鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2016.12.23
高校入試が近づいてきました。来春に向けての各県立高校の人気動向はどうなっているのでしょうか。今回は、2017年度入試のオリジナル倍率予想をしてみたいと思います。各校のトピックスも交えてご紹介してまいります。
※2018年度版はこちら(神奈川県公立高校入試倍率予想2018)をご覧ください。
受験生の皆さんに最初に言っておきますが、倍率予想はただの傾向です。倍率を気にしたところで点数は一点も上がりません。ですから、一喜一憂してふわふわと時間を過ごすくらいなら、計算問題を一問解くべきですし、年号を一つ覚えるべきです。一点でも多く取るための努力をすることだけが、合格への唯一無二の近道です。とにかく今は、一心不乱に学習に集中してくださいね。
神奈川全県模試(伸学工房)発表の倍率予想と神奈川県教育委員会発表の最新の志願者動向(P23,24)、その他複数の模擬試験の志願者数も参考にしているので、かなり精度の高い倍率予想となるはずです。
出願締め切り後の答え合わせも乞うご期待。
すべての学校のデータが取れたわけではないので地域や学校に偏りがあるのはご容赦ください。
それでは、学力向上進学重点校から見ていきましょう。
なお、学力向上進学重点校は旧指定18校です。平成30年度には、現在エントリーしている17校がこの二年間の取り組みの成果によって新たに指定される予定です。さすがに軒並み高倍率となっていますね。
学力向上 進学重点校 |
2017年度 定員 |
2017年度 予想出願者数 |
2017年度 予想倍率 (志願変更前) |
前年度倍率 (志願変更前) |
傾向 |
全県模試 偏差値 |
---|---|---|---|---|---|---|
湘南 | 358 | 591 | 1.65 | 1.72 | 72 | |
翠嵐 | 358 | 877 | 2.45 | 2.2 | ↑ | 71 |
柏陽 | 318 | 458 | 1.44 | 1.55 | ⇘ | 69 |
川和 | 318 | 509 | 1.6 | 1.58 | 68 | |
緑ヶ丘 | 278 | 403 | 1.45 | 1.54 | 68 | |
厚木 | 358 | 505 | 1.41 | 1.33 | 67 | |
多摩 | 278 | 461 | 1.66 | 1.68 | 65 | |
希望ヶ丘 | 358 | 591 | 1.65 | 1.73 | 65 | |
小田原 | 318 | 356 | 1.12 | 1.14 | 65 | |
横須賀 | 278 | 392 | 1.41 | 1.54 | ⇘ | 65 |
光陵 | 278 | 359 | 1.29 | 1.45 | ⇘ | 65 |
相模原 | 278 | 331 | 1.19 | 1.35 | ⇘ | 65 |
平塚江南 | 318 | 391 | 1.23 | 1.29 | 64 | |
大和 | 278 | 448 | 1.61 | 1.73 | ⇘ | 63 |
鎌倉 | 318 | 429 | 1.35 | 1.32 | 63 | |
横浜国際 | 178 | 267 | 1.5 | 1.47 | 62 | |
秦野 | 358 | 412 | 1.15 | 1.26 | ⇘ | 58 |
追浜 | 278 | 320 | 1.15 | 1.02 | ⇗ | 58 |
横浜翠嵐が圧倒的一番人気です。現役進学実績の良さ、予備校並みの充実した進学指導が魅力です。勉強時間を確保するために部活動などもかなり制限されているようです。例年慶應高校や学芸大高校の合格者が、翠嵐受験後に一部抜けるので最終的には2倍を切る倍率になりますが、それでも最高難易度であることには変わりありません。一方神奈川の雄、湘南高校はやや低調。体育祭などの行事をはじめとした高校生活そのものは大変充実していますが、浪人生が多く「四年制高校」と皮肉られていることもあり、現役国公立大学進学を目指す層が翠嵐に流れていることが一番の要因でしょう。学校の雰囲気が緩んでいるわけでも、湘南に入ったから勉強をサボるわけでもないのですが、とにかく高校生活を充実させ、目標を下げないという意識の高い生徒が多いので、浪人率の高さは致し方ない部分もあります。ここ数年上がり続けた合格ラインの高さも敬遠の理由でしょうか。しかしながら、倍率が少し下がるとは言え依然として県下随一の人気校。合格に向けての難易度は大きくは変わらないでしょう。
