受験を超えて

鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -


【読書会】小学5・6年生“が”おすすめする面白い本ランキング2023

2023.04.28


今回は小学5・6年生対象で一年間実施してきた“読書会”で好評だったものを、ランキング形式で生徒のコメントと共にご紹介。

大人目線ではない、実際に読んだ子どもたちのリアルな評価なので、本選びのご参考になるかと思います。

子どもたちは容赦なく★1つとかも付けるので、忖度なしの結果です。

読書会とは

セレクトした課題図書を、毎月一冊、読書会の時間に一斉に読み始めます。およそ40分間、黙々と読み続け、共有の時間へ。初読の感想をシェアし、残りのページを一ヶ月かけて自分のペースで読み切ります。一ヶ月後の読書会では、読後の感想を言い合ったり、レジュメに沿って読みを深めたりしていきます。

読書が苦手な子も”読書会の時間”に一斉に読み始めることで、最初のハードルを乗り越えることができます。読書に慣れていない生徒にも、本好きの生徒にも大好評な企画です。 (すばる進学セミナー HPより)

課題図書をセレクトするのは大変なのですが、生徒たちが一心不乱に読んでいる姿や、読書会「毎月楽しみにしています」という言葉をもらえたりするので、励みになります。

選書基準

    • 小学5・6年生が無理なく読める本
    • 楽しい本
    • ジャンルが被らない本
    • 読書好きでも発見がある本
    • 読書嫌いでも興味を持てる本
    • 読後に話が盛り上がりそうな本

年間ランキング

毎回、読書会が終わると読書会noteと呼んでいるレジュメに五段階で本の評価をしてもらっていますので、その平均評価を元にランキングを算出しています。(小5・小6の評価平均です)

想定していたものとは全然違う結果になりましたので、やはり「大人が選ぶ本」と「子どもが好きな本」というのは違うのだな、と。

第12位 冒険者たち ガンバと15ひきの仲間  3.61

斎藤惇夫(著)

町ネズミのガンバが、仲間たちと共にイタチに占拠された島からネズミたちを救い出す(イタチに勝つ)話。主人公をネズミとすることで、冒険のスケールが極めて大きく感じられるようになり、感情移入をしながら冒険物語を楽しめます。

子どもたちの感想
  • 人間よりもネズミは小さいから人間視点では感じられないスリルが感じられた。例えば、人間やイタチに見つからないように干し草をかぶったり、段ボール箱に入ったりする場面。ネズミにしかわからないようなスリルを味わえた。

 

  • 最初はめっちゃ長そうだなーと思っていたけど、読み進めていくうちにだんだん楽しくなってきて、読み終わった時には、もう終わっちゃったな、と思った。

 

  • ネズミが自分よりも大きく強い敵と戦い、どんなに小さくても仲間と勇気があれば、勝てると言うところを自分と置き換えて読み、背中を押された。続編も読みたい。

 

  • イタチとの戦いまでが長くて設定が細かいので、かなり読み応えがあるし、ネズミやイタチ、鳥のおっちょこちょいのところが笑えるのでおすすめできます。

第11位 ロードムービー  3.77

辻村深月(著)

「かがみの孤城」や「冷たい校舎の時は止まる」でお馴染みの辻村深月の作品。“バディもの”で、家出をする中でお互いの考え方を知っていくお話。歯切れの良いセリフと共にスピーディーに物語は進んでいきます。辻村深月ならではの終盤のどんでん返しも楽しめます。

子どもたちの感想
  • ロードムービーを読んでいて、主人公がどういう人なのか少し違和感を持ちながら読んでいたけど、最後に正体が明かされて一つのエピソードを読んだのに、二つのエピソードを読んだ気分になった。読者にそう感じさせる作者はすごいなと思った。

 

  • まったく違うタイプのトシとワタルが信頼し合っている不思議な関係に感動させられた。

 

  • 家出の話と学校での話が交互に書かれていて、続きがめっちゃ気になる……と思いながら、楽しめて読めた。お気に入りの作品となりました!

