鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2018.10.06
神奈川県高校入試において「併願校」とは第一志望が不合格だった際に進む「滑り止め」の私立を指します。この併願制度は主に中3、時に中2の内申点に加えて検定や学校活動などを加味した基準点をクリアしていれば合格を確約されるという制度です。
今回は昨年、同業の塾の先生や公立中学校の先生からも好評をいただいていた「おすすめ併願10校」の記事第二弾として注目併願5校をご紹介いたします。パンフレットやホームページ、説明会からは伝わってこない各校の内情や現在地について、持っているありったけの情報と実際に通っている生徒や先生から聞いた話も含めてを記事にします。ボリュームや内容に濃淡がある点はご容赦ください。なお、併願制度の内容についてはこちら(「神奈川県の私立併願制度を塾講師が分かりやすく説明します」)をご覧ください。
※順番に大きな意図はありません。(少しあります)
※内申目標点はあくまで目安であり、2019年度入試に向けての数値です。優遇措置については触れていませんので、詳細については必ず高校側の発表をご参照ください。
内申目標点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
旧制日本大学中学校の流れを汲み、日本大学「附属」の中で総本山とも言える日本大学中学・高等学校。俗称としては日大日吉と呼ばれることが多くあります。日吉の地で長らく丁寧な学習指導をする活発な男子校として地域では定評がありましたが、2004年に完全男女共学化を果たしてから全県から生徒を集める人気校になっています。
日大附属には「正付属」「特別付属」「準付属」があり、正付属は学校法人日本大学が経営している学校。特別付属はもともとは正付属だったのが法人が独立して別に立ち上げたもので日本大学第〇高校と謳われることになります。準付属は別の学校法人が立ち上げた学校で日本大学と提携・連携を結んでいる学校です。(長崎日大とかが準付属にあたります)
正付属校の中でも最も歴史がある日本大学高校は日大系列の中でも最も偏差値が高い学校でもあります。ここ15年で共学化、特進クラス設置、スーパーグローバルクラス設置と改革を進めてきて着実に生徒を集め、学校の学習レベルを引き上げることに成功しています。また、部活動も盛んで特にほとんどの生徒をスポーツ推薦で集めているサッカー部は強豪です。ラクロス部は全国優勝するなど、全国的にも有名です。
コースは三つに分かれていてスーパーグローバルクラス、特別進学クラス、総合進学クラスの三つです。スーパーグローバル(SG)クラスは「学校が実現したいことを全て詰め込んだフラッグシップのクラス」と鈴木広報主任は語ります。世界で活躍できるリーダーを育てるために、大学や企業とコラボしての問題探求や問題提起に取り組み、プレゼンテーションを行います。GSSC・グローバルステューデントサポートセンター(長っ! SGGKみたいですね)なる組織も設置され、学校を挙げてグローバルプログラムをバックアップしてくれています。また、グローバルということで目が外にばかり向きがちですが、日本文化のホスピタリティ・ボランタリズムなども発見していく「内」の部分も大切にしています。
もちろん、実際にリクルートにインターンをしたりニュージーランド航空でグループワークをしたりするなど精力的に外にも出ていきます。全員参加となるニュージーランドへの三週間の海外研修に加えて、第二外国語で中国語を履修するなど英語のその先も見ています。ただし、SGクラスは少人数である上に三年間クラス替えがないため、「合う・合わない」がどうしても出てきます。二年次からコース変更をする人もいるそうです。カリキュラムと理念をきちんと理解してから志願する必要があるでしょう。
特進クラスは国公立や難関私立大学を目指すコースで総合進学クラスは日大の希望学部や難関大学への進学を目指すコースとなっています。全てのコース、全ての生徒にipadを配布。授業中も生徒はipadを使用しながら進み、連絡事項等も全て学内SNSを使いながら配信されます。破損紛失も一度までなら保険の適用で対応可能です。ICTについては他校の先を行く取り組みに成功しているのではないでしょうか。
