鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2017.11.22
サイエンスフロンティア1.44倍、金沢1.47倍、桜丘1.47倍、戸塚1.35倍…この数字は2017年度入試の横浜市立高校の入試倍率です。ここ数年、横浜市立高校の人気上昇が止まりません。2017年度の公立高校全体倍率平均が1.2倍ですから、各校ともかなりの高倍率であることが解ります。今回は、その理由はどこにあるのかについて、在校している当塾卒業生への取材や塾関係者からの情報によって紐解いていきます。偏差値が高いからいい学校というわけではありません。「どこで、何をするか」をよく考えて受験に臨んでいただきたいと思います。楽しく、充実した3年間を過ごすためのイメージが少しでも湧くように、校風や学校生活、勉強面などについて学校説明会では分からない部分を含めてお伝えし、事前の情報収集の一助となればと思います。
最終倍率 | 2017年度 | 2016年度 | 2015年度 |
---|---|---|---|
市立金沢 | 1.47 | 1.43 | 1.43 |
市立桜丘 | 1.47 | 1.48 | 1.49 |
YSFH | 1.44 | 1.46 | 1.61 |
市立戸塚 | 1.35 | 1.40 | 1.44 |
市立南 | 1.26 | 1.00 | 1.18 |
横浜市立高校には、サイエンスフロンティア、金沢、桜丘、南、戸塚、東、横浜商業、みなと総合、横浜総合の9校があります。人気が出ている理由としては、次の三点が主に挙げられるかと思います。
また、共通して言えることは、「国際都市横浜」としてグローバル学習に力を入れているということです。ほぼ全校で高校3年生までに英検2級の取得者割合を50%以上とすることを目標としており、南では70%、横浜商業の国際コースでは80%を目指しています。文部科学省が定めている目標値が<高校3年生までに英検「準2級」取得者の割合を50%以上とする>ですから、国策のだいぶ先を目指していることが分かります。
さらに、各校の特色をしっかり出していくための施策も練られています。2010年から始まった「教育振興プログラム」と2016年度以降の「魅力ある高校教育ガイドライン」によって、目指す方向性に対して、学校ごとに具体的な数値目標(KPI)を設定していて、達成度を測っています。例えば、金沢であれば国公立及び難関私立大学の合格者を延べ400名以上、桜丘であれば部活動加入率85%以上、サイフロであれば海外大学・高校・研究機関との連携を15以上に拡大するといった形で、各校の特色に合わせて数値目標が設けられているのです。
県立高校でも目標はありますが、学校ごとでの落とし込みまではなされていませんし、ましてや公表されることなどありません。横浜市立高校は、その数値目標に向かって、教職員と生徒が学校づくりを強く意識しているからこそ、全体的に引き締まった雰囲気が出ているのでしょう。目論見どおり、この数年間の取り組みによって各校にカラーが出てきており、「特色ある学校づくり」に成功していると言えます。公立らしからぬメリハリの効いた学校のカラーを持っているのが、横浜市立高校9校です。市立高校同士での情報のやり取りや、学校横断での取り組みなどへの試みも始まっており、非常に先進的な公立高校群です。「国」よりも「県」よりもスピード感のある改革が期待でき、今後さらに注目を集めていくことでしょう。
全校ご紹介させていただきたいところですが、取材の確かさを重視して、卒業生や学校から直接情報を得られる5校に限定して記事にしていきます。横浜市が指定している進学指導重点校の4校(サイエンスフロンティア、市立金沢、市立桜丘、市立南)と人気が高い市立戸塚についてご紹介してまいります。
ざっくりと各校の特徴について一覧にしてみました。
校風 | 勉強 | 青春 | 設備 | |
---|---|---|---|---|
金沢 | 少し真面目な 自主自立 |
レベル上昇中 | 「全部やる」 | 広くて充実 |
桜丘 | のびのび 文武両道 |
割と熱心 | 真面目に はじける |
割といい |
YSFH | 真面目 サイエンス |
理数と探究 | ・・・ | 最強 (運動系×) |
戸塚 | 自由で 賑やか |