SSKH(湘南・翠嵐・川和・柏陽)の一角、川和は人気上昇が止まりません。数年前の高校サッカーの躍進は記憶に新しく、湘南と並んで活発で強い部活動と盛り上がる行事が人気を支えています。少々元気がないのが柏陽高校。湘南、川和の華やかさと比べると真面目で大人しい学校という印象です。ただ、充実した理科系施設と力のある先生方の指導で、特に理系には強さを発揮しています。また、各生徒がテーマを決めていく探求活動なども高レベルで行われます。生徒の適性を見極めながら行う進学指導にも定評がありますね。
注目は、昨年度初めて特色検査を行った横須賀高校。特色検査は非常に理系色が強いものとなりました。その難易度の高さからか敬遠傾向です。「これ、時間内で解ける人いないだろ」と理系職人講師がぼやくほどのレベルでした。理系を謳いながらも、文系の問題で点数がきちんと取れたかで決まる本末転倒入試となった模様です。学校としては、理系に舵を切ることは明確なようで、カリキュラムも随分と様変わりしています。校長先生が変わったこともどう影響するか、2017年度入試も注目の学校です。校舎の建て替えで人気を博す横浜伝統の進学校、緑ヶ丘は昨年までの人気の反動か微減の予想。緑ヶ丘はプログラミング教育推進校となっていますが、ホームページがあまりにお粗末です(昭和情緒溢れてます笑)。これでICT先進校を名乗るのはいかがなものでしょうか。校風はかなり自由ですが、節度ある生徒が通うので乱れることはありません。
他には、西の単位制トップ校・小田原高校、丁寧な指導で定評のある伝統校・平塚江南高校も人数を集められていません。地理的な問題もありますが、両校とも神奈川県の西部の学力上位層を長く支えてきた力のある学校です。「過小評価」と言えるでしょう。
ただ、油断をしてはいけません。進学重点校の中で「倍率が低そうだ」と予想される学校には、大手塾が「全塾中No.1!」を謳うために、生徒を意図的な進路指導によって大量に送り込んでくるので注意が必要です。今年のブッ込み候補本命は、、、平塚江南です。対抗は豊富な指定校推薦枠を持ち、プレゼンテーション型特色検査とその延長上にある授業形態が特徴の光陵高校です。出願後の倍率が予想倍率を大幅に上回った場合は、その可能性が高いです。
また、鎌倉高校の人気は変わらずといった様相ですが、来年度から文化祭が毎年開催になるという変化があるようです。これまでは体育祭と文化祭が年毎に交互開催だったわけですが、体育祭が「総合体育行事」に変わり、縮小されるという情報があります。行事が盛り上がる学校としても有名だっただけに、体育祭の縮小は募集に影響するのでしょうか。12月末の発表ですので、受験生は今さら言われても困りますよね。。。
横浜市の進学指導重点校4校について見ていきましょう
横浜市では県とは別に4校を進学指導重点校として、独自に指定しています。いずれの学校も横浜市が力を入れている学校で、充実した設備としっかりとしたカリキュラムがあり、経験があって指導力の高い先生方も揃っていることから、毎年高い人気を誇ります。
高倍率の理由については、こちらの記事もご参照ください。
(空前の高倍率! 横浜市立高校 人気の秘密)
横浜市 進学指導重点校 |
2017年度 定員 |
2017年度 予想出願者数 |
2017年度 予想倍率 (志願変更前) |
前年度倍率 (志願変更前) |
傾向 |
全県模試 偏差値 |
---|---|---|---|---|---|---|
サイエンスフロンティア | 238 | 359 | 1.51 | 1.59 | 67 | |
市立金沢 | 318 | 502 | 1.58 | 1.57 | 63 | |
市立桜丘 | 318 | 531 | 1.67 | 1.59 | 61 | |
