鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2022.10.12
女子校よりも共学。神奈川県では一部の学校を除いて“女子校不人気”が続いている。鎌倉女学院もその流れに逆らえず、受験者は一時期と比べて100名前後減った。活況を呈する中学受験において男女別学、とりわけ女子校の良さを改めて問うタイミングがきていると言えるだろう。その中で120年の歴史を持つ超伝統校である鎌倉女学院が、時代の波に揉まれながらも守り続けてきたもの、現在の入試や募集について考えていること、そしてこれから進んでいく方向性について、錦校長先生と入試広報委員長の石井教諭に話をうかがった。
目次
東京の開成中学校、逗子開成中学校を創立した田邊新之助によって1904年に創立された鎌倉女学院。一学年の生徒数約160名のアットホームな空気感の中で、生徒たちは六年間を過ごします。丁寧にキャリアプランを立て、卒業後の進路を考えていくキャリア教育も鎌女の特長で、「コミュニティカブな英語教育」は確かな英語力を育みます。
弊塾を卒業した、たくさんの生徒たちが鎌倉女学院に通っています。その生徒たちから聞こえてくるのは、「楽しい」「落ち着く」という声。充実感あふれるその表情に嘘は感じられません。
鎌倉女学院が大切にしていること、校内を包む雰囲気は、数年前と変わらない。だからこそ、生徒たちは今も昔も“鎌女”で過ごす時間を大切に思い、大学生や社会人になっても“巣に帰るように”学校を訪れられるのだと思います。
鎌女の魅力はどこにあるか。
そして、受験生減少局面である今をどう捉えていらっしゃるか。
錦校長先生と広報委員長の石井先生のインタビューをお届けします。
──今春(2022年)の入学試験選抜についてお聞かせください。
錦校長:奇をてらわず、4教科を通してベーシックな学力が定着しているかが分かる問題を出題しています。それはこれからも大きく変わることがない部分です。
小学校で身につけるべき基礎的な力、土台となる力がしっかりしている生徒と、これからも一緒に学んでいきたいと思っています。
「4教科バランスよく、好き嫌いなく勉強する」という姿勢で学ぶと、入学後に得られるものも大きくなると考えています。
──科目ごとの試験問題の配点も傾斜なく全て100点満点というのは、バランスよく基礎を、という考えのもとだということですね。難しい問題への対応力、応用力を殊更に磨き続けるというよりも、やれることをきちんと、丁寧にやっていくことが大事だと受け止めています。
錦校長:小学生なので、2月1日から毎日のように受験するということは、心理的な影響も大きく出てしまいます。
本校の場合は、たとえ力が発揮できなかった場合でも、一次と二次の両方受けていただければ、どちらかで実力を発揮できることがあります。
本校への入学を強く希望していただいている方は、二回受けていただくとチャンスが活かしやすいのではないでしょうか。
──二回受験をすることのメリット、選抜方法などについてもう少し教えてください。
錦校長:手続きを締め切った際に、欠員が出そうな場合は繰り上げ合格を出します。その場合は、一次二次両方受験された方が対象となります。
総合点で見るというよりも、科目ごとに一次二次のどちらかで良い点が取れているかを勘案しながら、合否を決めます。
作問としては、両日程とも同じレベルで作成しているつもりですので、どちらかで良い点が取れていれば、そこを見るようにしています。
──次年度の入学者選抜も特に変更点はありませんか。
錦校長:例年通りです。
──他校の傾向として、午前入試は当日の合格発表が増えていますが、発表が翌日なのは慎重を期してということなのでしょうか。
錦校長:鎌倉女学院では国語・算数だけに傾斜するわけではなく、4教科100点満点で出題しています。
問題数が少ないとヤマが当たったりすることもあるので、どの教科も満遍なく、いろんな分野を偏りなく出題しているため、問題数も多くなっています。きちんと採点をするとなると、どうしても時間が必要です。これ以上早くというのは難しいと思います。
ある程度ゆとりを持って採点をして、多少アクシデントがあっても対応できるように慎重に発表したいと思っています。想定しない解答が出てきた場合の採点基準など、途中で調整を図ることもよくあります。
石井先生:即日発表にしても21時より前には出せないと思います。日程の関係で即日発表の時もありましたが、振り返ると少しリスキーでしたね。
また、今はオンラインで発表するので、機器や通信トラブルもあり得ます。一度発表したら、もう取り返しがつかなくなりますので、細心の注意を払っています。
発表時間が遅れると信頼も揺らいでしまいますので、今後も確実性を大事にしていきます。
──鎌倉女学院の良さとして、「学校が楽しい」「友人や先輩たちと触れ合っていくところが楽しい」ということが挙げられると思うのですが、今後もその部分は期待しても良いのでしょうか。
錦校長:コロナ前の人間関係にどこまで戻っているか、という部分はまだかなと思っています。学年を越えた先輩後輩の関係というところが、以前ほどは作れていないかなと感じています。でも、戻りつつあるので、時間の問題とは思っていますが。