意欲は普通 単位制 |
充実してます | 公立最高 レベル |
南 | 意識高い系 | 進学校 力入ってます |
かつては お祭り学校 |
相当いい |
まずは、サイエンスフロンティア、通称YSFHです(私はサイフロで略します)。世にも珍しい校名ですが、2009年に設立された新しい学校で、名の通りサイエンスでフロンティアな理数系に特化した学校です。しかしその実態は、決して理数に強いだけの学校ではありません。設備や環境が凄まじく、近年SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に加えて、SGH(スーパーグローバルハイスクール)にも指定されており、科学的な見方・考え方の探求を、よりグローバルに実現していけるスーパーな学校になっております。プレゼンの機会も多く、コミュニケーターとしてのスキルも磨かれます。(カタカナばっかり笑)「世界で幅広く活躍する人間を育てる理数科高校」を標榜し、サイエンスの力と言葉の力を同時に高次元で伸ばしていくカリキュラムとなっています。
目次
神奈川全域からサイエンスマニアが集結するため、中途半端な理科好きでは居場所もアイデンティティも失いかねません。目指す方向性や興味の対象などがはっきりしている人も多く、目的意識を持った人が多いのも特長です。校則は「品性高潔」を謳っていますが、特に厳しすぎることはなく、生徒の自主性を重んじていると言えます。2017年度から中高一貫生も入学してきて、校内はこれまでとは一風違った活気に満ちています。設備面や勉強面、大学や企業との連携なども含めて他の学校とは違った経験ができる学校で、国内において唯一無二の公立校であると言っても過言ではないでしょう。
週3回実施で休日は1回。充実した研究設備などを使用したインドア部活は、非常に活発。理系調査研究部、航空宇宙工学部、天文部など「いかにも」な部活があります。体育会系部活動は決して強くはありませんが、探究心が強い生徒が多いからか、みんなこだわって取り組みます。
文化祭は校内で最も盛り上がる行事ではあるものの、他校と違って中学受験を狙っている小学生ばかり来るため、一風変わった感じになります。他の行事至上校で良くある異様な盛り上がりは期待できません。また他方、(学校の性質上??)体育祭は覇気がなく、開催中に勉強している人もいるようです。総じて行事への熱量は決して高くはなく、そこを期待して受験するのは間違っていると断言できます。
ただ、二年次のマレーシア研修は非常に内容も濃く、在校生からも好評です。海外の人に向けて個人研究の内容をプレゼンすることができ、考えを深めつつもグローバルな視点を持つことが出来るものです。3年間の学校生活を通して、行事というよりも「講座」や「研修」が多く、知的好奇心を満たしてくれる環境が整っています。
言うまでもなく理数系では手厚い指導が受けられます。授業で教えられることを超越して詳しい人などもいるので、先生からの一方的な一斉指導、という感じにならない時も多いとのこと。かといって専門的な知識が必要かというとそうでもなく、基本的なことから学校は十分にサポートしてくれます。入学してから自分の進みたい分野を選んでいく人も多くいるので、そこまで身構える必要はないかと思います。「理科がかなり好き」であれば、乗り越えられる学習内容と空気感です。横浜市の中でも力のある理系の教員が集められており、理系科目はやはり質が高い授業が展開されているという声を多く聞きます。一方、理系が充実している分、お察しの通り文系は少々肩身の狭い思いをします。単位的な面でも苦労することになり、文系に進む人は全体の1割以下です。
進路指導はしっかりしており、興味がある分野や研究について最先端の取り組みをされている企業や研究者の話を聞く機会もあります。自分が進むべき方向性も定めやすくなり、未来像を描きやすく受験勉強にも熱が入ります。ただ、志が高い人が多いため、毎年約3割が浪人生となるようです。今後は2021年度からの大学入試改革によって、高校での活動や取り組みの成果が高く評価されるようになります。サイフロでの課題研究(人文・社会科学を中心とした「グローバルスタディーズ」、自然科学5分野の「サイエンスリテラシー」)などは、きっと「強さ」を発揮し、全国的にも注目を集めることになるでしょう。大学進学を見据えても、サイフロを選んでいくことは賢明です。
