鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2019.03.02
2019年中学入試問題分析です。各校の問題の特徴と傾向、攻略に必要な力、学校のねらい等について分析記事を書いてまいります。第二弾は神奈川男子最難関の聖光学院です。
目次
文章題全15問中、4題が記述問題。もっとも文字数が多いのが40字以上60字以内×3題。選択肢よりも明らかに記述問題にウェイトを置いています。そして、この記述問題はかなりの文章力を必要とするものです。
文学的文章のセレクトは、自転車ミステリー「サクリファイス」で有名な近藤史恵の「さいごの毛布」。不穏な伏線は老犬が題材の今作でもほのかに感じさせるものとなっています。短文が多く、心地よいリズムで読み進めることができる作品です。抽象語や感情を自分の言葉で説明する問題が多く大変です。
説明的文章は近年の脳研究者で分かりやすい文章を書かせたら右に出るものはいない池谷裕二(優しいパパでもあります)の「脳には妙なクセがある」です。大人が学べる素晴らしい説明文(受験とは関係なしにオススメの一冊)。語彙レベルはさほど高くはありませんが、内容を一つずつ理解しながら追っていくのは大変。それこそ脳の処理が追いつかず、緊張状態にあると理解するのに苦労しそうな文章です。抽象化されている部分と対比部分を丁寧に読み進めていくと少し概要がつかみやすいかと思います。
傍線部と同じ意味で使われている熟語を選び、カタカナ部分を漢字に直すという凝った問題。
の二つは難しい。小学生の語彙で対応するのはなかなか大変です。ただ書ければ良い、頻出漢字をやっておけば良い、というごまかし勉強は許さないという出題者の強い意図が感じられます。漢字や熟語がもつ意味「表意文字としての漢字」を大切にした問題で素敵ですね。
選択肢問題は細部の表現の違いに気をつけながら解いていくことが最大のポイントです。似て非なる類義表現に強くなることが求められています。例えば、切なさ(より精神的)と苦しさ(より肉体的)の違いなどが把握できている必要があります。文章中のヒントや内容を噛み砕き、部分的な違和感を的確に拾っていくことで正答を選んでいかなくてはいけません。
長い選択肢を区切りながら、文章と照らし合わせながら合致する箇所、誤りの箇所を探していくことで、正解を選べます。五択でありながら一つ一つの選択肢も長いため、集中力を保ちながら丁寧に読み取っていかなくてはなりません。
問いかけ自体がかなり漠然としていて抽象的です。そのため抽象から具体に変換してまとめる力が必要です。文中の表現を切り貼りしてまとめるだけでは字数内に収まらないため、意図を短い言葉に置き換える変換能力も求められます。
小説文では二つの感情(泣きそうな気持ちのまま、少し笑った)を「一方で」を使いながらまとめる問題もあり、葛藤や複雑な心情を言語化する訓練を積んでおくと良いでしょう。
を本文中と同じ意味で使用している例文を5つの選択肢から選ぶ問題が出題。特に難易度は高くありませんが、意味を知っているだけでなくどう使うかを分かっている必要があります。例えば、「息を呑んだ」であれば、「驚いた」という意味だけでなく「ハッとして驚く」という正確な意味までつかめていないと選び間違えることになります。それぞれの語彙を会話や文章の中でどう使っていくかという活用能力を問われています。特別な語彙はそれほど必要ありませんが、正確に辞書的な意味を知っておく必要があるため、分からない語彙があった時は都度調べてまとめておくと良いでしょう。
語彙力アップにはこの漫画が最強。難関校受験者は一家に一冊(二冊)必要ですね。名探偵コナンのものもありますが、使いにくいですからオススメしません。(無類のコナン好きならありかもしれません)
全体として的確な言葉の力と全体把握能力、高度な言い換え能力が必要です。各問題も深さがあり、確かな力を問うてくる高レベルの国語の問題です。聖光学院も総じて良問です。毎年、聖光学院の出題には唸らされます。他の学校を受ける人でも解いて向き合うことで自身のレベルを一段あげることができますね。
聖光学院を2019年6月に訪問し花家副校長にインタビューした記事がこちらです。聖光の魅力がまとまっていると思います。どうぞご覧ください。