鎌倉の進学塾 塾長が考える、受験と国語とその先のこと- Junya Nakamoto -
2021.02.08
2021年神奈川県公立高校入試の出願倍率が発表されたので、各校の倍率速報と簡単な分析、志願変更で人はどう動くのかなどについて書いていきます。
空前の志願変更数となっている2021公立入試。「なぜ動いたか」「各校志願変更後の状況」「気にかけた方が良い事」を分析記事に追記しました(2/8)。
また、新型コロナウイルスの影響を受けた2021年度入試では「何が起きるのか」「ボーダーラインの考え方」について分析をしていきます。
2022年版はこちらです。
数値を見るだけなら県教育委員会のページで十分だと思いますので、こちらの記事では過去三年分の実データを元に、志願変更ではどの程度動くのか、数値から読み取れる傾向はどのようなものなのか、といったことに触れていきます。
さらに倍率がボーダーラインに与える影響、そして最後には進学実績と倍率の関係性ということで、おまけをつけておきました。ブログ三本分一挙公開です(迷惑を省みない)。
倍率の見方や倍率の意味、定員割れの時の考え方などについては過去記事(速報と分析 2018神奈川県公立高校入試倍率)をご覧いただければと思いますが、簡単に引用しておきます。
もっとも、昨年度との比較で同等の倍率なら同じような難易度・試験になると考えてください。1.2倍程度が平均値なので、それをベースに大まかな判断は下記の通り。
1.1倍の学校と1.5倍の学校での差はどうか。
定員318名の学校で考えてみると、
・1.1倍時の受験者数はおよそ350名。
・1.5倍時の受験者数は480名程。
不合格者数は「32名」と「162名」と130名差が出ます。
1.5倍超の学校に対して模試の合格判定50%以下の人が突撃していくのは、ギャンブル要素が相当高くなりますね。特に内申点が不足気味で、二次選考狙いの受験生には厳しい入試となりそうです。志願変更の検討をお勧めします。
ここまでの受験勉強、お疲れ様です。残りの日々はわずか。倍率に惑わされずに、最後まで走り抜けましょう。
志望校に行く回数が少なくて、学校選び、大変でしたね。もしかすると、“熱望”とまで気持ちが盛り上がらなかったかもしれません。
でも、大丈夫。みなさんが選んだ学校は、素晴らしい学校です。
素敵な先輩たちが待っていますし、そして何より苦難を乗り越えた、たくさんの同級生たちと共に創り上げる高校生活はきっと想像以上のものとなるはずです。
「決めた学校」に向けて追い込んでいきましょう。
まだ、力は伸びます。志望校が決まっている人にとっては、倍率は関係ありません。
志願変更を迷っている方、一刻も早く決めましょう。迷っている時間で合格の可能性はどんどん減っていきます。
今回倍率を見てしまってショックを受けてしまった人、奮い立ちましょう。
今回倍率を見てラッキーと思ってしまった人、足元をすくわれますよ。
倍率に囚われた人から合格の可能性を失っていきます。自分のベストを尽くしていくことに変わりはないはず。
残り二週間。
コロナを乗り越えた2021受験生の集大成を見せてください。
「志願変更をしても変更後の倍率が急激に上がったらどうしよう」
「今は倍率高いけど志願変更でどうせ減るでしょ」
と思うかもしれません。結論から言いましょう。
『ほとんど動かない』
一部の学校を除けば、ほとんどの場合変動は0.1未満です。誤差です。
動いたとしても0.2~0.3程度が関の山。
「変動が大きくてもその程度」ということです。
それではまず、昨年の志願変更で減少の動きがあった学校を見てみましょう。募集人数が100名以上の学校でランキングしています。(ここからたくさん表が出てきますが、文字が小さくて見づらい時はクリックすると画像に飛びます)