大学の先生や企業の人が来て、毎週のように授業・講義を行ってくれるので、自然と視野が広がり将来設計に役立ちます。土曜日にも講習や講義が入ることが多く、学校に行くことがほとんどです。公立ですが週6日制と思った方が良さそうです。研究・発表・レポートはこれでもか、とあり、プレゼンテーション能力は間違いなく伸びます。
朝8時から毎日任意で朝学習が行われていますが、ほぼ強制で全員参加を促されます。遠方の人は朝が早くなることは覚悟しておいてください。
校舎は築10年経っておらず、素晴らしい設備と清潔感があります。もちろん冷暖房完備で校舎のいたるところにソファがあるなど、公立らしくない豪華さがあります。グラウンドは砂利ですし、100m取るのがギリギリというくらいの狭さです。
また、ノートパソコンの持ち込みが許可されており、授業や発表などでは必須アイテムです。パワーポイントとwordを使いまくるとのことですが、半数くらいはPCを使えない状態で入学するので、中学生段階でのPCスキルについては心配することはありません。
「偏差値が高いから」「比較的理系が得意だから」程度の理由で入学すると火傷します。理系が得意で理系分野に対するこだわりや強い興味を持っている人にとっては、サイフロを上回る公立高校は全国を見渡してもないかもしれません。それくらい力の入っている学校ですし、受験できる神奈川県民は幸せです。
「高校生活にいわゆる「青春」を求めている人は来ない方がいい」
「ここだけでしか味わえない面白さがある」
京急線金沢八景駅から徒歩2分の市立金沢高校。横浜市立大学に隣接する広大な敷地内に広いグラウンドと中庭・前庭があり、心にゆとりを持って学びを育むことができる環境です。勉強だけでなく、行事や部活動、地域貢献含めて「全部やる」が金沢の魅力です。数年前の文理特進クラスを作った時の失敗を糧に、全員に特進プログラムを適用するという方策も、今度は上手くいって人気を集めています。
自主自立・生徒主体をかがげており、校則や上下関係、先生生徒の関係も含めて、比較的自由度が高い中で学校生活を送ることができます。真面目な生徒が多く、何を行うにしても乱れることがありません。勉強に対して真剣に取り組む人を冷ややかに見ることもなく、前向きであればあるほど楽しく毎日を送れるようになることでしょう。ここ数年高い人気を誇っていることから勢いもあり、学校全体を取り巻く雰囲気も明るさがあります。通っている人の満足度は高く、これからも人気と共にさらに高まっていくことが予想される学校です。
約9割の部活動加入率で、運動系・文化系それぞれ13の多様な部があり、活発に行われています。中でも弓道部やバトン部、吹奏楽部、陸上部などは強豪で県や関東で結果を残しています。グラウンドが広く、運動部が使用する設備も公立高校としてはかなり整っている方だと思います。
スポーツ大会、音楽祭、体育祭、金高祭の四大行事があり、いずれも生徒は全力で準備して開催に至ります。どの行事も相当な盛り上がりで、在校生の満足度は高く、来場者にも好評です。すべての行事は生徒主体で実施されており、開催に向けてクラスや団体の絆が深まっていきます。先生はあくまでサポート役に徹し、企画運営を生徒が行っていき、毎年少しずつ趣の違うオリジナリティのある催しとなっています。
全員に特進プログラムを適用し、指導要領で定められた単位数よりも英語と数学を週に1時間ずつ多く実施しています。実際に模擬試験の点数等もここ数年着実に向上しており、成果が出ているようです。模試もやって終わりではなく、返却の際のアドバイスなども丁寧で、次につなげる仕組みが出来上がりつつあります。職員室ではなく、教科教員室があり、各教科での質問をしやすい環境が整っており、自主性を促してくれる先生方と生徒の信頼関係も厚く、良い循環が起きているように見えます。
また、プラクティカルイングリッシュと呼ばれる実践的な英語力を育成するプログラムもあり、大学入試に向かうだけではない英語の授業が展開されます。夏期講習・夏期補習等もありますが、そのあとの8月二週目に集中プログラムで大学出張講義があります。高校1・2年生対象で、2017年はおよそ60人が参加。大学での学びについて実感が湧いたり、より探究心が強まったりするなど、非常に満足度の高い講義となっています。総合学習でも隣接する横浜市立大学との連携を強めており、各生徒が選んだ研究テーマについて大学の研究室に自由に質問に行けるようになっていて、一過性ではないプログラムとして今後も進化が期待されます。
