鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2018.09.22
神奈川県の入試は第一志望が公立高校、不合格だった場合は私立に進むという受験生が多数います。「併願制度」と呼ばれる神奈川県特有の入試は、内申点や検定等を加味して合格を確約してもらえる制度です。一部の例外を除いて12月時点で合格の約束手形をもらい、「行く高校がない」という不安とは無縁の状態で公立高校なり私立のオープン入試なりを受験することができます。
昨年度好評だったおすすめ併願10校についての内情や2019年度入試に向けての最新情報を含めた現在地についてご紹介していきます。各校の先生だけでなく、在校生や卒業生から実際に話を聞いた「生の情報」をお伝えしていきます。良いことばかり話す学校説明会では得られない内実をボリュームたっぷりに書いていきます。やや偏りがあるのはご容赦ください。
併願制度の内容については、以前書いたこちらの記事でご確認ください。
※昨年同様、基準内申点が高い順(およそ)に並べてあります。公表されていませんが、山手と中央大附属横浜はおそらく順番が逆です。最難関は中大横浜でしょう。
※内申目標点はあくまで目安であり、2018年度および2019年度入試に向けての数値です。優遇措置については触れていませんので、詳細については必ず高校側の発表をご参照ください。
内申目標点(2018年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
設立当初からグローバルをうたっていた山手学院。私立高校は入学したと思ったら大学入試の準備、ということも多いのですが、海外との交流を含めた国際理解教育プログラムをしっかりと実践しているのが山手です。伝統行事である北米研修は高校二年生の4月に二週間現地にホームステイし、またホームステイ先の生徒たちをリターンビジットとして、日本で迎えるというものです。
「世界を知る」ための研修という点では、効果がある本質的な研修だと思います。この北米研修を通して世界や海外との垣根が低くなったと感じている生徒も実際に多く、山手のグローバル教育を今も昔も支えています。他にもシンガポールイマージョンプログラムや模擬国連など希望制で参加できるプログラムも増えてきていて進化が見られます。学院の組織の中で「国際交流部」は最も多く予算が付いているチームで、所属する教員たちが手作り、手探りで実際に現地の学校を訪れて様々な取り組みを生徒のために準備しています。今後も進化を続ける山手の国際理解教育には注目したいところです。
山手といえば高い現役進学率も大きな特徴です。予備校をうまく使いながら実際に予備校講師の体験授業を受けるなど、対外試合・客観的な学力把握を増やしながら実力を磨いていきます。もちろん、模擬試験も多数受けていくことになります。
優れた進学実績は生徒の力による部分が大きいのはもちろんですが、同時に教員の進路指導力の高さも光ります。過去の先輩たちの膨大なデータから確かな線引きをしながら絶妙なラインを提示してくれるのが山手の「進路指導部」です。生徒の将来を見据えたキャリア教育というよりも、「受かる大学」を的確に教えてくれる進路指導が行われます。反面、大学名を優先し、生徒のやりたいことを実現するための進路指導となっていない側面も一部で見受けられます。ここにきて「国公立シフト」を取っており、国公立大学にいかに送り込むかというのが至上命題となってきているように感じますね。
さらにここ数年、指定校推薦の枠も増えてきました。2018年度は早稲田8名、慶應4名、上智4名、聖マリアンナ医科2名など難関私立への道が開けています。2019年度はさらに増えそうとのこと。卒業生たちの活躍が枠の増加に繋がっているそうです。
通っている多くの生徒は、楽しく充実した日々を送っています。不本意で山手学院に入学した子も、仲間たちとともに居場所を見つけ、勉強も学校生活も前向きに過ごしていくケースが多いようです。最終的には山手学院が大好きになり、胸を張って卒業していく生徒を何人も見ています。また、保護者の中にも「山手ファン」が多く存在し、伝統ある私立ならではの安心感もありますね。伝統ある私立であるがゆえか、今ひとつ新しさを追えていないのが玉に瑕でしょうか。教員個人として取り組もうとしていることはあるようですが、学校全体として動くには腰の重さを感じます。
高校から入ってくる生徒は女子が8割。公立高校入試の数学や理科の難化も影響しているのでしょうか。中学入試で入ってくる一貫生は逆に女子が7割ですので、学院全体で見るとバランスは取れているのですが、一貫生と高入生がクラスで同じになることはないので、教室内のバランスは悪いままです。
「山手は乱れている」という風評があります。山手は自由を尊重しているため、ごく一部派手な生徒もいますが、本当に少数です。まさに「木を見て森を見ず」でこれは誤解であると声を大にして言わせてください。多くの生徒は責任ある自由を自覚し、真面目で風紀ある学校生活を送っています。実際に通っている生徒や学校内をよく見てみれば分かります。文化祭は生徒が楽しむ行事なので、文化祭を見て「規律が守られていない」などと思うのはお門違いです。校内ですれ違っても挨拶はしてくれませんが(笑)
ここ数年、中規模の設備投資もしています。2005年に特別教室棟ができ、2010年にはカフェテリア(食堂)を新しくしました。味もよく、清潔感があり、生徒たちにも好評です。昼休み開始と同時に席は埋まります。また、2017年に新体育館が完成しました。以前の荘厳なアリーナは再現されていませんが、最新型の体育館として十分な機能を備えています。
一方、古びたメイン校舎は建て直しの予定もなく、現在の山手の最大のウィークポイントといえるでしょう。耐震工事は終えているので心配はありませんが、私立としては少々残念な校舎となっています。
生徒のレベルや満足度、学校の伝統、改善されている種々の取り組みを見ても、自由で活気のある高校生活を希望してる人は、校舎にさえ我慢ができれば、山手はおすすめできる併願校です。
2019年10月追記:2019年度より新校長を迎え山手が大きく変わろうとしています。改革についての所感をまとめた記事を書きました。よろしければご覧ください。
内申目標点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
2010年にもともと山手の丘にあった横浜山手女子が、中央大学の傘下に入り附属校となりました。2013年には現在のセンター北駅に新校舎を建築し、移転。共学化され、全く新しい学校としてスタートしました。
