しいですし、生徒の満足度が高い学校です」

終わりに

以上、二校の比較でした。山の大船と海の七里ガ浜。両校とも素晴らしい魅力に溢れた学校です。塾生と進路について話をしたり、面接の練習をしたりしていると、想像以上に志望校選択における「行事」のウェイトが大きいなと感じます。中学生なりに高校生の3年間でしか出来ないことを探していて、その行き着く先が行事なのかなと思います。将来のことを考えての学校選びももちろん大切ですが、将来に向けての経験はその気になれば案外いつでもどこでも出来るものです。一方で、高校3年間の青春の輝きをその後の人生で上回ることは、難しいのかもしれません。恐れを知らない輝かしい突き抜けたイベントへの憧れは、案外本能的なものなのかもしれません。

ということで、行事が学校選びの決め手となる場合も多いかと思いますので、なるべく行事には足を運ぶようにすることをお勧めします。大船、七里ガ浜、両校ともに体育祭は6月です。志望校選定のタイミングによっては、見学出来ないこともあるかもしれないので、興味がある人はまずは足を運んでみると良いでしょう。

二校とよく比較される上位校としては、鎌倉高校と横浜市立金沢高校があります。この二校も系統が割とはっきりしていて、七里ガ浜が気に入った人は、もうひと頑張りして鎌倉高校を目指したり、大船高校を気に入った人は市立金沢を目指したりするという傾向があります。近年かなり顕著になってきいますので、二校に興味がある方は一緒に検討してみてはいかがでしょうか。

最後に、学校選びの基準の一つに進学実績を挙げる方も多いと思いますが、これまではともかく2018年度受験生からは、あてにならないということも付け加えておきます。大学入試の制度が変更となり、これまでのやり方が通用しない可能性があるからです。指定校推薦の枠について、学習指導について、新入試制度への対応について、よく見定めていく必要があります。青春を追い求めるのは結構ですが、高校で「何を」「どう」やっていくかが重要で、遊んでばかりいたのでは新大学入試制度で痛い目を見ることも明白です。自分がやりたいこと、そして実現したいことをある程度思い描き、その上でその実現が出来そうな学校はどこなのか、よく考えて学校選びをしていってほしいと思います。

機会があれば他校の比較もやってみたいと思います。取材にご協力いただいた二校の在校生・卒業生のみなさん、ありがとうございました。