第10位 ラベンダーとソプラノ  3.99

額賀澪(著)

青春小説の注目作家、額賀澪が初めて書いた児童文学。表現の美しさとスムーズな展開、登場人物同士の関係性の豊かさを味わえます。主人公は小学6年生の女の子。厳しい練習と金賞を取らなければいけないプレッシャーでぎくしゃくする合唱団に入っています。歌う楽しさと、頑張ることの意味を問いかけながら進む物語。

子どもたちの感想
  • 勝ちにこだわってしまうと、ピリピリした性格になってしまうのに対して、楽しんでいる時や楽しんでいる人は穏やかな性格になるのだと思った。

 

  • 「人間の長所と短所って裏表でつながっているの」という言葉が一番心に響きました。面白いし、絵も可愛いから表紙見て気に入った人にはおすすめできます。言葉の書き方も独特で気に入りました。

 

  • 話は読みやすいけど、すごく考えさせられる本だった。勝つことや楽しむことについて、たくさん悩まされたし、学べたことがたくさんあった作品でした。

第9位 ぼくのとなりにきみ  4.00

小嶋陽太郎(著)

朝日中高生新聞で連載されていた小嶋陽太郎の代表作。町の古墳で手に入れた暗号を解いていく三人組の毎日に惹き込まれます。小嶋陽太郎の読みやすく、スッキリした文体と登場人物たちのピュアさがマッチしている秀作です。

子どもたちの感想
  • 一度読み始めたらどこまでも読めちゃって、いつの間にか終わっていた。今までの読書会で読んだ本で一番好き。

 

  • 「三人組」と言うのが良かった。チカ・ハセ・サクの個性がすごく面白かった。自分なりに話に入り込みながら読むことができて、とても面白く感じられた。

 

  • 読む前は、ページ数が多くて読むの大変そうだなーと思っていたけど、読み始めたらすぐに読み終わりました。冒険の話がドキドキしてミステリアスで読んでて特に楽しかったです。

第8位 びりっかすの神さま  4.06

岡田淳(著)

外れのない児童文学として抜群の安定感を誇る岡田淳の中でも、読みやすさ、ストーリーの面白さ、さわやかなメッセージ性で特におすすめできる『びりっかすの神さま』。クラスでビリの人にしか見えない神さまとの出会いで、主人公やクラスのメンバーが大きな気づきを得る物語。

子どもたちの感想
  • みんなで協力するチームワークの大切さを知ることができた。ところどころ絵も入っていたから、場面も想像しやすくてとても読みやすい本だった。

 

  • びりにならないとびりっかすの神さまは見えないわけだけど、見える人がどんどん増えていくのが面白かった。

 

  • 結末が気になってドキドキした。個性について考えさせられた。

第7位 十二歳  4.07

椰月美智子(著)

表現の美しさ、文体の安定感、安心できる描写とストーリー展開が好評の椰月美智子デビュー作、『十二歳』。小学生の健やかでそれでいて繊細な人間関係だけでなく、ポートボールという小学生ならではのスポーツの盛り上がりも楽しめる一作となっています。

子どもたちの感想
  • 主人公と歳が近くて、似たようなことを考えて、似たようなことで悩んで、読書で共感するってこういうことなんだと思った。絶対、おすすめの作品です!

 

  • 十二歳は面白くて最高でした。これまでもいろんな本を読んできたけど、一番面白かったと思います。同じ経験をしたことがたくさんあって、最後までうなずきながら読みました。

 

  • セミの脱け殻や、さえのおばあちゃんの存在が物語を引き立てていると思いました。よく考えて小説が書かれていて、すごいなと感じました。

第6位 あしたのことば  4.09

森絵都(著)

「カラフル」や「クラスメイツ」など小学生に人気の児童文学を執筆している森絵都の珠玉の短編集。青春ものから家族ものSFものまで幅広いジャンルのクオリティ高い作品が掲載されています。「お気に入りの小説タイプを見つけていく」上でも、この作品を足がかりにしてみると良いかもしれませんね。

子どもたちの感想
  • 好きな物語、そうでもない物語があって、本とじっくり向き合うことができました。短編だったので、自分が好きではない物語も最後まで読み切れるのはある意味で良かったです。

 

  • とても読みやすかったし、一つ一つのお話がすごく面白くて気に入りました。お話が8つもあって、一つ一つの話を味わえてもう一回読みたい、と思いました。読書が少し好きになりました。

 

