鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2018.02.24
2018年度入試より神奈川県公立高校入試では、インフルエンザ等のやむをえない事情で学力検査を実施できない志願者に対して、「追検査」が実施されることになりました。初めての試みであり、ベールに包まれている追検査の問題は、果たしてどんな問題でどんなレベルなのでしょうか。分析をしていこうと思います。
目次
うまく作られていると思います。それも、本試験(2月14日に行われたものを便宜上本試験と呼びます)との難易度の調整を慎重に行いながら、形式・傾向を可能な限り近づけていこうとする並々ならぬ意志が感じられます。しかしながら、全く同じ難易度の問題を作ることなど不可能であり、個人的な感触としては本試験と比べて「少しだけ易しい」と受け止めました。
本試験の方の分析はこちら。
本試験の方で話題沸騰の「苦衷」に並ぶ難易度の読みがあるのかが最大の焦点です。
本試験と追検査で比較表を作ってみます。色がついている方が難易度が高いものです
問1 | 本試験 | 追試験 |
---|---|---|
(ア)読み | ||
(イ)書き | ||
(ウ)文法 | ||
(エ)短歌 |
本試験は本文が読みにくいものでした。同様の難易度となるのでしょうか。
問2 | 本試験 | 追試験 |
---|---|---|
(ア) | ||
(イ) | ||
(ウ) | ||
(エ) |
本試験は、時代背景が明治時代。とにかく文章が長い。長さ・古さ・文学的要素から受験生の動揺を誘うものとなっていましたが、追検査ではどうでしょう。
問3 | 本試験 | 追試験 |
---|---|---|
(ア) | ||
(イ) | ||
(ウ) | ||
(エ) | ||
(オ) | ||
(カ) |
(エ)と(カ)の難易度はおそらくそう変わらないので引き分けということにしておきます。本試験では受験生を苦しめた小説文も、追検査では少し取り組みやすかったようです。
本試験では、少しだけとっつきにくいが問いは易しめで文も短めでした。消去法をフル活用していけば解ける問題となっていました。
問4 | 本試験 | 追試験 |
---|---|---|
(ア) | ||
(イ) | ||
(ウ) | ||
(エ) | ||
(オ) | ||
(カ) | ||
(キ) | ||
(ク) |
説明的文章は追試験の方が難しいと思います。大きな差はないものの、選択肢の難易度がやや高いように思いますね。書き抜きも少ししんどいです。
本試験の問題形式は、(ア)は一昨年までと同じ。(イ)で若干の変化をつけてきました。
問4 | 本試験 | 追試験 |
---|---|---|
(ア) | ||
(イ) |
こうして比べてみて実際にカウントすると、本試験VS追検査の難易度比較は10対10(4引き分け)となりました。ですが、これがそのまま得点差になるとは考えにくいと思います。全体的な印象は追検査の方が易しく、最後の問5の(イ)6点が取れないため、大きくは差がつかないという結果となりそうです。おそらく同じ数だけ受験者がいたとすると、3点から5点ほど追検査の方が高い平均点となったのではないでしょうか。
「なお、追検査の方法等に関し必要な事項は、教育長が別に定める」という文言が募集要項の中にありますが、このブラックボックス感と言ったらありません。11月の伸学工房(全県模試)主宰のセミナーでは、「追検査受験者は不利」という県教育委員会高校教育課の見解が発表されていました。その時は、追検査受験者は「資料が整わないもの」扱いとなり、内申点と入試得点のみで判定が行われるということが推定されていました。
面接や特色検査は得点に入らず、内申点と入試得点の両方の持ち点が、合格ボーダーラインの人よりも上にいた場合は、追検査受験者が合格になる、どちらかでも下回った場合は、不合格というお話でしたが、県教育委員会からの正式な判定基準は発表されていません。(私が見つけられていないだけかもしれませんが…)
ただ、勝負のその日にインフルエンザに罹ってしまい、精神的にも肉体的にも不十分な状態で受けるよりは、追検査を受験することでチャンスは広がるはずです。なぜなら今回、問題を解いてみて思ったことは、さすがに「傾向が似ている」と感じたからです。追検査が有利とは言いませんが、本検査の問題を入手し、それを解いていくことで最新の傾向や難易度を把握した状態で追検査に臨めば、一縷の望みを何倍にも膨らませ、本来の実力に近い結果に近づけるのではないかと思いました。やりようによってはその不利を帳消しにできる可能性も残されていると現時点では思っています。県教育委員会からの追検査の選考方法について、結果と続報を待ちましょう。