休日も利用できる自習室は生徒に好評です。自然に囲まれていて海が近い横浜金沢の環境は程よく田舎で、勉強やその他の活動にも集中できます。グラウンドについては前述した通りですが、学食も良く、メニューの種類が多く生徒からも良い評判です。大学の設備を一部利用できるのも大きなメリットだと思います。
「ヤンキーは一人もいません。ハッチャケていると浮きます」
創立80周年を迎える保土ヶ谷の伝統校、桜丘。保土ヶ谷公園の緑あふれる自然に囲まれ、自由かつのびのびとした環境の中で知・徳・体のバランスを取りながら文武両道を実現していく学校です。桜丘という名前の通り、桜に囲まれた地域で春を浴びながら高校生活をスタートすることができます。
「自由」「文武両道」の二つが桜丘高校を表すキーワードです。校則は厳しくなく、真面目で穏やかな柔らかさを持った校風です。先生方も熱心で授業中の雰囲気も良いようです。部活動が盛んで、高い意欲を持って取り組んでおりますが、文武両道を謳っているだけあり、部活に熱中しすぎて、勉強の手を抜くことは出来ません。部活動加入率85%以上を指標としつつも、英検で2級以上取得者50%以上を目指していて、学校としての目指す方向性もはっきりしています。今後は社会貢献活動や社会体験活動にも力を入れていくとのことです。新大学入試制度での評価基準になっている、高校でのボランティア等の経験なども見据えても意義ある取り組みであり、高校として進んでいる方向性の正しさを感じます。
学校が目指している85%の部活動加入率は軽く超え、年にもよりますが実際には9割が加入する状況です。県有数の強豪というわけではありませんが、公立の進学校としては野球部もサッカー部も健闘しています。吹奏楽は有名ですね。部にもよりますが、活動日数も多く、取り組みも本格的です。「真の文武両道」を掲げているわけですが、生徒みんなが実現できているわけではありません。部活動に力を取られて、勉強に手がつかない人もそれなりにいるようです。学校の期待が大きいので、それに応え続けるのは生徒としては大変な部分もありますので、活発な部活動に入りたい人は要領の良さが必須かと思います。
真面目な生徒が多く、空気や行間の読める良識あるメンバーが集まっている印象です。良い意味であまり垢抜けていない部分があり、落ち着いた雰囲気の中で三年間を過ごせるでしょう。「真面目・のびのび・穏やか」な学校と言えます。
行事は盛り上がります。特に春先にあるバレーボール大会は、各クラスで休み時間も練習に励むほど活況で、一気に団結が強まる行事です。企画力のある生徒が多く、文化祭も工夫を凝らした催しとなり、まさに「お祭り」。合唱コンクールや球技大会などもあり、楽しむという意味での青春度合いは高い学校だと言えます。ただ、体育祭はありません。
質の高い生徒(やればできる生徒)と良い先生方がそろっており、どの授業も価値高いものとなっています。理不尽な先生も少なく、生徒と先生の信頼関係は厚く保たれているようです。在校生は「先生のハズレが少ない」と言っています(偉そうですよね…)。部活動で疲れて寝ている生徒もいるようですが、それはどこの学校も同じかと思います。
進路相談や対策をよく実施してくれることも好評です。受験に関してかなり熱心に相談に乗ってもらえます。進学指導重点校として、以前よりもさらにサポートやフォロー体制が充実してきました。進路指導部の先生方は特に生徒から人気があります。以前は国公立に35人以上合格という達成指標を掲げていたこともあり、意欲が高くて成績も良い子にはどんどん国公立の受験を勧めているようですが、ここ数年は、文系進学者が多くなっています。三年生になっても1日平均6時限あるというのは、受験生にとっては少し負担のようです。
進学実績としての成果は、まだ道半ばという感じでしょうか。特筆すべき結果は残せていませんが、これからまだまだ伸びしろのある学校だと思います。
