受験を超えて

鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -


どう変わる? あの横浜高校が共学化! 野球名門校が起こす”本気”の大革命

2018.09.18


「横浜高校」と言えば”野球”。言わずと知れた”平成の怪物”松坂大輔を筆頭に今や球界を代表するスラッガーとなった筒香の出身校でもあります。昭和22年設立の伝統の私立男子校である横浜高校が2020年春から共学化する(女子を受け入れる)というニュースは、「横浜高校、お前もか」と消えゆく男女別学の灯を惜しむ声、「どんな学校に?」という好奇の声、そして幾ばくかの懐疑的な見方と共に神奈川県内を駆け巡りました。

当然と言えば当然ですが共学化に向けての横浜高校の革命は”本気”です。少子化によって押し寄せる中堅私立受難の波に飲み込まれまい、塵埃の世を颯爽と駆け抜ける時代の担い手を育てる、そんな決意すら見て取れる横浜高校の大革命。葛校長、三原校長代理が中心となって法人、学校、生徒が一丸となって描き紡ぐ未来やいかに。

実際に訪問した際にお聞きした横浜高校の先生の声に加えて、「女子ウケ要素」は果たしてあるのかという考察、男子校→共学校へと一足早く変更して大成功を収めている「先輩」である法政第二高の生徒の声など、ご紹介していきます。

美しい人工芝にレンガ調の校舎が映えます。校門をくぐった瞬間からイメージ刷新

横浜高校の歴史、どんな学校か

概略

横浜高校とはどんな学校なのでしょう。昭和22年に設立された伝統の私立男子校で、「社会で活躍できる人間力を育てる」という理念の元、三条(信頼を受くる人となれ・責任を重んぜよ・秩序を守れ) 五訓(誠意・総力・努力・創造・忍耐)という「三条五訓」の精神が校訓です。

甲子園の常連校としても全国に名を轟かす名門校で、松坂大輔や筒香、涌井。古くは高橋建や鈴木尚典などの野球選手も横浜高校の出身です。野球だけでなくサッカー日本代表の天野純(横浜 F・マリノス)、ゆずの北川悠仁など多彩な才能を輩出している学校です。

コースは?

現在は特進コース・文理コース・特性コースの3コースがあり、自分に合った学習環境を選びながら高校生活を送ることができます。特進コースは今となっては多くの学校にもありますが、他校に先駆けて設置された伝統的なコースでもあります(来年度名前変えちゃうらしいですが)。

偏差値は?

標準偏差値としては特進コースが58、文理コースが49となっています。男子校不人気の影響か、ここ数年少しずつ偏差値帯は下がってきている印象です。(表記の偏差値は全て神奈川全県模試伸学工房調べ)

比較検討校は藤嶺学園藤沢58、武相(特進)56、武相(進学)48、三浦学苑(特進)58、三浦学苑(進学)54、三浦学苑(総合)47、平塚学園(文理)56、横浜隼人(進学)59、横須賀学院(一般)58、あたりでしょうか。

進学実績は?

比較検討対象と思われる学校との比較は下記の通りです。

2018進学実績 横浜 藤嶺藤沢 武相 三浦学苑
標準偏差値 特進58
文理49
58 特進56
進学48
特進58
進学54
総合47
卒業生数 307 194 249 418
早稲田 1 7 1
慶應 1
上智 3
明治 1 16 3 3
青山 1 7 2
立教 1 15 4
中央 1 20 1 1
法政 6 19 4 4
日本 16 44 8 13
東洋 7 8 8 6
駒沢 7 8 2 9
専修 5 19 2 2

“本気”の大革命、横浜高校はどう変わる?