女子比率が高いということもあり、特に高校募集では敬遠気味なところがありましたが、中学入試で爆発的な人気となり、一気に偏差値が上昇。高校にもその人気が波及して、応募者数も激増しました。新校舎であること、大学附属の共学校であることは言わずもがなですが、学校法人中央大学が抱える高等教育部門でのエースを次々に投入して、新たな学校スタイルをうまくプロモーションできたことが人気の理由だと言われています。
センター北駅は少々行きづらい場所ではありますが、駅から徒歩5分。街自体も新しく、(人工的な)緑も豊かで落ち着いた環境。治安の面でもまったく心配無用です。ただ、閑静な住宅街ですので、日常的には問題なくても、行事の時などもある程度自重しなければならず、物足りなさを感じている生徒もいるようです。
人工芝が美しく整備されたグラウンドと窓が多く開放感のある校舎は素晴らしいものです。丸机や長机が数多く設置されているホールや自習室なども含めて学習スペースは十分確保されています。廊下側の壁が全面ガラス張りになった職員室は風通しの良さもあります。理科系の教室も非常に充実しており、ハイレベルな実験環境と言えます。
来訪者に対する挨拶を義務付けられている感じはありませんが、生徒たちは礼儀正しくハキハキしていて活気があります。特に中学生は、高倍率の入試をくぐり抜けている自信からか、学校生活を前向きに過ごそうという意欲が感じられます。
中央大学の附属校であることが最大の特徴と言えますが、その中でも他大学の受験を可能とするレベルで授業は進行していきます。「附属校でありながら進学校である」と先生方は口を揃えます。成績順に志望する学部への推薦が決まることから生徒たちは緊張感を持って学習に臨めているようです。およそ85%の生徒が中央大学への内部推薦を取得可能となっています。文化祭や体育祭も高校2年生が主体となって開催され、高校3年生は大学進学へ備えるという附属校らしからぬ体制を取っています。
3年次から文系クラスと国公立および理系クラスとに分けられることになりますが、文系とは違い、中央大学理系への推薦枠は上位3割しかもらえません。しかも、上位3割の人は主に他の難関大学受験を目指していて、繰り下がりもないため、理系で中央大学へ推薦で行く人はごくわずかということになります。理系の人はほぼ全員が一般受験をするということですね。このあたりはあまりオープンになっていない情報かもしれません。
英語教育については、高校1年生のカナダ研修旅行がベースです。今後、増やしていくことを検討しているということですが、附属校ならではのラインナップの充実を期待したいところです。このあたりからは、学校づくりがまだ道半ばであることを感じます。
中学からの内部進学生と高校からの入学組は、高校1年生の間は別クラス、高校2年生からは混合クラスとなります。最初は壁があるようですが、徐々にそれもなくなり、打ち解けて仲良くなることが多いと聞きます。高校から入ってくる生徒がいることで多様性が保たれて、刺激が加わると開成の校長先生も言っていますね。
人気も高く、外面的な「条件」は非常に整っている一方で、2010年からの7年間で「学校名変更(開校)→附属化→共学化→移転→高校共学化」と急激に劇的な変化を遂げてきたがゆえに、組織の安定感に若干の不安感が残ります。そして、そのことは生徒にダイレクトに影響が出て、一部の生徒からは「学校が生徒に向き合えていない」との不満が漏れることもあるようです。
また、先生方の大半は旧横浜山手女子の教員をなさっていた方々です。経験値がある方ばかりですが、学校のレベルが急激に上がったため、高いレベルの生徒を伸ばすことに長けているかというとやや疑問符が付くところもあります。目指しているところはあくまで「進学校」であるはずですので、教員の質のさらなる向上は急務かもしれません。
また、2018年度入試から「併願基準点を設けない」というスタイルを取っています。併願に定員を作り、調査書での数値が上位の人から確約が決まるということになりますので注意が必要です。場合によっては定数に達した場合あぶれた生徒は「差し戻し」となり、他の併願校を探すことになります。実際に山手学院には中央大附属横浜の併願(一般A入試)不合格となって、12月15日以降に教育相談に来る生徒が20名前後いたとのことです。鎌倉学園、桐蔭学園、日大藤沢は中央大附属横浜を不合格になった場合の受け入れを明言しています。2019年度入試では中学からの内部進学者が若干少ないため、2018年度よりも若干基準が緩和される可能性はあります。
充実した設備や、環境、そして中央大学への進学をメリットとして感じるのであれば、中央大学附属横浜はおすすめの学校となりますが、43以上と言われる内申基準はかなり厳しいですね。
内申目標点(2019年度入試)
5教科 24/25 かつ 技能4科 17/20
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
鎌倉私学男子校の雄、鎌倉学園。2017年4月に校舎の改築が完了し、全教室プロジェクター完備。コンピュータルームにはMacが40台配備されて、各教室への無線LAN環境も整い、ICTへの取り組みも今後積極的に行っていくとのことです。待望のカフェテリアも完成し、男子校ならではのボリュームでメニューが提供され、好評を博しています。鎌倉が誇る「バニー弁当」が食事を提供しています。2019年入試時点では、神奈川の高校併願校として最高の校舎設備が整っているといえるでしょう。
設備に関してマイナスポイントは図書室の蔵書の少なさと、点在するグラウンドです。野球部のグラウンドやテニスコートは校門を出て徒歩10分ほどかかる建長寺の境内の奥にあります。また、自習室やコミュニケーションルームもありますが、生徒数からすると席数が少なすぎるのではないかと思います。
真の文武両道を掲げ、部活動に制限日数を設けていません。野球部はもちろん、剣道部や陸上部(駅伝)は強豪。考古学部や将棋同好会など文化部も盛んです。部活動での繋がりは、中学からの内進生、高校からの外進生の壁を超え、熱いものとなります。部活動に熱心に取り組みながらも、勉強で成果を出していくのが鎌学スタイルです。2018年に神奈川県夏期高校野球大会で準決勝まで残ったのは記憶に新しいですね。
一人一人の生徒を手厚く見ていく、全員の生徒を大切にすることをモットーに掲げています。特進クラスのように一部のいわゆる「出来る子たち」を集めて英才教育をするのではなく、全員が切磋琢磨をしながら、底上げをし、学力の定着を図って理想のキャリアを追求していくという形で授業や進学指導がなされています。