決して綺麗ではありませんが、設備は充実しており、生徒から不満は出てきません。体育館も二つありますし、自習室を利用する生徒も多いようです。さすがの横浜市立高校ですね。ただ、立地が悪く保土ヶ谷駅から徒歩25分かかるため、特に部活動で重い荷物を持っている人は大変ですよね。バス利用者もかなりいます。また、学校の近くにコンビニがなく、そこは不便です。
「部活動加入率が高く活発なため、部活を頑張りたい人にはオススメですが、部活によっては勉強との両立は厳しくなってくるので、勉強だけを頑張りたい人はよく考えましょう」
2013年度より併設型の公立中高一貫校として附属中学を開校した市立南高校。かつての横浜南部学区においては、今は無き港南台高校と地域二番手校を争い、学力面でも高いレベルを誇る一方で、「お祭り学校」と呼ばれ、行事にイベントに全力投球の学校でした。
附属中学を開校して以降、高校募集は1クラス分38名となり、高校から入学するには狭き門に。大多数の内部生に混ざっていく「外様」の環境への抵抗からか数年間定員割れの状況が続きました。毎年、定員割れが起こるか否かで話題に上る現在の状況は決して好ましいものではありません。
しかしながら、SGHの指定を受けている高校で、附属中学からの内部進学生と同じように、グローバルな活動や自己探究活動に励んでいくことになります。質の高い教員と環境は贅沢で、38名の枠を狙っていくのはややギャンブルな側面はあるものの、やはり毎年狙い目・お買い得となる学校の一つです。
附属中学校開校の影響は大きく、附属中学の注目度が上がりすぎたため、高校から入る人が肩身の狭い思いをすることは避けられません。内進生と高入生の温度差は残念ながら存在します。ただ、考えようだったり気持ちの持ちようによって、高校から入ってもSGHや南高ならではの制度をフル活用できている人もいます。
真面目で行動力のある人が多く、良い意味で「意識高い系」の学校です。「明るい・自由・楽しい」という青春偏差値が高い学校から変貌を遂げています。この新しい南高の校風を嫌う高校生もいるでしょう。行事や遊び、部活動の充実を最優先する人にとってみれば、南高は選択肢に入れるべきではないように思います。
種類はたくさんありますが、部員不足に悩んでいる部が多いようです。以前よりも活動日が減り、特に運動部は部員数が減少しているとのこと。理由は、部活動以外の活動や課題が忙しく、部活に熱を入れている時間があまりないからです。
合唱コンクール、体育祭、球技大会、文化祭などいわゆる高校での行事は全部あります。それぞれに盛り上がりますが、ややインテリ系の集まりということもあり、合唱コンクールなどが一番盛り上がると言っている生徒もいます。文化祭は、サイエンスフロンティア同様に、附属中学を受験する小学生が大挙してやってきます。「お祭り学校」の名残はありますが、それを目的に来る学校ではありません。規制が厳しく生徒主体で出来ることも少ないようです。
また、土曜日にも学校に頻繁に行き、企業の方の講演、海外や異文化理解の時間として利用したり、模擬試験などを実施したりします。行事に全力というより勉強系のプログラムが充実していると言えます。
SGHとして海外についてのプロジェクトやプログラムがかなり多く充実しています。TRY&ACTと呼ばれる総合的な学習の時間があり、大学や企業を訪問したり連携したりして、課題解決型の授業が展開されます。グローバルビジネスのリーダーを育成していくことが目的で、積極的に海外に目を向けた活動に取り組んでいきます。ATOPと呼ばれる海外大学進学プログラムがあり、これは附属中学からの内進生だけでなく、高入生ももちろん利用できます。ATOPについては、南高生だけでなく横浜市立高校から20名を選抜するキャリアプログラムです。南高に集まって開催されることからも、中心は南高生になっているようです。
シンガポール、ベトナムの海外研修に加えて、カナダの姉妹校との交流や長期留学生の受け入れなどがあり、自ら環境を選んでいくこともできます。国内でもグローバルビレッジを訪れたり、国際大学でのイマージョン研修に参加できたりと使える英語を身につけるためのプログラムが準備されています。