共学化に伴って横浜高校は変貌を遂げます。一言でいうと尖った個性を持った硬派な学校が、時代の流れに乗ったキャッチーな学校に変わるということです。近年人気の出る学校の条件として業界で言われているのがEKK(駅前・共学・国際化)です。これは中学・高校に止まらず大学までも当てはまる公式となっていて、横浜高校も漏れなくこの三要素を満たしてきました。流れに乗っていけるのか、注目が集まります。

共学化に向けて校舎を全面改装。

横浜高校の大革命の目玉はやはり「共学化」です。2020年度春入学生(現中2生)から男女共学の学校へと変貌を遂げます。そのための準備は着々と進んでいて、校舎の全面改装は外壁がレンガ造りだったり校舎内部が白基調だったりで、今までの横浜高校のイメージを一新するものです。(詳しくは後述します)

これまでの横浜高校と言えば全ての印象は「野球が強い学校」に収束していくものでした。でも、学校としてはスポーツだけでなく「充実した学校生活」を大切にしてきたという自負があります。さらなる充実した学校生活を生徒に提供するビジョンを持った時に、多様性・グローバルの視点から共学化が欠かせない、と判断して共学化に踏み切りました。

改革の三本柱

2020年共学化に向けて2019年より抜本的な教育改革が準備されています。横浜高校が大切にしてきた「学び」の部分をベースに、今の時代が求めている人材を育成するためのカリキュラムやプログラムが策定されています。改革の三本柱は「深い学び」「グローバル」「キャリア教育」の三つです。

深い学び(Deep learning)

学習環境を大きく深く変えていきます(ディープラーニングという訳をあてるとAIみたいですね…)。校舎の改築に伴い、特進コースの校舎内にはWi-Fi完備でアクティブラーニングを中心としたICTを実践できる環境を整えてあります。また、特進コースには一人一台タブレットを渡しながらデジタル教科書の使用等も可能になってきます。

また、カリキュラム変更を行い、特進コース・文理コースについては月曜日から金曜日までは6時間授業、土曜日は隔週で4時間授業を実施します。さらに特進コースには「学習サポーター」が配置され、特進コースの生徒たちの学習計画の立案の手助けや実際の学習状況を確認したり、また進路相談を行ったりもします。

e-ラーニングについても駿台サテネット21を中心に積極的に導入します。特進コースの生徒は全員必須。文理・特性コースは希望制です。自習室や自宅でも活用できるようになり、学びの意欲に加えて進学に向けての準備を効果的に進められるようになりそうです。

…とここまで書いてきてお気づきかとは思いますが、「特進コースは」「特進コースのみ」という表現がいかに多いことか。様々なパンフレットや媒体、先生方のお話からも随分と特進を優遇しているように感じます。他コースの生徒や保護者がへそを曲げなければ良いのですが。

グローバル

そしてやはり外せない「グローバル」的要素。これは学校改革におけるキラーコンテンツです。横浜高校では他校との差別化という意味で、海外大学や高校との「提携」を結ぶことに尽力しているようです。専任としてアドミッションオフィサーなる役職を作り、グローバル教育を推進しています。27年の伝統があるニュージランド研修(高2夏休み19日間)は今後も継続。それに加えてニュージーランドターム留学(3ヶ月間)、グローバルエリートプログラムとして高校卒業後にアメリカの二年生大学に入学するための研修(1週間〜2週間)を新たに準備。

グローバルエリートプログラムでは提携を結んだアメリカのMerced CollegeとMiraCosta College(いずれも二年制)への進学が実現します。横浜高校在学中に体験プログラムに参加し、入学前に8週間の準備講座を受講すれば正規に入学できます。一般的には英検準1級〜1級レベルの語学力がなければ入学を許可されませんが、横浜高校の場合は2級程度で可能になるとのことです。また、渡航費・滞在費を抑えながら留学が可能なプログラムとなります。

二年制大学卒業後はアメリカの四年制大学へ三年次に編入したり、日本の大学に3年生として編入することも可能でその受け入れ先についても準備は進んでいるとのことです。具体的な校名はこれから発表される模様。楽しみですね。

横浜高校のグローバル施策のコンセプトは「ストレッチ」。ちょっと頑張れば手が届く、というものです。費用的なもの、英語の実力的なものについても、ハードルを上げすぎずに可能性を広げるための手助けを学校がしてくれます。