ただ、実際に通っている生徒に聞いてみると「ipadを授業で活用しきれているかと言うとそうでもないかも」や「結局先生の講義が多いので一方向になることもよくある」「一番ipadを使うのはスタディサプリ。復習用に使える」との声もありました。スタディサプリだったら自分のスマホで十分ですよね(笑)ICT先進校としてホームページも最先端を行っています。スマホからもPCからも見やすくインパクトのあるデザインは他の追随を許しません。ゆえに少しサイトの動作が重めですが。
校則は私立としては標準的な厳しさでしょうか。スカート丈についてはかなり厳しく言われるそうです。あとはSNSで高校や大学のことについて触れるのはNG。学校がネットパトロールをしていて結構発見されてしまうそうです。徹底していますね。
進路指導については、日本大学付属校であっても特に日大に行ってほしいという教育はありません。生徒が行きたい大学に行ってほしいというのが学校の総意です。「日大には行けるという安心感がある」と鈴木広報主任はお話しされますが、法政大学附属との違いとして日大への推薦資格をキープしつつ他大学を自由に受験していくことは難しくなっています。
他の私立大学一般受験を第一希望としている場合は日大への推薦資格を失うことになります。「国公立大学併願制度」というものもあり、国公立大学が不合格だった場合日大に進学することも可能です。ただし、学部の枠があまり多くなく希望の学部にいけない場合もあるということです。国公立を狙う人は早慶やMARCHレベルに合格できる力があることが多いと思うので、希望学部次第ですが、敢えて日大を志願する理由もないのではないかと思われます。あまり使い勝手がいい制度とは言えませんね。
他大学の指定校推薦と日大推薦は時期的にもギリギリ併願可能です。指定校推薦は10月中に決まってしまうことが多いので、指定校推薦が思うように取れなかった場合は日大を第一希望にできるという具合です。
行事はあまり期待しないほうが良いかもしれません。体育祭や文化祭も制限が多いのであまり盛り上がらないことも。このあたりは公立と比べると見劣りするところでしょうか。一方オルセースクールミュージアムという催しがあり、これはデジタルリマスターした絵画作品を校内に展示していくものです。超一流芸術作品(の超高精度コピー)に触れていけるということは相当刺激的ですね。生徒たちが絵画の見所や背景などを説明するという取り組みも素晴らしいと思います。ゴッホやモネ、ミレーなど印象派の作品が選ばれています。オルセーというのがまたセンスを感じるところです。
校舎内は掃除が行き届いていて大変綺麗でトイレも美しく保たれています。窓も多くて吹き抜けも贅沢で開放的な校舎です。校内の至るところに机と椅子が設置されていて、どこでも座って話ができるし勉強も出来ます。一つ一つの教室が広くて最大45名が入っても全く狭さを感じません。学内に無駄なポスターが貼っていないのも好印象。また、食堂も充実していて味は職員の方々からも好評です。
また校舎に行く途中に大規模な工事が行われていますが、これは建設中のアップルの横浜テクノロジーセンターです。世界の最先端を身近に感じながら学習ができるのはラッキーですね。誘致しようと思っても出来ないことですから。
ICTに興味があり、充実した施設設備環境で学習しながら英語学習に力を入れたり国公立大学への進学を目指したりしたい人に日本大学高校はおすすめです。
目標内申点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
2019年度に創立90周年を迎える伝統の私立校三浦学苑。かつては決していいイメージではなかったものの、2013年に特進コースを開設し学習面・生活面での空気感を一新。2018年には国際バカロレア候補校として認可を受けました。第二グラウンドの新設や校地の拡充なども行っており改革は続きます。