高校でも毎日、国語・英語・数学は週5時間あり、基礎から応用までみっちりとやる勉強は厳しく、進むペースも非常に速いようです。これまでは内部生4クラスと高入生1クラスという構成で、そうであっても高校から入った生徒は苦労していましたが、2018年度入学生からは、混合クラスになるとのこと。レベルの高い内部生についていくのは、並大抵ではないと予想できます。「今年も定員割れしないかなー」という甘い気持ちで選ぶと学内で落ちこぼれていくことは必至です。定期テストのレベルも高く、クリアしていくためには相当な学習量を必要としています。あまりにも定期テスト等で点が取れないので、学校が嫌になっている人もかなりいると聞いています。高校から入ったからと言って甘く見ることはしない、中学からの内部進学生と同じように扱う、というのは高入生としてはチャンスと見るべきだと思います。
2018年度に附属中学第1期生の大学入試進学実績が出ます。おそらくは高入生を含んだ数字として出してくるとは思いますが、難関校への合格はほぼ内部生で占められることになるでしょう。ただ、高入生の頑張りはここからが再スタートだと思います。学校内でも学校外でも、南高の先生にさえも比較されて悔しい思いをしてきた高入生たちが、自分たちの力を証明するチャンスです。南は中学からも高校からもレベルが高いと言われるような躍進を期待したいところですね。
校舎を建て替えてからも25年が経過し、少し古くなってきましたが、依然として公立最高ランクの設備であることは請け合いで、プラネタリウムを含んでホールなども充実しています。自習室や食堂もあり、施設に関して南高生から文句が出ることはほとんどありません。少し駅から遠いかな、というくらいです。
「勉強頑張りたい人、海外に興味がある人、行事も(一応)全部楽しみたい人には良い学校」
音楽コースの設置や近年の野球部の活躍などが目を引く戸塚高校。単位制普通科で生徒の学習目的や興味・関心に応じた特色ある科目が充実していて、生徒一人一人の進路希望にあった学習カリキュラムを策定することが可能です。部活動、行事も盛んで楽しく活気のある学校生活が送れます。
伝統校横浜市立戸塚高校は、よく言えば賑やかで活発、悪く言えば奔放、といった校風でしょう。校則がゆるく自由である上に、単位制普通科であるため、生徒の希望や個性にあったカリキュラムを組めることが、その自在さに拍車をかけています。生徒主体でありながら、先生たちのサポート体制もよく、のびのびと生活できる楽しい校風です。
女子率が高く(約3分の2)、華やかな印象がある一方で、女子とうまくやっていけない男子は非常に肩身の狭い思いをすることになります。垢抜けた感じの生徒も多く、少々派手さもあります。高校生活を思いっきり楽しんでいるタイプの子がたくさんいる印象です。
また、地域振興の役割も担っていて、9月に行われる文化祭では地域やPTA、同窓会や近隣小学校なども参加しながら、盛り上げていきます。学びの場でありながら、様々な人と触れ合うことが可能です。
全国レベルの吹奏楽部のほか、神奈川ベスト8の野球部、そして天文部や軽音楽部なども盛り上がっています。強豪部活は、非常に厳しい練習を積みますが、そのほかの部活は比較的ゆるく、楽しみながら活動に励んでいるようです。
部活動の種類も多く、約9割が部活動に加入しています。
生徒主体の活動が多く、行事においても生徒の希望が通りやすい学校です。年二回の球技大会と体育祭はクラスで団結し、学校全体が盛り上がります。文化祭も前述の通り地域を巻き込んで行われ、活況です。
四年制大学への進学率が年々増えており、4年前には70%程度だったのが、現在は80%近くまで上がってきました。それに伴って進学実績も向上しています。2年次の英語・数学、3年次の英語については習熟度別授業を実施しており、大学の一般受験にも対応可能です。
単位制普通科は進学実績を残す上では難しい部分がありますが、横浜市立高校は進学指導やサポートがしっかりしているので心配がありません。単位選択についても、自主的に選びつつも先生が相談に乗ってくれて、より自分の興味や進路に沿った単位取得が可能です。1年次から進路講演会などを実施し、早い段階で自らの進む方向性を意識させてくれます。単位制なので、3年次に入試に必要な科目のみを取得することができて無駄がありません。
先生も積極的に補習をしてくれますし、放課後教科センターに聞きに行けば、基本的には丁寧に教えてくれます。授業の質においては、素晴らしい先生もいるし、生徒の大半が寝ているような授業もあるようです。また、長期休みの課題も多く、英語の小テストなども細やかで難易度も高いものになっています。