  • さまざまなジャンルの物語があるので、「自分はこういうジャンルが好き」って分かったらこの先読んでいく本を選ぶのが楽になりそう。自分としては「羽」がヒントをくれました。

 

  • 分かりやすく、とてもお読みやすかったが、作者の伝えたいこと(考え)が少し見えすぎているような気がした。面白いの、普通の、微妙なの、全部入っている。でも、色々な話が読めたのは楽しかったです。

第5位 みつばちと少年  4.16

村上しいこ(著)

『教室の日曜日』など童話作家としても素晴らしい作品を発表している村上しいこ。『うたうとは小さないのちひろいあげ』や『ダッシュ』などYA(ヤングアダルト)小説も多数手がけています。『みつばちと少年』は、発達障害を抱える少年が養蜂家の伯父のいる北海道の養護施設に夏休みの間、滞在して施設の子どもたちと交流して豊かに過ごしていくお話です。

子どもたちの感想
  • 考え方や感じ方は違う、ということをこの本を通じて学びました。この本には厳しい大人や、あまり細かいことを言わない大人も出てきていて、大人が子どもにどう接するのかも色々で大変そうだと思いました。

 

  • 最初は盛り上がりどころが想像できなかったけど、話の内容がガラッと変わったり、感動したセリフがあったりと、シンプルにめっちゃいい小説だと思いました。

 

  • 「北の太陽」の子たちが大好きになって、私もあの子たちと一緒にいろんなことをしてみたいと思った。雅也の伯父さんの人物像が一番素敵だと思った。

 

  • これまでの読書会の本の中で個人的に一番好き。最初はほのぼので終わるタイプの小説と感じたけど、どんどん次の展開が気になる内容でいつの間にかハマっていた。

第4位 5年1組ひみつだよ  4.20

吉野万里子(著)

YA(ヤングアダルト)小説の旗手とも言える吉野万里子が手がける「短編小学校シリーズ」の第一弾。クラスの一人ひとりが主人公になって、連作短編の形を取るのは森絵都「クラスメイツ」と同じ。一つひとつの話が短くテンポ良く読み進められますし、話のバリエーションも豊かなので、小学校高学年で読書が苦手な人の第一歩としてこれ以上ない作品だと思います。

子どもたちの感想
  • めちゃめちゃいい本。笑いあり、涙ありの素敵な本! 読んでいて飽きなかった。同じ年頃の人物が登場するのも良かったし、一人ひとりキャラが立っていた。

 

  • 一つひとつの話が全然違って楽しめた。読みやすかった。自分も5年1組の生徒みたいな感じになれて、面白かった。

 

  • 話に入りやすかったし、5年生の視点で描かれている本を読めたのが、何よりも共感できるポイントでした! 喜怒哀楽がはっきり書かれているのも、良かったです。

 

  • 15個の章があって、自分に合った章を探しながら読めるのは良かったし、自分はどんな本が好きなのかというのが少し分かってきた気がする。

第3位 銃とチョコレート  4.25

乙一(著)

いよいよトップ3。児童書ミステリーと銘打たれた鬼才、乙一の作品がランクイン。登場人物が全員チョコレートの会社の名前というだけで、すでに面白い。ミステリーということもあって、「人が死ぬ」作品でもあるので賛否は分かれるところですが、ハマる人には人生最高の読書になる可能性もある一冊です。アニメや漫画で散々「死」を見てきている子どもたちを小説の時だけ死から遠ざける必要はないと個人的には思いますので、変に遠ざけずに、存分に楽しんでほしいです。

子どもたちの感想
  • 私はこれまで読みやすい本が好きだったけど、ミステリーもいいなーと思いました。社会のウラみたいな結構こわいところもあって、ドキドキしたりワクワクしたりしました。

 

  • これまで読んできた本の中でマジで一番。起承転結が良すぎる。伏線回収の連続でまったく飽きなかった。星は5個じゃ足りない。

 

  • めちゃくちゃドキドキした。怖いシーンも結構たくさんあったけど、読めた。私は怖いのとかホラーとかこれまで絶対ムリだったから、読み終えて達成感もありました。引き込まれてしまい、いつの間にか読み終わってました。

 