コースは普通科で特進・進学・総合の3つに分かれていて工業技術科もあり、全校生徒は1300人を超えます。特進コースは各学年20名から40名の少数精鋭。学習意欲やその他の取り組みへの意欲も高く成果も出しています。進学コースでは部活動と両立しながら自立型の学習を身につけていきます。最も人数が多い総合コースでは生徒の希望や能力にあった多彩な進路を実現するためのサポートが充実しています。ここ数年、本当に真面目な生徒が増えていて学校側の期待に応えて学校活動や生活面でも前向きな三年間が送れているようです。
国際バカロレア(IB)認定の取得に向けて動き出しており、授業自体も大きく変わります。これまでの一方通行の講義型、「教え込む」指導から双方向性の授業、総合型のアクティブラーニングを中心とした授業へと舵を切っています。
校則はやや厳しく、頭髪検査があり靴下や革靴も指定。違反をするとイエローカードという注意カードがあり、指定校推薦など進路に影響することも。この辺りは必要悪でかつての姿から脱却するには欠かせなかったのだろうと推測されます。大きく様変わりした今の三浦学苑であればこの制度はもう要らないのかもしれませんね。生徒を信じて学校が規則を緩める事例はとても素敵なので是非やってほしいです。
部活動はどの部活もレベルが高く、大変活発です。全国ベスト8のサッカー部、関東大会出場の男女バレーボール部、21年連続東関東大会出場の吹奏楽部などは超有名で、その他にも水泳、弓道、卓球、柔道、陸上と個人種目でも全国レベルの生徒が多数います。応援等で盛り上がれるのも青春の一ページですね。
一方、行事はあまり評判がよくありません。体育祭は実施されず、文化祭も規制が多く盛り上がりに欠けるようです。コースが分断されているので、学校全体での活動をもっと増やしていけばさらに校内の雰囲気はよくなっていくのではないでしょうか。
進学実績については、2018年度入試で東工大の首席合格を含む国公立現役5名の合格を果たしました。これは三浦学苑始まって以来の快挙で特進コースを中心にカリキュラムや指導体制を整えた成果だと言えます。
アクティブラーニングや探究学習に興味があって、部活動が活発な学校、改革を肌で感じたい人に三浦学苑はおすすめです。
別角度でご紹介した記事もありますのでご覧ください。学校についてより詳しく、またIBコースについても切り込んで書いてあります。
目標内申点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
アレセイア湘南は前進である平和学園の頃から幼・小・中・高の子どもたちを育てる総合学園として地域の教育を支えてきました。高等部は2000年にアレセイア湘南と校名を変更し、男女共学のキリスト教信仰に基づく教育方針で運営されています。「真理(アレセイア)はあなたたちを自由にする」という理念の元、自由で元気がある学校へと変わってきています。就任6年目の熱い武部校長の陣頭指揮で学校での活動の質が全て上向いていると感じます。
コースは特進選抜・特進・進学の3つ。カリキュラムや科目コマ数などもコースによって違います。特進選抜は言わずもがな、特進クラスも勉強環境が整っていてやる気のある生徒も多数います。また、進学コースでも乱れていることなく落ち着きがあり、学習への意欲が高い生徒が増えてきています。コース変更で進学から特進へ変更することもできるようです。通っている生徒の実感としては、やはり力のある先生が特進・特進選抜にいるとのことで、大学を一般受験で突破しようという気概も感じられます。
先生は「いい人」が多く、優しくて親しみやすい存在のようです。授業には活気もありますし、学ぶ意欲があればサポートも万全です。生徒からの評判も良いですね。進学サポートも手厚く、学校での受験対策もかなり時間をかけてくれます。
元々グローバル教育には相当力を入れて取り組んでいる学校ですが、近年その動きは加速しています。英語教育を通して言語力・思考力・たくましさを育て、生徒が今まで持っていなかった新しいスキルを身につけていく狙いがあります。JICA横浜を訪問したり、外国人インタビューをしたり、玉川大学グローバル学部のシャンヌ教授から英語と日本語でそれぞれ講義を聞いたりとプログラムも多岐に渡ります。