市立南 | 38 | 28 | 0.74 | 0.55 | ⇗ | 59 |
市立南を除く3校は非常に高い人気です。各校とも横浜市のサポートが充実している上に、取り組みにも熱意があり、説明会に行くと「通いたい」という意欲を刺激されます。横浜サイエンスフロンティアは、理数系に特化した学校として横浜市の肝入りで2009年に誕生。最新の実験器具や大学並の理科室を揃え、大学や企業との連携にも積極的です。2014年にはSGH(スーパーグローバルハイスクール)にも指定され、理数の能力を高めつつ世界へ視野を広げる本格的なカリキュラムが魅力です。部活動も熱心で、限られた活動日の中で生徒の自主性に任せた運営がなされています。
横浜市立金沢高校は、かつての出願制度の失敗による不人気がありましたが、「全クラス特進科」としての指導をしつつも、部活動や行事などにも積極的に取り組めるようカリキュラムを組み替えたことで人気が戻ってきました。一昨年度から高い倍率を維持しており、この人気はしばらく続くでしょう。地理的に幅広い地域から通いやすいことも、志願者が集まる要因の一つでしょう。また、市立桜丘高校も人気が高い状態が続いています。部活動に大変熱心な学校で、行事も多く、青春の一ページとしての高校生活を全力で謳歌したい人たちの心に響いているようです。学習面でもレベルが高く、東大東工大への進学者も含めて早慶上智にも数多く進学しており、文武両道を果たしている学校といえるでしょう。両校とも校則が比較的ゆるく自由なことも特長です。
数年来、定員割れが続いている市立南高校ですが、今回も苦しい状況は続きそうです。併設型の中高一貫校の人気は依然、衰え知らず。倍率が立たない高校入試とは温度差があります。公立とは思えない設備の良さと、SGH指定を受けており、公立としてはトップクラスのグローバルな環境に身を置けます。高校入学生は、校内ではマイノリティですが、中高一貫生は指定校推薦を取らずに大学受験をするため、枠が回ってくることも多いとのこと。優秀な先生も集まっており、ハイレベルな授業が提供されるので、「狙い目」の学校ではあります。
続いて、学力向上進学重点校には現在のところ指定されていませんが、大学進学実績も良い各地域の難関校3校をご紹介します。
地域難関校 |
2017年度 定員 |
2017年度 予想出願者数 |
2017年度 予想倍率 (志願変更前) |
前年度倍率 (志願変更前) |
傾向 |
全県模試 偏差値 |
---|---|---|---|---|---|---|
横浜平沼 | 318 | 353 | 1.11 | 1.35 | ↓ | 62 |
茅ヶ崎北陵 | 278 | 403 | 1.45 | 1.27 | ⇗ | 60 |
市ケ尾 | 398 | 605 | 1.52 | 1.54 | 59 |
横浜平沼は、偏差値60以上の学校で数少ない内申:入試:面接が4:4:2の学校です。内申を重視していることや、横浜駅から徒歩10分という華やかさからか、女子が多い(男女比概ね1:2)学校です。学力向上進学重点校にエントリーしており、進学校としての改革が進んでいる学校です。校則はやや厳し目ですが、帰り道が何より楽しそうな学校ですね(笑)。茅ヶ崎北陵は今年の注目校の一つです。説明会に参加した生徒は、口を揃えて「良かった」「行きたい」と言います。こちらも学力向上進学重点校にエントリーしていて、先生方の熱意や教科指導の丁寧な説明など、行ってみたくなる仕掛けが多かったようです。立地柄もあり、「平和」で有名な同校ですが、殻を破り、地域トップ校として再び人気を集める日も近いかもしれません。行事や部活動の充実度が極めて高い、市ケ尾高校も数年間高倍率が続いています。大学進学実績でも結果を残しており、充実した高校生活を送りながら、将来に向けて学習面でも意欲が高い、という空気感が人気を呼んでいます。
各地域の人気校の現状はいかがでしょう。若干県南地域に偏っているのはご容赦ください。「海を目指す」という湘南地域への憧れからか、どの学校も人を集めています。
地域人気校 |
2017年度 定員 |
2017年度 予想出願者数 |