新入生ガイダンスが行われる3月上旬にクラスわけテストを実施し、英数国をバランスよく取れる人で1クラス構成することになります。逆に1教科だけ「得意」もしくは「不得意」な生徒たちは習熟度別クラス編成に回ります。そして、高校一年生の間に苦手を克服し、二年次からは「英数国クラス」というクラスを設置。ハイレベルな授業を展開するクラスということになります。得意教科を伸ばすことも不得意教科を克服することも出来、文系でも数学をきっちり勉強していく体制となっているので明らかに国公立受験を睨んだクラス編成ですね。これは2018年度入学生から適用されている体制ですので効果のほどはまだ見えてきませんが、全体の底上げや特に中間層には非常に効果を発揮していくのではないかと予想しています。
最寄駅の北鎌倉駅は豊かな自然に溢れていて、四季折々の変化や趣を体感しながら毎日登校出来ることは、カマガクならではです。もちろん遊ぶところもありませんし、駅から学校まではコンビニすらありません。(少し遠回りするとあります)
建長寺を母体として運営されており、座禅やけんちん汁調理実習などを建長寺で行うことができます。個人的には建長寺という鎌倉で最も歴史ある素晴らしい寺を、もっとフルに活用した教育を期待しています。今まではほとんどなかったのですが、今後少しずつ連携を強化していこうという動きも出始めたようです。
教員間の風通しがあまりよくないように感じています。学校全体で何かに対して動くときも時間がかかるのも鎌学の良くないところです。校長先生を始めとする管理職の方々が慎重すぎるのでしょうか。一方で、若手の教員たちは優秀で勢いがあります。理科の生物系や英語科の国際理解、数学や社会も力のある先生がいらっしゃって教科単位、クラス単位、学年単位ではかなり面白い取り組みが増えてきているので今後の展開には期待ができます。
「大学進学実績」が振るわないことが鎌倉学園の最大の悩みです。中学受験でライバルと言われている逗子開成との差は開き続け、高校受験でライバルと言える山手学院よりも実績はよくありません。もちろん、高校の価値は大学進学実績で決まるわけではありませんが、気にされる保護者・受験生はかなり多いのが現実です。
またよくご質問がある、中学受験で入学した「内進生」との関係はどうなのでしょうか。結論としては、全く問題ありません。授業自体も完全に別カリキュラムで進みますし、部活動で一緒になるとき以外は、関わりを持つこともあまりありません。気にすることはないでしょう。
個人的には「男子校」で過ごす高校三年間は決して悪いものではないと思っています。もちろん、女子がいない寂しさはありますが、変に気を遣ったりカッコつけたりすることもなく、体当たりで誰とでも仲良くなれます。女子との青春を求めている人は外に出て行けばいいだけです。もしくは、大学へ行けば必ずいます。男子校でしか得られない経験はたくさんあるはずですよ。
部活も勉強も全力で頑張りたい。男子校でもいい。良い環境で学ぶ高校三年間を送りたい、という方には鎌倉学園はおすすめです。
内申目標点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
予備校要らずで最盛期は東大100人の合格者を輩出していたマンモス進学校、桐蔭学園。いっときの勢いは鳴りを潜め受験者・入学者・進学実績も数年前までは下降傾向でした。
しかし、その後中高一貫の中等教育校を設立し、学校のカリキュラムを大幅に変更。選抜メンバーに対して英才教育を施すことによって、少しずつ桐蔭の復活を印象付けてきました。中学からの入学者に対しては、男子部・女子部それぞれにより細やかな授業を展開。「桐蔭中学=アクティブラーニング先進校」という印象づけに成功。
高校からの入学者の人気も戻りつつあり、2018年度入試より新桐蔭学園として、大改革を打ち出します。これまでの男女別学を完全共学に変更し、2019年度からは中学入学生も完全共学に。新たな桐蔭学園として歩みを始めます。
桐蔭学園の代名詞でもある「レッスン制」(習熟度別クラス編成)は健在。テストの点数でクラスを決め、レベルにあったクラスで切磋琢磨しながら上位を目指していくそのスタイルは、進学塾のようです。また、レッスン制の良いところとしては、上位クラスにいるとそれだけで高い評定が取れるということがあります。簡単に「5」を取ることができて、指定校推薦などにはとても有利です。また、伝統と過去の実績から大学の指定校推薦枠や種類も多く、「指定校で大学に」という考えをお持ちの方にとっては、桐蔭学園は良いと思います。不確定要素や不安が多い2020年度の大学入試改革を考えると、指定校推薦枠がが多様で内申が取りやすい高校を選んでおくことは安心材料の一つになるかもしれません。
また、夏期講習などを含めて授業内での講習や特別講義なども多く、桐蔭名物の勉強合宿もあります。休み時間や放課後なども職員室で先生方が快く質問に答えてくれます。私立ならではの学習フォロー体制、特に勉強面でのサポートはさすが桐蔭学園という感じです。ただし、マンモス校なので先生方がこまめに声をかけてくれるわけではないのでその点は注意が必要です。自習室や図書館などの学習環境も素晴らしいので、主体的に学べる意欲がある生徒にとっては満足いく学校となるはずです。
ラグビー部や野球部、サッカー部などは全国的な強豪校ですし、少林寺拳法部や天文部、和太鼓部、電気工作部など珍しい部活動もたくさんあります。高校から何か新しいことを始めてみたい人にとっては、魅力的だと思います。サッカーやテニスなどには同好会もあるので、「勝つためのプロ部活動」ではなく、高校で純粋にスポーツを楽しみたい人にも安心です。
1学年1000人を超える規模を敬遠する人もいます。同じ学年でも知らない人がたくさんいる、さながら大学のような環境です。広大な敷地で移動が大変なこと、ほぼ全員が使用する駅からのバスの混雑ぶりは満員電車並みで、毎日のことなので辟易する生徒もいるようです。
制度変更により、学校自体が生まれ変わります。改革の内容を説明会等でお聞きしましたが、他の私立が取り組んでいることと比べて特筆すべき何かをやろうとしていることもなく、目新しさは特にありません。時代に合わせて「共学」としたことで、これまで逃していた層を取り込めることは間違いありません。しかし、2018年度はスタンダードコースの募集で9教科34という基準に設定した結果、受験生は激増。5158名が志願し、前年の2.5倍の人数が殺到しました。結果高校1年生は高入生だけで1200名弱の27学級、中等教育や男子部女子部からの内進生を合わせると前代未聞の37学級の超マンモス学年(1600名)となってしまい、急遽プレハブ校舎で授業を実施することになった学級もあるようです。
超マンモス校となった桐蔭学園。目指す学校理念「学問に徹し、究学の精神の持ち主タレ」が導くハイレベルな生徒の育成という点からは、少しずつずれていく可能性があるのではないかという主観を持っています。