ただ、戸塚高校は勉強面においては、「自己実現」に向けての一歩を踏み出しやすくする高校です。勉強を中心に高校生活を送りたい人や高いレベルのメンバーの中で切磋琢磨しながら学習していきたい人には、正直言って向いていません。
私立並みの設備は素晴らしく、生徒の満足度も非常に高いものとなっています。自習室の環境がとてもよく、数も多いため利用しやすい状況です。
「女子が多いので、男子は女子を敵に回すと大変なことになる」
男女比 | 男 | 女 |
---|---|---|
市立金沢 | 52.16% | 47.84% |
市立桜丘 | 53.47% | 46.53% |
YSFH | 78.05% | 21.95% |
市立戸塚 | 33.79% | 66.21% |
市立南 | 51.95% | 48.05% |
(カナガク神奈川県公立高校 学校別男女比 2018入試用 https://kanagaku.com/archives/20489)
よくあるご質問として学区外(横浜市外)からの受験は厳しいのではないかという声があります。結論から申し上げると、「ほとんど気にしなくて良い」です。
まず、学区の区分がない学校はサイエンスフロンティア、戸塚(音楽コース)、横浜商業の3校となっています。募集定員の30%以内が市外枠となっている学校は金沢、南の二校です。それ以外の学校は募集定員の8%以内が市街枠です。市外からの受験者数がその枠を超えない限りは、横浜市民と全く同条件での受験となります。受験者が枠を超えた場合のみ、枠内での争いとなります。過去数年で枠を超えてきているのは、戸塚高校のみです。それも、大幅に多いというわけではないので、そこまでナーバスになる必要はありません。以下に過去3年のデータを示します。
市立金沢 | 2017年度 | 2016年度 | 2015年度 |
---|---|---|---|
募集定員 | 318 | 318 | 318 |
市外枠 | 95 | 95 | 95 |
市外受験者 | 56 | 83 | 74 |
市立桜丘 | 2017年度 | 2016年度 | 2015年度 |
---|---|---|---|
募集定員 | 318 | 318 | 318 |
市外枠 | 25 | 25 | 95 |
市外受験者 | 17 | 20 | 18 |
市立戸塚 | 2017年度 | 2016年度 | 2015年度 |
---|---|---|---|
募集定員 | 279 | 279 | 279 |
市外枠 | 22 | 22 | 22 |
市外受験者 | 26 | 30 | 22 |
市立南 | 2017年度 | 2016年度 | 2015年度 |
---|---|---|---|
募集定員 | 38 | 38 | 38 |
市外枠 | 11 | 11 | 11 |
市外受験者 | 9 | 6 | 10 |
今回ご紹介した5校の他にも、市立戸塚音楽コースや横浜商業スポーツマネジメント、美容理容系を学ぶ横浜商業別科など、さらに濃い特色を生かして自らの将来設計の中で高校生で深堀りをしていく学校・コースもあります。国際バカロレアの導入も検討中とのこと。横浜商業の国際コースあたりでやってきたら面白いですよね。いずれにしても、今神奈川で最も各学校の「色」が出てきているのが横浜市立高校です。新大学入試制度に強そうな学校であるということも間違いありません。
ここまで記事として書いてきましたが、これは各学校の情報の一部でしかありません。実際に通っている生徒の姿、先生の印象、校舎の雰囲気など、訪れて見てみなければ分からない部分をブログでご紹介することはできません。
ぜひ自分が行きたいと思う学校のことを心ゆくまで調べましょう。たくさんの在校生や卒業生に話を聞いてみましょう。光り輝く高校時代の3年間を過ごす場所としてふさわしい場所を探して回りましょう。そして、見つかったらあとはそこに合格できるように努力するのみです。「ここに行きたい」と思った空間での日々を手に入れるための頑張りは尊いものです。受験は幸い、分かりやすいものです。正しい努力を正しい量積めば、自ずと道は開けてきます。目指したものを手に入れるための努力を惜しまないでください。
こだわりの学校選択を応援しております。良い受験を。