英語教育の目玉とも言えるのが「国際英語塾」です。毎週二回放課後に75分間設定されていてネイティブスピーカーからオールイングリッシュで英語を学ぶことができるものです。入塾希望者には入塾試験(面接と英語力テスト)があります。入塾テストは英検三級レベル。もし多少合格ラインに届かなくても希望者はなるべく受け入れるようにしていて現在は85名で3クラス構成となっています。最上位クラスは英国大学語学研修に参加可能です。
高校二年生ではシンガポール・マレーシアと台湾の2コースに分かれて海外研修を実施します。いずれも現地の家庭でのホームステイや現地高校生・大学生との交流プログラムが含まれています。留学生の受け入れにも積極的で多様性に触れられる機会が多数設けられています。
全校でWi-Fiは完備されていて全クラスでスタディサプリを導入。OB・OGの中で教職を目指している大学生を中心に、チューターとして在校生の学びの相談や指導のフォローに来てもらうなど、サポート・補習体制を充実させ、生徒たちの学びやすさを重視しています。
進学実績もかなり結果を出し始めました。早慶上智に5名前後、MARCHに15名前後、国公立にも5名前後、ここ数年コンスタントに合格するようになってきました。受験生の数を考えるとまずまずの実績なのではないでしょうか。また海外大学への進学者も毎年数名いて、グローバル教育の成果を感じます。
アレセイア湘南は総合学園ですので中学からの一貫生も50名前後いますが、全体の割合としては20%未満で外部生の方が圧倒的に多いため、高校から入っても居心地の悪さを感じることはありません。
また入学にあたって「塾推薦」があるのも珍しいですね。「教育開発出版”県模試”」「伸学工房”全県模試”」「新教育”W合格もぎ”」のいずれかの偏差値が特定の数値以上であれば、特進選抜コースと特進コースへ出願できることになります。詳細はお通いの塾にご相談ください。塾推薦という制度も以前は結構あったのですが、最近は減ってきましたため、実施している数少ない学校の一つです。
比較的小規模の学校での学びやグローバル教育に興味があって学校側からの手厚いサポートを期待されている方にアレセイア湘南はおすすめです。
個別指導塾のエリアマネージャー、勉強犬さんのブログにも学校訪問時の内容が上がってましたのでそちらもご参考に。
目標内申点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
昭和22年設立の伝統ある私立男子校、横浜高校。最も有名なのは野球ですね。2018年の甲子園出場は記憶に新しいところです。野球を中心として自転車部やアメフト部、水泳部、剣道部、柔道部なども有名で全国的な活躍を見せています。特進コースを神奈川県内でいち早く設置するなど、学習面での学校生活も大切にしてきた学校です。
横浜高校については2020年度からの共学化を抜きにして語れませんが、2019年入学生はまだ男子校ですので、まずは現状をお伝えしていきたいと思います。共学化については別記事がありますのでそちらをご参照ください。
現在のコースは3コース。特進・文理・特性となっています。特進コース・文理コースについては2019年度から月〜金曜日は6時間授業、奇数週土曜日には半日授業を実施していくことになります。特性コースは土曜日の授業は実施せず、月〜金曜日も5時間授業です。特進コースでは駿台サテネット21の導入、学習サポーターがつくなど学習支援体制がより強力になっていきます。これまで実施していた有料のアドバンス講座(18時から80分)は新カリキュラム導入にあたって段階的に廃止していくとのこと。今後はe-ラーニングで個々に合わせた学習を促していくとのことです。
文理コースは基本が重要。授業のレベルが著しく高いわけではないので、よく聞いてきちんと授業に参加していれば成績も取れます。特進は指定校推薦が使えないので、文理コースの上位にいれば推薦での大学合格が可能になります。また成績によって文理コースから特進コースへ編入することも可能です。特性コースにはスポーツ推薦で全国からアスリートが集結。もちろん部活動だけでなく学習や進路について手厚いサポートが受けられます。