学校側としても「グローバルな学校に」ということで、相当力を入れてプログラム策定をしているようですが、グローバルエリートプログラムへの参加は限定5名。3ヶ月のターム留学についても現在のところ120万円近く費用がかかり、希望者は現状では毎年数名程度。ニュージーランド研修も全員参加の勢いで語られてますが、実際は30名弱の参加者だとか。道半ばであるというのが現実ですね。

「生徒全員参加」や「希望制のプログラムでも学年のほとんどが参加します!」くらいでないと現在のグローバル教育全盛の私学の中で魅力的には映りません。近隣の共学校と比べても見劣りします。グローバルを謳うのであれば、更なる深化が間違いなく必要です。

キャリア教育

「各個人の有する能力を伸ばしつつ、社会において主体的に生きる基礎を培うこと」がキャリア教育の主眼です。日々の学校生活の中で体験やガイダンスを重ねながら自分自身への理解を高め、卒業後の進路について前向きにより良い未来を開けるようにキャリア教育を進めていきます。

各学年の取り組みとしては、「社会人との対話」「職場体験」「卒業生との対話」の場を多く設けていき、社会との接点を増やしていきます。進路別ガイダンスなども複数回実施しながら、生徒一人一人にあった将来を共に考えていく仕組みを作っています。

三原校長代理も次のように話します。

「我々教員は社会性がなくて閉鎖的なので分かる人に語ってもらわなければいけません。OBであるとか、キャリアコンサルタントなどを活用しながら生徒に可能性を見せられるキャリア教育を準備したいと思っています」

キャリアデザインについても各校とも特徴ある取り組みをはじめていて、正直言うと横浜高校の取り組みに新しさを感じることはありませんでした。「とりあえず」の印象が拭えません。OBをどんなに活用しても女子のキャリアには現実味が出ません。2020年の共学化スタートまではまだ時間があるので、しっかりと準備していただきたいものです。

施設設備革命

さて、革命の中身を紹介しながらやや否定的なことも書いてきましたが、施設設備革命についてはポジティブです。「カネ」かけてます。共学化の話を聞いて真っ先に思い浮かんだのが、設備面のネックです。これまでの古めいた校舎で女子を呼び込むことはまず不可能。どうするのか…と思っていたら中をバッチリリノベーションしていました。気になる校舎内の写真を一挙公開!!(本邦初! 多分…)

えっこれが横浜高校? 嘘でしょ、と言う衝撃の廊下。

女子トイレも美しい。大きな鏡。清潔な洗面台。隣には更衣室も

流行りのコミュニティスペースも完備。女子が入れば絵にもなる

割と珍しい「書道教室」なんかも。フォントもおしゃれ

昇降口も木目とレンガ調で落ち着いた雰囲気。写真よりも実物はもっとカッコいい

また、食堂についても改築予定と三原校長代理は語ります。

「今の食堂は男子校モデル。これでは女子は来たがりません笑 メニューも量重視から味や栄養重視に変えていかなくてはいけませんよね。変えます」

来年には目下急ピッチで改装中の体育館をはじめ、フルモデルチェンジした横浜高校の姿が見られるそう。これは期待大!

共学化される横浜高校の女子ウケ要素

さて、改めて考察してみたいこととして、果たして横浜高校は「女子ウケ」するのかという点があります。6点に分けて考察してみたいと思います。

  1. 校舎
  2. 国際化
  3. イケてる男子
  4. 意識高い系
  5. 制服
  6. 青春=行事
校舎 校舎については新校舎と言っても差し支えないレベルでリノベーション(改装)されているのでクリア。垢抜けている感じもあり
国際化 どこまでプログラムが現実味を帯びて全員に浸透するかは不透明なものの、とりあえずグローバルを謳っている。ここから予算もつけながら相当力を入れて作り上げていく部分。期待できる気はする
イケてる男子 イケメンが多いかどうかは何とも言えない。が、間違いなくスポーツマンは多く横浜高校の生徒はみな礼儀正しい。また新しく来た女子には優しいはずでちやほやされることも請け合い
意識高い系 企業とのコラボや起業家育成プログラムなどの設定はなし。経営女子が増えている昨今、そこへの訴えかけは弱い
制服 多分、可愛いと思う。この辺のセンスは分からないが、古臭い制服の公立や某私立高よりはずっとましかと。どちらのデザインになるかは文化祭の投票で決まるらしい(下のフライヤー参照)
青春=行事  ここ、大事。ポイントはいかにフリーダムにするか。私立の文化祭・体育祭はどこも縛りが厳しくつまらない。中学生は青春=行事としている節が強く公立の志望校選びも「行事の楽しさ」を最優先することもしばしば。説明会で男子校時代の文化祭の後夜祭のVTRを見せられたが、はっきり言ってこれでは全く魅力がない。価値観を180度変えて七里ガ浜と鎌高の文化祭と湘南の体育祭を参考にして作るべき。それが出来たら人気出る。間違いない