今回の改革により、中学入学の募集をこれまでの14クラスから8クラスへと絞っていくことになりました。そして、高校からの入学は前述のように爆発的に増えていますので、中学で絞った分を高校の併願でカバーしようとしているのが透けて見えます。ひねくれた見方をすれば、中学入学組は少数精鋭の手厚い教育で育て上げ、大学進学実績を稼ぐメンバー。高校入学生についても上位クラスを手厚くし、あとは受験者数が重要だというように見えなくもありません。
もちろん、まだ改革は始まったばかりです。私の主観がただの妄言となるような成果を期待しています。桐蔭学園卒業の知人の多くは、学園のことが大好きです。卒業生に愛される学校運営をこれからも続けてほしいですね。
私立ならではの素晴らしい設備と整った学習環境の中で、高い学習意欲を持ちながら、自分の居場所を探しつつ高校生活を送りたい人には桐蔭学園はおすすめです。
内申目標点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
藤沢から小田急線で数分「六会日大前」下車5分のところにある日本大学藤沢。日大生物資源科学部のキャンパスを通り抜けた先にあるのが中学高等学校です。大学の雰囲気を肌で感じながら2001年に落成した素晴らしく立派な校舎で学ぶことになります。一部旧校舎・旧設備もありますが、随時建て替えを予定しているとのこと。「お金がある」という印象です。
校舎はよく考えて作られていて、いたるところに「学習スペース」が配置されており、先輩に教わったり、友達同士で教えあったり、先生をつかまえて質問したりすることができます。もちろん、自習室や図書室もあり、静かに学習できる環境も整っています。そして、キャンパスの一番奥に位置するNFグラウンドはプロが使用するレベルの競技場です。そのグラウンドで試合したいがために、遠くから遠征してくるチームもいるようです。2017年夏の日大藤沢サッカー部の全国2位の躍進は、グラウンドの効果もあったのかもしれません。
しかし、日大藤沢で特筆すべきは校舎でも設備でもありません。非常に高い生徒満足度です。通う生徒の大半は「併願」で入学します。つまり、第一志望に不合格で第二志望以下として学校の門をくぐります。その生徒たちのことを慮ってか、日大藤沢高校は様々な心境で入学する生徒への心的ケアも欠かしません。新入生歓迎会や先生たちの手厚いサポート、4月中に行う校外学習などで生徒の気持ちをゆっくりと高校生活へ順応させていきます。この辺りの優しさが日大藤沢高校の良さでしょう。
一学期を過ごし、二学期を過ごしていくうちに、きめ細やかな学校の対応、落ち着いて勉強ができる環境、そして居心地の良い秩序ある空間を好きになります。そして、口を揃えて言うのは「第一志望に落ちて良かったかもしれない」という言葉です。第二志望以下に通うことになった生徒をして、そこまで言わしめる併願校は他にあるでしょうか。
先生方は、しっかり授業を聞いてさえいればそれで力がつく、と思わせてくれる授業を展開してくれますし、生徒の質問にとことんまで付き合ってくれます。特進クラスではほぼ毎日小テストが行われ、緊張感のある学びが続きます。その小テストが一つの道標となり、自分の学習定着度を確認できます。生徒との信頼関係もうまく構築出来ているようです。
行事やイベントは、私立ならではの多彩なプログラムが用意されています。校外学習やカナダへの修学旅行、マラソン大会や合唱コンクールなどもあり盛りだくさん。惜しむらくは、文化祭や体育祭の自由度が公立ほど高くはないことでしょうか。髪を染めたりするのは禁止ですし、文化祭の出し物もトラブルが起きそうなもの(お化け屋敷とか)は即却下されてしまいます。
校則の厳しさは有名です。特に身だしなみについては厳格で、あのスカートの丈の長さは、おしゃれ女子高生に耐えられるのか、と無用な心配をしてしまいます。一昨年までは、スマホ・携帯電話が校内のみならず通学中の電車内でも禁止でした。昨年からは、校内と六会日大駅から学校までの間を除き、使用は許されるようになりました。電車に乗った瞬間にみんな一斉にスマホ見るんでしょうね(笑)。頭髪検査もあります。
また、大学附属校としての日大藤沢ですが、日本大学へ進学するのは、およそ50%。それ以外は他大を受験することになります。ここ数年、他大学進学率が大幅に上昇しており、附属校であることよりも進学校の色合いが今後は強くなっていくことが予想されます。生徒のニーズに応えるクラス編成や体制により、他大学合格の力を備えることができるようになったと聞いています。当然といえば当然ですが、世間を賑わせている大学法人と日大藤沢高に通っている生徒、教えている先生には一切関係ありません。大学が気にくわないなら受験して外に出ればいいというだけのことです。
数字としての進学実績は未だ物足りないと言えます。一概には言えませんが、公表されているデータだけで比較すると、2018年度卒業生(現役生)の実績としては、卒業生約400名に対して早稲田3名、慶應5名、上智3名となっています。2017年度と比べても大学定員厳格化の影響があるにしても「激減」と言える結果です。併願となることが多い鎌倉高校や市立金沢と比べても割合的に物足りない結果といえるでしょう。県立のトップ校である湘南や翠嵐などは早稲田100名前後が基本ですし、私立併願で比較される山手学院ともまだまだ差があります。やはり進学指導に対する実績や経験の差は如実に出ているかな、と感じる部分です。
2018年度現役進学数 | 卒業生数 | 早稲田 | 慶應 | 上智 | 明治 |
日大藤沢 | 397 | 3 | 5 | 3 | 20 |
山手学院 | 500 | 70 | 36 | 31 | 144 |
湘南 | 360 | 137 | 64 | 25 | 110 |
翠嵐 | 418 | 84 | 69 | 16 | 124 |
鎌倉 | 320 | 25 | 10 | 9 | 44 |
市立金沢 | 315 | 23 | 3 | 8 | 38 |
しかしながら、現在通っている生徒の話を聞くにつけ、確実にレベルは上がってきていると感じています。学校の方針や体制は間違いなく良い方に向かっており、日大藤沢の唯一の弱点とも言える進学実績についても今後は改善され、素晴らしい結果を残してくれるようになるのではないかと期待が高まります。
規律ある学校生活を送りつつ、充実した設備と頼りになる先生たちの中で、落ち着いた高校生活を送りたい生徒には、日大藤沢をおすすめします。
内申目標点(2019年度)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
まず、最初にお伝えしておきたいことは親世代の平塚学園とは180度違う学校だということ。あまり良くないイメージをお持ちかもしれませんが、厳しい校則と熱心な先生たちの学習指導により「勉強中心」の学校に生まれ変わっています。「そうは言っても」ということもありません。真面目すぎて生徒から不満が出るくらいです。先入観をお持ちの方は、まずそれを取り払ってからお読みいただけると幸いです。