今後は教科担当や学級担任による生徒との関わりの回数を増やしていき、学習内容の指示や適切な声がけ、そして保護者との連携を強めながら生徒一人ひとりにとってさらに最適な進路へ導く体制を強めていくそうです。進学指導部にも見直しをかけて、進学情報の生徒への提供、生徒の現状についての情報を教員の間で共有する回数を増やすなど、細かいところからも変えていこうという意識が見られます。
校則は厳しく、髪は色だけでなく長さも結構指摘を受けるそうです。ただ、「社会で信頼される人を育成する」という学校の理念の元、指導は徹底されており横浜高校の生徒はみな礼儀正しく乱れることはありません。
男子校ではありますが、校内では部活によるスクールカーストが少なからず存在するという面もあります。「横浜高校を背負っているのは俺たち」という運動部はやはり校内で幅を利かせる存在のようです。必然的に食堂も野球部が牛耳ることになりますが、一方で最も礼儀正しいのも野球部だったりします。他の生徒が脱ぎ散らかした靴を野球部が並べていることもあるそうです。
進学実績は2018年はここ数年で比較しても最も悪かったと言える年でした。私立大の定員厳格化の影響があるとはいえ、上位校への実績は激減しています。劇薬という意味でも「共学化待ったなし」の状況と言えるでしょう。大改革を実行せざるを得ない時期に来ていたということができそうです。
ニュージーランド研修は長年続けてきた横浜高校のグローバル教育の核です。さらなるグローバルを目指して横浜高校在学中にアメリカの大学を体験するプログラムを走らせる予定です。アメリカの二年生大学と高大接続提携を結ぶなど精力的にアプローチを始めています。ただ、現状では目玉として語られているニュージーランドの三週間の語学研修も30名程度の参加者ですし、二年次春の三ヶ月間のターム留学も希望者は例年数名しかいません。この現状で「グローバル」を謳うのはいささか無理があります。全校的な取り組みになっていくかどうかが今後の焦点ですね。
校舎の改築は予想以上に素晴らしい内容で進んでいます。併設している中高一貫校と比べて「ボロい」と揶揄されていた高校校舎も美しく生まれ変わっています。教室だけでなくコミュニティスペースもあり、また体育館も全面改築の予定となっています。共学化に当たって一番の懸念材料だった校舎がクリアできていますので、あとは中身の改革がどこまで進むか。ただ、学校側の意欲は高く本気で変わっていこうという不退転の覚悟を感じるものです。変わりゆく学校の姿を身を以て体験するというのもまたとない経験となるかもしれません。
革命中の学校に身を置きながら、手厚い学習サポートを受けつつ自らの希望進路を叶えていきたいと考えている方に横浜高校はおすすめです。
別角度でご紹介した記事がありますのでご覧ください。校舎内部の写真も掲載しています。
目標内申点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
「進まざるものは退く」昭和7年に創立された前進の湘南女子学園時代から受け継がれてきた校訓です。女子校としての歩みを続けてきましたが、2000年に校名を湘南学院に変更し、男女共学へ。2012年に新校舎が出来上がり、グラウンドやアリーナ含めて随時施設拡充が行われている学校です。2001年に国公立アドバンスクラスを開設するなど、コースの細分化を他校に先駆けて実施してきました。特に設備面の充実は常に進化する湘南学院の象徴とも言えるでしょう。
コースは国公立アドバンス・アドバンス・選抜スタンダード・スタンダードの四つがあります。名前の通り国公立アドバンスは国公立大学への進学を目指すコース。実際は国公立に入れるのは毎年数名。金曜日以外は毎日七時間授業となっており、部活動への加入は難しいのがこのクラスです。大学受験は指定校推薦が取れないため、全員が一般受験をすることになります。アドバンスは七時間授業が週に1回。学校内で最も真面目なコースと言われています。担当する教員も手がかからないクラスと言っているとか。文系は指定校推薦で合格を取ることが多く、理系は一般受験をするケースが多いようです。