──どのようなタイプの生徒が鎌倉女学院を楽しんでいるとお見受けしていますか。
錦校長:「みんな」、ですね笑
石井先生:変な意味での階層や順番とかがなくて、横一列で並んでいるなと感じています。個性や多彩な趣味がむしろリスペクトされる風潮もあって、それぞれが生き生きしているのは、本当に本校の良さだと思います。
どんなお嬢さんでも居場所があり、楽しめることがある学校だと胸を張れます。ただ、競争するのが大好き、勝負が大好きという子だと達成感は少し薄いかもしれません。
──卒業生にも愛される学校だと感じています。
錦校長:そうですね。大学に行って初めて鎌女でやっていたことの意味が分かった、と言ってくれる生徒もたくさんいます。
レポートの書き方や英語の能力などが大学で非常に役立つということを、卒業生が在校生に話してくれることもあって、それは教員が伝えるよりも説得力がありますね。
石井先生:大学に行ってから留学に行く生徒も非常に多くいます。学び続けて吸収できるものを吸収していこう、という前向きな姿を後輩たちに見せにきてくれるのは、とても嬉しいですね。
──新型コロナウイルス流行以降、激動の二年間だったかと思うのですが、学校に起きた変化について教えてください。
錦校長:学校に自由に来て学ぶことができない状況でしたが、学びを止めるわけにはいかないので、感染拡大防止に気をつけながら、学びを継続するための取り組みをしてきました。ICTを利用した授業の実践が始まったのは、大きな変化です。
ただ、ハード面と通信環境において、全校生徒に一斉となるとさまざまな課題がありましので、まずは紙ベースでのやり取りからスタートして、徐々に各ご家庭での通信環境を整えていただくようにしました。
段階的にオンラインホームルーム等を実施していきましたが、それぞれの端末がバラバラだとうまくいかないこともあるので、半年ほど前から予告して年度が変わるタイミングで、高3以外の全生徒にChromebook端末を購入していただきました。
その後は、思っていた以上にスムーズに導入ができました。効果も認められましたし、デメリットも非常に少なかったと思います。生徒も保護者もほぼ混乱がなかったと認識しています。
石井先生:初動は慎重でしたが、スタートしてからは生徒を誰一人取り残すことなく、全員がきちんとオンライン授業に参加できる状況を作れました。ご家庭のご協力もあって、新しい取り組みも良い形で進められたと感じています。
錦校長:試行錯誤の時期も必要だったかなと思っています。対面を補う形で段階的にオンラインを利用していくことができたので、大きな問題もありませんでした。
各教科の教員からも「オンラインだから出来た」、という話がよく出てきます。例えば、英語科ではオンラインでのリーディングやライティングに効果的に取り組むことが出来ています。
──中学受験全体の総数は10年前と現在は大きく変わっていません。10年前2012年には一次試験に500名以上の受験生がいましたが、2022年は420名と100名ほど減少しています。日能研のR4偏差値でも二次試験は10年前偏差値58だったのが、最新版では51まで下がっています。このあたりについての要因や、お考えのことはございますか。
錦校長:湘南地区の中学受験層が減ったことは大きいと思います。また、横浜南部からの受験生が非常に多かったのですが、その地区の高齢化によって受験生となる子どもの数が減ってしまったことも影響しています。
現在受験者が多いのは、東京や横浜の北の方ですね。
他には、男女共学の学校が増えたことも要因です。男女別学よりも共学の方に目が向きやすくなっているのかもしれません。
もちろん、本校の広報体制に開拓の余地があることは重々承知しておりますので、常に改善を図っていきたいとは考えています。
女子校だけを受験する、という受験生も減ってきているという実感もあります。
──現在抱えている課題、解決していきたいと考えていることなどはありますか。
錦校長:現状に満足せずに、先を見ながら特色ある教育を実践していきたいと思っています。生徒はみんな真面目で真摯な態度で学習に取り組めているので、さらに今後は学んだことから新しい価値を見出して創造していくことを課題としています。
「学校教育の場でどういう仕掛けをしていくか」という課題意識は常に持っています。かまくら女学院で学んだ生徒が、6年後、そして将来「鎌倉女学院で学んで良かった」と感じてくれる教育をこれからも目指していきたいと思います。
──インタビューは以上です。ありがとうございました。
鎌倉女学院は、弊塾から徒歩二分。
毎日、目にする鎌倉女学院の生徒たちはマスク越しでも分かる充実した表情で、規律を保ちながら駅までの道を歩いています。
きちんと、焦らずに。
情報過多な時代において、鎌倉女学院の“フットワークの重さ”は時代遅れに映るのかもしれません。
でも、鎌倉女学院がずっと大切にしていることは、時代を超えた普遍性ある確かなものです。
周囲の評判やweb上では分からない鎌女の良さは、訪れてこそ、在校生に接してこそ分かります。気になった方は、ぜひ学校をご訪問ください。
鎌倉で、お待ちしています。