総合すると、まずまずかなと。最後の6点目(行事)は中の先生たち本当に考えてください。ここだけで人気変わりますよ。人気の可否は行事が握る、と言っても過言ではありません。もちろん、理念を最重要視ということで「最初は人が来なくても構わない」、というのなら三本柱を徹底してブラッシュアップすべきだと思います。

先輩である法政第二高に聞いてみた

2016年に男子校→共学化で大成功を収めた先輩である法政第二は横浜高校にとっても一つのモデルとなることでしょう。残念ながら法政第二にある第二のキラーコンテンツ「大学附属」だけは望めませんが、それ以外は参考になることがたくさんありますね。

2019年度入学生のために「自分たちの学年には女子がいないが一年下からは入ってくる」というケースを体験した法政第二の生徒の話を聞いて来ましたのでご紹介いたします。

「学校の雰囲気が華やかになります。三年間で二つの学校に通ったみたいでした」

「自分達だけ除け者感が出ます。バレンタインデーは後輩の校舎側の窓に『チョコください』と張り紙をする始末。体育祭とかも下の学年だけ異質な盛り上がり。俺らって一体…とはなりましたね」

「でも、悪いことばかりではありません。二高に来る女子は大人っぽくてしっかりしている子が多いので、同級生よりも先輩好きな子が結構います。だから、男子しかいない僕らの学年でも後輩と付き合っている奴もいますよ。男子校だった時よりもチャンスは増えます」

「学校の人気が出るのはいいこと。入学した人たちに「乗り越えてきた」という自信と学校への愛着が増します」

はい。やっぱり共学化はいいことみたいです。男子校出身の私としては、陰キャラに優しい男子校の良さも捨てがたいですが、時代が違うと言われればそれまでです。私立男子校の栄光学園や鎌倉学園の先生に聞いても「スクールカースト? 何それ」状態ですし。共学の方がスクールカーストが発生しやすいのは間違いありませんので、その辺りも配慮できると最高ですよね…

おわりに

「横浜高校、共学化します」と聞いて「マジか!?」と反応した方は多かったことでしょう。私もそうです。そして、次の瞬間に「大丈夫か? 人来るのかな…」と心配した方も多かったことでしょう。私もそうです。しかし、今回の訪問はその不安を50%ほど消し去るインパクトがあるものでした。

まず、校舎が想像以上に大きく変わっていて、これなら女子も満足できるというレベルのものになっています。次に国際化含めてカリキュラムや中身を大幅に組み換えようとする改革への意識が強かったことが挙げられます。

他校との差別化が今後の課題です。横浜高校にしかないコンテンツ、良さ、伝統を殺さずに変革を遂行していけるのか、注目ですね。不易流行を実現できるかが最大の焦点です。特に「横浜高校ならでは」のキャリア教育には期待を持っています。何も難関私立大に行くことが、何もコッコーリツに行くことが、キャリアの充実ではないのですから。

生徒の選択肢を増やす、という方向性をバシッと示して語ることが出来て、ずっと大事にして来た生徒一人ひとりに寄り添うという理念を守っていければ、自ずと人が集まるように思います。大学進学に向けての学習指導に定評があるわけではないので、生徒がどの進路を選んでも全力で応援出来る、という環境が整えばそれが横浜高校の新しい価値になるかもしれません。

EKKが整い、横浜高校の革命が始まります。共学化についての更なる詳細情報はまた来年。