選抜スタンダードは二年次から文系・理系で分かれます。勉強ができてスポーツもできる、というタイプの生徒が比較的多いのがこちらのコース。文系からは指定校推薦が多く、一般受験をするのはクラスで2割から3割程度。理系は主に一般受験を狙います。スタンダードコースはスポーツ推薦で入学する生徒も多く、活気があります。二年次からは進路の希望に合わせて選択科目が履修できるよう音楽系・美術系・書道系・文理系・情報系・福祉系の六つのコースが準備されています。書道系ってすごいですね。書家育成のため結構本格的にやるみたいです。大学進学から就職まで幅広い進路先ですが、専門学校に行く率が高いとのことです。
校則は厳しく、髪型(編み込み禁止)や髪色にも規則があり、ピアスなどもっての外。生徒指導の先生が毎朝校門に立ってチェックをしています。スカート丈には特に厳しく、切ってないかのチェックのために裾を裏返して折り返しを定規で測られたりすることも。ちょっとやり過ぎのような気もしますが、規律を保って落ち着いた学校生活を送るためのルールのようです。
行き届いた生活指導のおかげもあってか、生徒たちはマイペースに伸び伸びと学院生活を過ごせています。自分がやりたいことや目指す姿を実現するための三年間とするために自らと向き合う時間がしっかりと持てるのも湘南学院の特徴です。先生はフレンドリーでアドバイスもしてくれて勉強にしっかり向き合わせてくれます。自習スペースも充実していますし、個別の相談や質問対応で遅くまで残ってくれる先生もいるそうです。進路指導についても丁寧で、方向性を一緒になって考えてくれたり興味がある学校を熱心に調べてくれたりします。
スタディサプリやNOLTYスコラ手帳を使用するなど自立学習を支援するソフト面も充実してきました。またclassiの導入も決まり、生徒と先生のやりとりに加えて学校生活のポートフォリオの作成も容易になります。このあたりの動きが早いのは今後の大学入試改革に向けても頼もしい部分です。自習室の環境もよく、やる気のある生徒にとってみれば自分の力をどんどん伸ばしていけそうです。
進学実績は今ひとつふるいません。「国公立アドバンス」を謳いながら2018年度の実績は「電気通信大・県立保健福祉大・北見工業大・宇都宮大・高知大」の5名。またホームページに単年度の進学実績を掲載していないところもマイナスポイント。こちらのページでは「3年間の主な合格実績」となっていますが、すぐにでも公表すべきだと思います。卒業生が数名しかいない学校で個人が特定されることを避けるため公表しないというのなら分かりますが、湘南学院は例年500名超の卒業生を出します。これは少々いただけません。文系の指定校推薦は充実しているため、選抜スタンダード、アドバンスコースの文系の生徒は推薦でも大学進学を決めやすい状況にあります。
部活については2017年に高校選手権でベスト4入りを果たした男子サッカー部、インターハイ出場の女子サッカー部に加えて個人種目でも薙刀部や弓道部、ゴルフ部も強豪です。スポーツ推薦で入学している生徒も多いため、各種目で全国的にも名を轟かせる学校です。運動系の設備については湘南随一。道場も素晴らしいですし、総合アリーナとサブアリーナ、野球場、人工芝のサッカー場もあります。さらに校舎の隣には横須賀リーフスタジアムという立派なサッカー場があって現在その向かいにもう一つ野球場を建設中。これらは横須賀市の施設ですが、公式戦などではこちらを使用することも可能となっています。
スポーツフェスティバルと文化祭が大きな行事です。スポーツフェスティバルは学年ごとに実施されるため、縦割りやカラーごとの盛り上がりなどとは無縁です。他学年のものを見に行くこともできません。4種目+部活対抗リレーのみというあっさりとしたプログラムとなっています。文化祭もクラス単位で出し物をしていきますが、一年生はステージ発表のみでクラスでの出し物は不可となっています。二、三年生の模擬店のクオリティは高く楽しめますし、学校内や看板等の飾り付けを行ったりと華やかな行事です。中でも必見なのが後夜祭で上がる花火です。花火師の資格を持っている先生がいて、25分間も本格的な迫力の花火が上がり続けます。