  • 全員がチョコレートの名前で面白いし、衝撃を受けたり、どうなっちゃうのかと思ったりしました。この本を読んで初めてミステリーって面白いんだって思いました。

第2位 チョコレート工場の秘密  4.30

ロアルド・ダール(著)

子どもたちに大ウケの『チョコレート工場の秘密』が第二位。ジョニー・デップ主演の映画「チャーリーとチョコレート工場」もあまりにも有名ですが、その原作。映画もかなり忠実かつコミカルに演出されていますが、活字で編まれた原作は想像力を働かせれば映像の上をいく激しさとエンターテイメント性で子どもたちの心を掴みます。読書会の後の子どもたち同士のやりとりが最も盛り上がったのが、この作品でした。

子どもたちの感想
  • それなりに長い本でしたが、一日で読み切れるくらい面白かったです。本の中に吸い込まれるような奇妙な感覚を味わえました。

 

  • 個性がある人たちを登場人物にしていたから、その人たちがどうなっていくのか気になって、熱中して読めた。特にウンパルンパは面白くてずっと心の中に残っている。ロアルド・ダールの他の作品もぜひ読みたい。

 

  • 読むのが遅いから長い小説は大変だったけど、遊び心がたくさんある本で飽きることがなかった。展開が激しくて、読み終わった時は人生何があるか分からない、と思った。

第1位 君たちは今が世界  4.35

朝比奈あすか(著)

映えある第一位は、朝比奈あすかの『君たちは今が世界(すべて)』。実はこの作品は一年間読書会を続けた最後に読んだ作品です。目が肥えた小学生たちがつけた高評価は非常に意味があるように思います。等身大の小6主人公たちと、ほとばしる作者の感性や豊かな筆致が、子どもたちの心を捉えました。

教室内で繰り広げられる日常は、視野や見識が広まりつつある小学6年生でも、大事な空間であり逃れられない現実でもある。だからこそ、そこで起きる出来事のすべては些細ではなく、子どもたちの構成要素であると感じさせてくれる一冊です。

そして、子どもたちが話してくれたのは、ここで描かれる「眉をひそめるような出来事」は、「うちの学校でもあること」だということ。ある人は登場人物と自身を重ね合わせ、ある人は登場人物を応援し、ある人は自分だったらこうすると意見してくれました。

子どもたちの感想
  • ある章では目立たない子が別の章になったら目立っていたり、教室内でのスポットライトの当て方が色々あった。特に「いつかドラゴン」と「仄かな一歩」での気持ちの動きを比較して読むと楽しめた。

 

  • 誰かをいじめている人に読んでほしい。いじめられている人の気持ちが本当に細かく書いてあるから。友達関係の難しさや、人を理解するということの怖さを知った。

 

  • すごく良かった! 本のページ数が多いから「途中で飽きそうだなー」と思っていたけど全然飽きなかったし、いじめの怖さが本当に本当に本当にほんっとうに伝わる!

 

  • 自分と同じ6年生中心の作品だったので、共感できる場面もあれば、共感できない場面んもありました。章ごとに視点が変わっていったので、全体を通して見るとまた別の楽しみ方ができました。

 

  • 共感できるところやすごくよく分かるところもたくさんあったけれど、なかなか読み進められない少し難しい本でした。読みづらいということや、意味が分からないということではなく、題材がいじめや個性、人間関係だったので、考えながら読まなければいけなかったからです。でも、とても面白くてそれぞれのキャラクターに感情移入ができる素敵な本でした!

おわりに

一年間読書会をして感じたことは、令和の子どもたちも「本を読める」し、「本を楽しめる」ということです。ただ、そのためにどんな本を選ぶのか、薦めるのか、そして誰と読むのかは、とても重要だと思います。

読書会の機能としては、「一人で読まない」ということが大きく作用します。読み始めもみんなで一斉に読み始めますし、読み終わったら、もしくは途中でもお互いに感想を言い合うことができます。自分が感じたことと周りの人が感じたこと、その違いや共通点で自然と盛り上がる光景は、素晴らしいものです。

そしてそれは教室で行う読書会である必要はありません。

保護者も、きょうだいも、一緒に読む。
そして、感想を言い合う。

ご自宅での「読書会」を開いていただくときっとお子様の読書の世界は広がっていくはずです。
最後までお読みいただきありがとうございました。