くどいですが、勉強中心。一例を挙げるなら、特進コースの高3理系クラスは朝7:40~18:30まで1日8時間授業を行います。指導力があり熱心な先生たちの元で、生徒たちも学習に真剣に取り組んでいきます。特進コースでは毎回のように小テストがあり、それをこなしていくだけでかなりの力がつきます。集中出来る環境を作り上げられていて意識の高い周囲のメンバーや先輩たちにつられて、勉強への姿勢が身についていくことが多いようです。
特進コースでは、部活動加入が難しい状況です。進学コースでも半々くらい。進学コースでは補習の有無を選択することができるため、部活動に打ち込みたい人は補習なしを選ぶことができます。文理コースでは、さすがに多くの人が部活動に加入しますが、指定校推薦を取るために学校の成績を取らなければならず、試験勉強には真面目に取り組みます。
特進コースでは指定校推薦枠をほぼ使用しません。一般受験が中心で、文系特進・理系特進・国公立特進とクラスを分けて、入試科目を絞りながら授業をしていきます。1、2年生で三年分のカリキュラムを終え、3年ではMARCHレベルの大学の過去問をひたすら解き続ける、さながら塾や予備校のような1年になります。
先生方のサポート体制は十分ですが、「塾いらず」ということはどうやらないようです。早慶上智や国公立などの難関大学を目指す生徒に対しては、先生から塾通いを進められるそうです。とは言っても、予備校にフルコースで通う必要はないため、単科であったり、季節講習であったりと比較的塾費用は抑えられると思います。文理コースの生徒は、指定校とAO入試で大学進学を決めていくことが多いようです。充分な指定校推薦枠があり、大学進学率が高いのも平塚学園の特徴です。
先生の評判は良い方だと思います。自分から質問をしに行ったり、問題をもらいに行ったりすると、快く対応してくれますし、遅くまで残って質問や補習に付き合ってくれたりします。他校の生徒が羨むようなレベルの先生もいる一方で、一部には怠慢な先生もいるようです。どこの学校でもそうだとは思いますが(笑)。
また、私立としては安価な授業料も魅力です。例えば、よく比較される横須賀学院で初年度納入金がおよそ116万円。湘南工科大付属では92万円。平塚学園は66万円です。神奈川県内でも断トツでお値打ちな私立です。国と県からの就学支援として学費補助金が出るようになりましたので、平塚学園は設備費等を合わせても学費の合計が年間およそ20万円程度まで抑えられるようになっています。
部活動も野球部、サッカー部を中心に陸上部や体操部などの個人種目でも全国レベルの生徒がいます。全校をあげて繰り出す応援は、非常に盛り上がりますし、日頃勉強が中心の特進コースも一体となって声援を送っています。
入学前の学校見学や学校説明会では、主に「新館」が使われますが、校舎設備の中で新館と呼ばれる部分はおよそ2割程度。平塚学園は設備も綺麗という誤ったイメージを持って入ってくる生徒がいるようで、「新館詐欺」と生徒間で言われることもあるそうです。
勉強を中心において真面目な三年間を送りたい人、学校に学びをなるべくリードしてもらいたい人、部活動をやりながら指定校推薦をとって大学に進みたい人には、平塚学園はおすすめです。
内申目標点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
人口減少が目立つ三浦半島においては少子化も加速しており、私立高校は生存競争にさらされていると言っても過言ではありません。そんな中、確かな価値を提供し、学校の質を少しずつ上げることに成功しているのが横須賀学院です。
平塚学園同様、横須賀学院もかつてのイメージで語ることの出来ない学校に変貌しています。生徒はみな落ち着いていて、教職員のチームワークも良く、落ち着いた学校生活が送れる空間がそこにはあります。「横須賀」自体も以前とは比べものにならないくらい治安も安定し、良い街に変わっています。平学同様イメージで判断すると損をする学校です。2019年度からは全コースで完全週6日制に変更されます。これまで選抜コースだけにあった土曜特講を全コースに適用するイメージです。
選抜コースと一般コース、あとは中高一貫コースがあり、それぞれにまるで違う学校へ通っているかのような趣の違いがあります。選抜コースでは、基本的にMARCH以上の難関大学への進学を目指す勉強中心のカリキュラム。部活動の加入も出来ますが、授業自体のレベルが高く、課題も含めて学校側の要求も大きいため、それに応えていくための努力はしていかなければなりません。
また、青山学院との教育提携について下火になったというような噂がありますが、実際には進展しています。発表になってから今年で10年。指定校推薦や提携校推薦の枠は広がっていて2017年は17名、2018年は18名で2019年は20名超の枠が用意されています。青山学院大学で新規開設されるコミュニティ人間科学部の推薦枠は6名分もらえているようで、他の私立校と比べても圧倒的に優遇されていると言えます。この点は横須賀学院の大きな魅力ですね。
推薦については中学から入学している中高一貫クラスが優先となっていますが、一貫クラスの上位層は青学を受験せず、下位層は基準の評定平均に届かないため、毎年一貫クラスからだけでは枠が埋まりません。選抜・一般クラスにも指定校推薦枠が数名分は回ってくることになります。よくある「特進クラスは指定校推薦を使わせない」ということも横須賀学院ではありません。一貫クラスを除く全員に平等に、選抜クラスからも希望する学部で枠がある時は遠慮なく使える状況です。
また、2018年四月からは青山学院高等部の生徒、青山学院横浜英和の生徒、横須賀学院の生徒が合同で青山学院大学主催の大学入門講座に参加するようになりました。同系列の三校での連携も強まっており、青山学院への進学者はこれからも増えていきそうですね。
一般コースではこれまで部活動の加入が義務となっていましたが、2019年度から全コースとも任意加入となりました。あくまで学習を重視するためということですが、生徒の自由度が増したのでポジティブな変更だと思います。勉強面では、選抜の先生と一般の先生は基本的には分けられていて、カリキュラムや課題の量も全然違います。
任意加入となった部活動ですが、スポーツ推薦などで生徒を集めることをしていないので、強豪と呼ばれるような部活動は少なく、部の数も決して多くはありません。その中で柔道部は、毎年かなり結果を残していて有名ですね。グラウンドや部活動用のスペースは広くないので、全力で部活動を楽しみたいという人には少し不向きかもしれません。部活動加入率は全コース累計でおよそ80%程度です。