2017年度 予想倍率 (志願変更前) |
前年度倍率 (志願変更前) |
傾向 |
全県模試 偏差値 |
---|---|---|---|---|---|---|
大船 | 398 | 597 | 1.5 | 1.35 | ⇗ | 58 |
七里ガ浜 | 358 | 584 | 1.63 | 1.28 | ↑ | 56 |
市立戸塚 | 279 | 452 | 1.42 | 1.38 | 58 | |
横浜栄 | 318 | 499 | 1.57 | 1.32 | ↑ | 56 |
藤沢西 | 278 | 395 | 1.42 | 1.25 | ⇗ | 53 |
湘南台 | 278 | 322 | 1.16 | 1.2 | 53 | |
市立横須賀総合 | 320 | 486 | 1.52 | 1.53 | 53 | |
鶴嶺 | 383 | 391 | 1.02 | 1.07 | 53 |
地域三番手校ながら、偏差値や内申平均では他地域の二番手に匹敵する高水準を誇る大船高校。立地は便利とは言えませんが自然に囲まれ、規律ある校風と落ち着いた生徒たち、丁寧な進学指導で人気を博しています。前年度易化の反動か2017年度は倍率が上がりそうです。大船高校と地域三番手を争っていた七里ガ浜ですが、自由すぎるその校風と「眼前が海」というロケーションで津波懸念からやや敬遠されていましたが、若干成績基準が下がってきたことからも受けやすさが出てきました。また1クラス募集数減が響いて、かなりの高倍率となりそうです。地元でも人気がある学校で、国際色もあることから楽しい高校生活が送れることは請け合いです。
他には、県全体の流れとして2017年度入試は、総合高校が人気となっており、中でも充実した施設とサポートに定評がある横須賀総合高校も高倍率の予測です。キャリア支援のシステムもしっかりとしていて、その上で科目選択をしていくという総合高校としてあるべき姿を追っている学校です。生徒全員にタブレットPCを持たせてのICT先進校でもあります。
数年前から感じていることとしては、「人気が偏っている」ということです。進学重点校への倍率の偏りは大手塾の「煽り」が大きな影響を及ぼしているでしょうし、各地域の人気校に関しては、風評の拡散による影響が強いのかな、と感じています。インターエデュなどのネット掲示板やSNS、Twitterで拡散している情報にかなり流されている、ということです。信頼出来る複数の情報源から学校情報を仕入れていただきたいものです。
そして、日本人の行列心理から「人気が高い学校はいい学校」となり、さらに人気が集中します。その証拠として、長らく神奈川県高校入試では「隔年現象」が多く見られましたが、最近はあまり確認できません。前年倍率が上がった高校は、今年も引き続き上がる、ということが増えています。そして、人気及び倍率が上がり続けると難易度も上がります。しばらくすると「一服」というタイミングで倍率が下がるということになります。2017年度入試の湘南(おそらく)や2016年度入試の大船がそれに当たりますね。
周囲に流されずに志望校選びをしてほしいものです。もし、決められないなら、自分にとって可能性がある中で一番難しい学校を受けるといいでしょう。その「頑張り」に価値があります。その先の人生の可能性を広げることにもつながる努力を、この受験を通して経験してほしいと思います。
受験生へ。自分の青春をかけた学校選びです。よく見極めて選んでください。周囲に決められた学校ではなく、自分の目や心で選んで、「行きたい」という意思を自分の言葉で語れる学校を受けよう。塾の実績のためでも親の世間体のためでもない。中学での自分の狭い人間関係に囚われる必要もありません。真剣に将来を考え、視野を広げて、たくさんの人に相談して、進路を定めていこう。そうして、選んだ学校だからこそ高校生活3年間に自分で責任が持てる。「自立」と「自由」が待っています。
そして、選ぶためには「受かる実力」が必要だ。実力を磨こう。
そして、そこまでして選んだ学校に「落ちる」ことは避けたいだろ?
「落ちない実力」を身につけよう。
さぁ、勉強だ。机に向かおう。
ご参考までに。一番いい学校案内はこちらですね