多様性ある学校の中でマイペースに自分の学習や進路を見つめる三年間にしたい方、充実した設備の中で高校生活を送りたい方には湘南学院はおすすめです。
以上、「おすすめ併願10校」に続く第二弾として「注目併願5校」についてご紹介させていただきました。今回の5校は学校改革によってかつての姿と様変わりしている学校をセレクトしています。子どもたちの持っている可能性と凄まじいスピードで変化する時代を考えれば容易に想像できることですが、旧来の学校の形で、また大人が準備した枠に今を生きる子どもたちを嵌め込んでいくことは不可能です。学校が変わり先生が変わってはじめて生徒が成長し羽ばたいていきます。逆に言えば変化の波を捉えきれず、スピード感がない学校は生き残れない時代になってきました。
今回も書類選考を含む「併願確約校」のみについて触れています。推薦入試ではまた基準が異なるので数値については必ず高校発表のもの、各塾で教えてもらえるもの、中学校の先生から聞いたものでご判断ください。
「おすすめ10校」の方でも書いているのですが、今回の記事は併願校選びのきっかけや入り口としての「視点」の紹介です。各学校の魅力、先生や生徒の雰囲気、細かなカリキュラムなどは必ず保護者の方、そして受験生本人の目で確かめてください。在校生や卒業生にどんどん聞いて学校のことについて知ってください。
併願校はともすれば「滑り止め」という扱いになり、「出来れば行きたくない学校」となりがちです。でも、全力で高校受験に臨み、そして第一志望に不合格だった時に行くかもしれない学校です。少し遠くても少し高くても本人に合った学校を何とか探してください。幸い就学支援金の制度が整い、私立に通うハードルは圧倒的に下がっています。「内申基準をクリアしている中で一番偏差値が高い学校」は何も選ぶ基準になりませんよ。今の偏差値が高かろうと3年後に新大学入試制度が適用された時、その順番は大きく変わっているかもしれません。対応力や熱意、三年間の学校生活の充実度を見て選んでほしいと思っています。
そして、私立高校には建学の精神と理念があります。よく話を聞いて理解して「自分に合っている」と感じたなら、それはリア充を優先して公立に行くことよりも幸せなことなのかもしれません。公立には公立の良さがありますが、私立には私立にしかできないこと、学校の存続をかけて取り組んでいる良い部分がたくさんあります。
第一志望の公立高校が不合格で併願私立で三年間を過ごした後、「私立に行って良かった」と話す生徒もかなりいます。自分が通うことになった学校を100%楽しんで、この場所で自分を輝かせる方法を探していく、ここで楽しむんだ、という意識さえ持てれば、私立高校の多くはそれに応えてくれます。
さて、当記事の内容について他塾の先生方や学校の先生方も大いに活用していただいて結構です。ただ、必ず生徒自身や保護者の方の選択を促す形で使って下さい。
最後までお読みいただきありがとうございます。受験生の皆さま、保護者の皆さまにとって、これから迎える15の春が前向きな輝かしい春になることを願っています。よく考えて、悩んで選んだ学校に進むのであれば、結果に関わらず、その先に広がる三年間はきっと充実したものとなるはずです。神奈川県の受験生たちが胸を張って2019年4月に高校の門をくぐれることを応援しています。
おすすめ10校の記事はこちら。やや基準値が高めの学校が並んでいます。
私立併願についてのもっとも良いと思われる学校案内はこちら
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私学の学費支援制度について紹介されている記事はこちら
また、私学の学費支援制度については2018年度から大幅に拡充されています。詳しくは小田原の慧真館岸本先生が大変わかりやすくまとめてくれています。是非ご参照ください。