先生方は親切で丁寧。授業自体の質は、平均的に見ると高いと通学している生徒は言います。もちろん、「当たり外れ」はありますが、選抜コースの先生は教え方も上手だと感じている生徒が多いようです。
キリスト教の学校ですが、プロテスタント系ということもあり、基本的には自由でのびのびとした教育が行われます。「敬神愛人」を掲げており、他者を尊重する優しい理念で、いじめなど人間関係の問題を聞くことも少ないように思います。やはり毎朝の礼拝による啓蒙は生徒一人一人の心に届いているのかな、と感じます。
気にされる方も多いので記しておくと、キリスト教信仰がない方でもほとんど抵抗なく通うことができます。決して「コテコテ」のキリスト教学校ということもなく、月曜から木曜までの毎朝の礼拝は放送ですし、週に1度の聖書の授業と年に数回のチャペルでの特別礼拝があるというのが、キリスト教に触れる機会です。もちろん、敬虔なクリスチャンにとってみれば、クラスには宗教委員というものもあり、素晴らしいチャペルとプロテスタントの伝統校である横須賀学院に通うことは、意義があることだと思います。世界中で受け入れられているキリスト教のグローバルな教えについて学んでいくことは、これからの世界を生き抜いていく上でも非常に大切なことなのではないかと個人的にも思います。
高校校舎については、だいぶ古びてきていて綺麗さを感じることはありません。しかしながら専門の業者を入れているため清潔に保たれていて生徒からも大きな不満は出ていません。トイレが2016年に全てリニューアルされて美しく、それだけでも随分と印象が変わりますね。トイレの改装については色やデザインなども含めて生徒会主導で行ったそうです。生徒主体の教育がうまくいっている証かな、と思います。音楽室も改装されて次は待望の食堂の改築に着手するとかしないとか。数年内には実現しそうです。
図書館の蔵書は32,000冊と決して多くはありませんし広さもありませんが、図書館司書の方が2名常駐されていて、本の並べ方やコンセプトがはっきりしていて、良いメディアルームとなっています。自習室やチューターズルームというものもあり、自学自習する環境は整っています。OBOGや青山学院大学の学生がチューターとして放課後は常駐してくれていて、質問や相談することが出来ます。先生以外の年が近い相談相手がいることは、不安定な高校生のメンタルにもきっとプラスに働くはずです。
行事については、青春のすべてをかけたような公立高校の盛り上がりとは比べられませんが、生徒たちは楽しんで取り組んでいるようです。髪を派手に染めるのももちろん禁じられていますし、公立の異常な一体感と特別感を私立高校で出すことはなかなか難しいですね。
夏休みを利用してオーストラリア語学研修(二週間)も行われています。また、理数教育を強化するために、科学教育センターという組織を設立し大学等の研究機関とのやりとりを増やしています。サイエンスセミナーやプロカレッジプログラムと呼ばれ、大学教授の講義を聞く機会なども月に一度程度あり、実際に研究機関を訪れて実習や施設見学を行うなど充実してきました。近隣の横須賀高校同様、SSHを目指しているのかもしれません。
私立高校としては、比較的校則が緩めなのも特徴です。髪を染めるのもメイクをするのも原則禁止ですが、先生によっては黙認されるようです。スマホ・携帯電話の持ち込みも問題ありません。アルバイトも申請制となっていますが、特に申請せずにやっている人が多いとのこと。校則として定められているものはあるものの、全体としては自主性を重んじていて、必要以上に厳しく監視をすることはありません。
ここ数年落ち着いた雰囲気と学力レベルの向上、生徒の主体性が増している遠因は、県立横須賀高校と市立金沢高校の高い人気です。この二つの公立高校の併願として、横須賀学院の選抜コースを選択する生徒が多いのですが、県立横須賀と市立金沢の倍率が上がれば、不合格者も増え、不合格だった高レベルの生徒たちが横須賀学院に入学していきます。
選抜コースの充実度は、先生方も口を揃えて話されます。やや副次的な要素とはいえ、学校の雰囲気が前向きに変わっていくのは良いことです。入学者の平均内申点(中学時)や偏差値は、模擬試験会社のデータからもここ数年上昇しているということが分かります。2018年度入学者がやや減ったのは横須賀と市立金沢の倍率が低かったことが挙げられます。公立の倍率の影響がダイレクトに出ている学校ですね。
「バランスが良い私立」という印象を受けており、勉強も部活動も行事もその他の課外活動なども、楽しみながら三年間を過ごしたい人には横須賀学院がおすすめです。
内申目標点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
確かな人気で生徒を集めたことで、学校基盤が安定し、設備や学校活動に対する投資が増え始め、少しずつ学校が変わっている印象をうける横浜隼人高校。1977年に設立された学校で神奈川県の私学としてはまだ「若い」学校ではありますが、「強烈な男子校」「甲子園に出ている学校」というイメージは過去のもの。取り組みが注目される国際語科だけでなく、理系の学習や進学でも成果を出し始めています。
普通科には特別選抜、特進、進学の三つのコースがあり、国際語科も合わせて四つのコースが準備されています。中学時の内申点でコース選択をすることになりますが、自分に合ったコースを選ぶことができるのが隼人高校の一つの良さです。週三回程度行われる早朝テストは、マークシート方式で点数が昼休みに掲示発表されるというものです。頑張っている生徒の励みや怠けている生徒の刺激にはなりそうですし、内容も実力と日々の定着度を確認する上で重要なものとなっています。
国公立大学への合格を果たすためのカリキュラムと公言している特別選抜コースは、学内でもエース級の教員が各教科の指導にあたり、かなり力を入れて学力を伸ばす素地を固めています。コース間の移動は、2、3学年に進級する際に行われています。特選は中学校の内申トップクラスの生徒を集めてはいますが、未だ東大・京大への合格は実現していません。数年内に実現できるでしょうか。2018年度入試では東工大2名をはじめ国公立への合格で成果を出し始めており、今後に期待ができます。
MARCH以上への合格を目標とする特進コースは、特選コース同様、習熟度別クラス編成となっており、切磋琢磨しながら学力を伸ばすことができるようです。進学コースは、部活動やその他の活動と勉強の両立を目指すことになります。私立だから予備校に行かずとも大学進学を果たせるようであってほしいですが、隼人高校生で上位の大学進学を目指す人のほとんどは予備校に通っています。
また、隼人高校進学者からは先生の当たり外れが大きいという声を良く聞きます。親身になって相談に乗ってくれる先生から、生徒からの訴えにほとんど耳を貸さない先生まで、そしてそれは授業の質の上でも感じるとのこと。特選コースは学内でも「良い先生」が担当しますが、その割合はどうやら特進、進学と下がっていくようです。進学コースは人数も大変多く、先生の目がどこまで行き届くかやや不安な面もあります。
一方、国際語科はカリキュラムも雰囲気も他のコースとは一線を画しており、英語および外国語にこだわった授業編成です。理数系科目は、一年次より最低限しか履修せず、二年次からはほぼ姿を消します。一年生では週に英語が8コマ。かなり思い切った授業構成ですが、マンモス私立ならではの特色あるコースです。もとより英語に高い興味を持っている人しか入学してこないため、他のコースよりも生徒の満足度が高いように見受けられます。雰囲気も校則も「国際」であるがゆえに少々緩いようです。同じ校内で校則の厳しさに差があるのは不思議ですね。
国際語科は、昨今のグローバルブームに乗って注目度が上昇しています。特筆すべきは、推薦・AO入試の合格率の高さ(現役生の約70%)です。必須となっている海外研修やネイティブによる毎週の授業、短期・長期留学などによって培われる発信力や表現力が、功を奏しているのではないかと思います。海外大学への進学者も出ていてなかなか面白いコースになっています。2020年の大学入試改革に向けても有利かもしれませんね。鵠沼高校英語科と比較する方も多いのではないでしょうか。横浜国際高校や神奈川総合(国際文化)との併願で相性が良さそうです。
進学を重視すると謳っているからか、公立や他の私立と比較して、行事の数が少ないのも特徴です。体育祭はありませんし、文化祭も規制が厳しく、「弾ける」ことは難しいようです。(体育祭に準ずるスポーツフェスティバルはあります)
校則が厳しく、やたらと多いという声も聞きます。私立は、公立よりも校則が厳しいですが、時代に合っていない校則も多く存在するように思います。手提げ鞄は全て禁止で指定の鞄しか許可されていなかったり、SNS(twitter、インスタ)などで隼人高校に関わることを発信することを全面的に禁止していたりするという謎の校則も。服装や頭髪に関する校則がかなり厳しめですね。おそらくは以前の荒れていた頃の幻影があり、厳しく管理することで学校全体の秩序を保とうとしているのではないでしょうか。
施設面では、本館に接続する形で2015年に1号館が新設されています。新館はもちろん素晴らしく、設備面でも整い、私立らしさが出てきました。本館は窓が多く、吹き抜けもあるため、明るくなりそうなものですが、壁の色が暗く、全体的に暗く経過年数よりも古く感じます。三つの体育館、二つのグラウンド、室内での練習施設など、運動をするには整った環境です。
希望が丘駅からの徒歩30分弱のアクセスは非常に不満が多く、隼人高校最大の泣き所でしたが、近年校門横乗り入れのバスが開通し、解消されました。ただし、始業間際のバスは満車で乗れないこともあるため、注意が必要です。
特選・特進コースで厳しく自分を追い込みながら学習をしたい方、国際語科で英語を軸にグローバルな視野を養って、推薦で大学合格を狙いたい方には横浜隼人はおすすめです。
内申目標点(2019年度)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
辻堂駅から徒歩20分海側へ歩いたところにある、大学に隣接した美しいキャンパスの学校です。海辺の学校らしく、自由で活発、生徒たちも生き生きと学校生活を送っているように見受けられます。
1700名程度が在学するマンモス校ですが、コース設定が多岐にわたっており、自分にあったコースで学習を進めていくことができます。MARCH以上の私立や国公立を目指すセレクトクラスでは、カリキュラムも受験に対応するものとなっており、二年次以降は文系、理系に分けて学習を進めます。各コースは、学年が上がる際に主に成績で移動することが可能です。土曜講座や放課後学習などサポート体制を充実させながら、基礎学習の徹底と大学入試に向けた演習の二種類を展開しています。
湘南工科大「附属」と銘打っていますが、実際に湘南工科大に進むのは「技術コース」の生徒たちで、ほとんどの生徒は他大学および専門学校に進むことになります。全体のおよそ75%が四年制大学へ進学。残りが専門学校、短大、浪人を選択します。
取り組みは改善されていますが、ここ数年の進学実績はあまり良いとは言えません。実績として出てきている数値の中にはスポーツ推薦での合格者が含まれているため、鵜呑みにしないよう注意が必要です。MARCHの合格者数には、スポーツ推薦と指定校推薦での合格者が含まれており、一般受験で合格する人は一部のトップクラスの人ということになります。現状ではセレクトクラスのトップ数人が早稲田および国公立、上位がMARCH、セレクト下位だと日東駒専への合格となっているようです。
合格実績の大学名を挙げると神奈川大学、東海大学、関東学院大学の合計でおよそ150名。日東駒専に100名。GMARCHに50名。早慶10名。という割合です。2018年春の進学実績は躍進と言えるでしょう。早稲田・慶應に5名ずつ(早稲田はうち4名が体育コースからの推薦です)。また、法政大学に17名合格しています。法政の17名は体育コースを除く実績です。
セレクト、アドバンス、スタンダードでの男女比はほぼ1:1となっています。全校生徒で見ると男女比2:1程度ですが、技術コース及び体育コースは、ほぼ男子しかいないため、このような比率になります。
部活動は活発です。水泳部や卓球部、サッカー部はかなりの強豪。水泳やテニスでは全国1位の選手を輩出することもあります。強すぎる部活動は弊害もあり、初心者や純粋に楽しみたい人が入りにくいという側面があります。「帰宅部」を選んでいる人も多くいます。
私立としては緩めの校則で、生徒たちは自由で青春を謳歌しているように見えます。もちろん自由には責任が伴いますので、自分を律しながら生活を送っていかないと、楽しみすぎている人たちに流されて、やるべきことや将来を見据えることができなくなってしまいます。周囲に流されやすい人は注意が必要かもしれません。
校舎は綺麗で設備も充実しています。屋内プールもあります。隣接する大学校舎内の購買等も利用することができるのも良いですね。完全人工芝のグラウンドや掃除が行き届いた校舎も好印象です。
ここ数年応募者が急増しているように見えますが、これは数年前に導入した書類選考(併願資格を満たしていればペーパーテストを受けずに書類のみで合格が取れる制度)の影響です。公立入試直前に半日かけて(必ず合格する)入試を受けるという、ある意味無駄な時間を省くことができるため人気がある制度です。鵠沼高校や平塚学園と天秤にかけていた層が流れ込んできているといえるでしょう。ただ、書類選考があるから、という理由で安易に併願私立を選ぶのは考えものです。
マンモス校の中で自分に合った環境と友達を探したい人や、私立でも自由な雰囲気の中で過ごしたい人、海の近くの学校に通いたい人には湘南工科大附属はおすすめです。
内申目標点(2019年度入試)
おすすめポイント
マイナスポイント
主観を交えた学校紹介
藤沢駅から徒歩15分。かつては女子校でしたが、2004年に共学化し、今日に至る鵠沼高校。箏曲部があったり、女子生徒が多かったりと少しの名残を残すものの、落ち着いた雰囲気や理数教育に力を入れたことで、男子が通う学校としても充実してきました。
鵠沼高校を一言で言い表すならアットホームな私立です。ここまで挙げた9校のどこよりも先生と生徒の距離が近いといえるでしょう。規模としても大きくはなくこじんまりとしており、落ち着いた雰囲気の中で自分がやりたいことを探せる三年間となっている人が多いようです。生徒も派手さはなく、真面目な生徒が多いように見受けられます。
進学実績については、特筆すべき点はありませんが、以前よりも少し良くなっているように思います。英語コースと理数コースの取り組みが功を奏しており、良い成果を残し始めているのではないでしょうか。2018年度は国公立の合格者が増え、早慶上智の合格者数が昨年度の1名から6名に増えました。任意の夏期講習や朝補習などもあり、自分から取り組める人には良い環境です。進路相談や先輩の体験談を聞く機会なども多数あり、生徒たちは進学についての意識を高く保てます。ただ、上へ上へと競争を煽る学校ではありませんし、上位を目指そうと闘志を燃やしている生徒も多くはないようです。また、指定校推薦の枠が少ないので、推薦で大学進学を狙おうと考えている方は注意が必要です。
先生方も真面目で「いい人」が多く、相談すれば親身になって協力してくれます。熱さや厳しさに欠けるという声もありますが、これも学校の雰囲気なのだと思います。授業も全般的に分かりやすく質も高いようです。GTECの校内実施やスタディサプリ到達度テストなど学習支援やモチベーションを上げるための取り組みも多く、生徒自身の頑張りを後押しします。また、ベネッセとソフトバンクが提供しているclassiの導入も決まり、大学入試改革後のAO・推薦入試対策としてポートフォリオを作っていくという先を見た変革も進んでいます。
行事やイベントについては、数多くラインナップされて、充実しています。著名人の講演を聞く機会などもありますし、芸術鑑賞会やテーブルマナー講習など、他校ではあまりないような機会も設けられています。研修旅行はオーストラリアでのホームステイとなっています。文化祭も盛り上がりますが、校舎が狭いので今ひとつ迫力に欠けるという声もちらほら聞きます。2018年度からは理数コースで、外部研修の機会を増やすと発表しています。これまでも江ノ島水族館のバックヤードで1日海の生物の生態等について学ぶ機会はありましたが、北海道への宿泊研修が加わるとのことです。英語コース、理数コースをさらに充実させていくという話を伺っています。
マーチングバンドやバドミントン、ダンス部は強豪で全国レベルです。文理コースは部活動加入が必須ですが、英語・理数コースは任意となります。箏曲部など珍しい部活動もあり、茶室があるのも特徴ですね。
私立としては物足りないサイズ感の校舎は、古さが目立ってきました。そろそろ改修や改築に着手しないと、受験生から敬遠されることになりかねません。校庭の狭さはもはやどうにもなりませんが、自習室の机の数が少なかったり、トイレが汚かったり、図書室が小さく蔵書も今ひとつだったりと、他の私立よりも明らかに施設設備面では劣っています。その分(かどうかは分かりませんが)、平塚学園に次いで学費は安くなっています。
アットホームな環境で、生徒同士・先生同士と近い距離感を保ちながら、自分のやりたいことを見つけていく三年間を過ごしたい方には鵠沼高校はおすすめです。
以上、長々と書いてきましたが、今回は書類選考を含む「併願確約校」のみについて触れました。推薦入試になるとまた別の基準だったり、他の高校の名前が上がってきたりします。今年は第二弾も計画しておりますので、今回ご紹介した10校に加えて何校か近々記事にします。
ここまで書いてきて言うのも何ですが、この記事はあくまで皆さんに併願校選びのきっかけとしての「視点」を与えるものです。実際はどうなのか、必ず目で見て確かめてください。在校生や卒業生に聞いて知ってください。学校に質問して自分が気になるポイントを教えてもらってください。
しっかりと情報を集めて、納得の上で決めてほしいと思います。輝かしい青春の高校三年間を過ごすことになるかもしれない学校、就学支援金があるとは言え、親は三年間で100万円以上を投資することになるかもしれない学校です。「消去法」や「何となく」や「どこでもいいや」で決めていいはずがありません。
そして、最後に申し上げておきたいことは、私立高校には建学の精神と理念があるということです。よく読みよく理解して「自分に合っている」と感じたなら、それは公立に行くことよりも幸せなことかもしれません。公立志望が圧倒的優勢の神奈川県において、ともすれば私立に行くことは「負け」と捉える人が相当数いますが、それは完全にお門違いです。公立には公立の良さがありますが、私立には私立にしかできないことがたくさんあります。
公立が不合格で併願私立に行くことになっても、最終的には私立に行って良かったという話もかなり数多く聞きます。通うことになった学校を100%楽しみ、この場所で自分を伸ばしていこう、自分で自分を輝かせる方法を探していこうという意識さえ持てれば、私立は非常に価値が高い学校です。
昨年も書きましたが、当記事の内容について他塾の先生方や学校の先生方も大いに活用していただいて結構です。ただ、必ず生徒自身や保護者の方の選択を促す形で使って下さい。また、昨年度のこの記事は「神奈川 併願」で検索すると2番目か3番目に来ます。生徒や保護者もおそらく見ていると思われますので「先生、あのブログの内容コピペだな」とバレないようにしてくださいね(笑)。
長々と最後までお読みいただきありがとうございます。受験生の皆さま、保護者の皆さまにとって、15の春が良い春になりますよう願っています。前を向いて選択した受験となれば、結果如何に依らず、その先に広がる三年間は輝かしいものとなるはずです。良い受験となることを応援しています。
第二弾「注目併願5校」の記事はこちら
私立併願についてのもっとも良いと思われる学校案内はこちら
公立も含めたオススメの学校案内はこちら
私学の学費支援制度について紹介されている記事はこちら
また、私学の学費支援制度については2018年度から大幅に拡充されています。詳しくは小田原の慧真館岸本先生が大変わかりやすくまとめてくれています。是非ご参照ください。