突然の高倍率に「何があった?」と多くの人が動揺した湘南台は、90名近くが志願変更を選択しました。おそらくは低倍率だった茅ケ崎に流れたと考えられます。
進学重点エントリー校でトップ倍率となった大和も60名弱減少。希望ケ丘、市ケ尾が受け皿となったでしょうか。
神奈川総合(個性化)は相変わらずの超高倍率。若干減らしたものの1.77は高い倍率でした。2021は舞台芸術科の設置により定員減となるため、倍率上昇は必至ですね。
過去数年で最も高い出願倍率となった柏陽も動きました。こちらも希望ケ丘に変更した人が多かったかもしれません。
続いて、昨年度志願変更によって増加の動きがあった学校を挙げてみます。
明らかな特徴があり、茅ケ崎を除く全ての学校が出願時倍率が1.0未満(定員割れ)でした。茅ケ崎も1.01。
志願変更後に倍率が大きく上がる学校=「定員割れ校」と言えるでしょう。
ただし、増加したとは言え、すべて0.2以内の増加幅。多くても50人程度の移動です。
志願変更によって増える(流入する)人数は限定的ですね。
さて、次は個人的に気になる学校をリストアップしました。(昨年度)
湘南や翠嵐が減らすのは毎年のことですので何も驚きませんが、減少幅は定員のおよそ1割程度。30人から40人といったところです。湘南と翠嵐は私立の結果次第で当日欠席も一定数いるので、まだ減りますが、それも例年通り。受験生も進学指導をする側もさすがに織り込み済みですね。
平塚江南は近年低倍率の印象が強かったため、1.31は少し強めに映ったのでしょうか。流出の動きでした。
大船は、湘南台や七里ガ浜からの移動があったため、50人弱増やしています。七里・大船の志願変更の移動は例年活発に起きています。2021はどうなるのでしょうか。
人が動くには理由が必要です。
志願変更で動く学校の条件は
です。そうでなければ動きません。
例えば、
最初の出願時点で1.11倍と明らかに狙い目に見えた2020年度希望ケ丘は、志願変更後も1.2倍とさほど変わらず。
最初の出願時点で1.81倍と明らかに高倍率だった2020年度大和は、減少したものの志願変更後も1.6倍と高倍率を維持。
2/1時点での数値と傾向が大きく変わることはありません。合格の難易度もそう変わりません。考えて震えるだけ無駄です。
2/1の数値を見た時点で覚悟を決めることが肝要です。
今年は志願変更が例を見ない多さです。これまでと様子が大きく異なる学校もありますので、気になる学校についてこちらでまとめます(参照:神奈川県教育委員会 入学者選抜一般募集共通選抜等の志願者数(志願変更締切時))
緑ケ丘から歴史的大移動が起きています。人数にして145人。倍率にして0.5ポイントも変動しています。湘南・翠嵐を除いてここまで移動したケースは過去に類をみません。ここまで下がってくると懸念されていた難易度の上昇も限定的ですね。
湘南が予想以上に動いていますね。98名減で倍率もかなり下がりました。蓋を開けたら昨年並。随分と下げました。緑ケ丘と湘南のこの移動はインパクトがありますね。変更先は……柏陽・平塚江南・茅ケ崎北陵あたりでしょうか。
翠嵐は一日目(2月4日)の動きは大きくありませんでしたが、二日目で動きはじめました。最終的には67名減でしたが、2.0倍は切らずに例年通りの超高倍率です。
鎌倉高校も動いています。すでに63名減で鎌高史上最多の志願変更が起きていますね。加熱気味だった鎌倉高校の倍率は少し落ち着きました。
小田原の20名減少も目を引きます。神奈川総合はこの高倍率にも関わらずほとんど動いていません。神奈川総合の国際科と舞台芸術科は4教科受験となるため、他校への志願変更はなかなか難しいものがありますね。
市立戸塚、市立金沢も減らしています。金沢から特色検査校への流入は考えにくいため、桜丘に変更した受験生が多かったでしょうか。
「今年は動いた」という印象が強い志願変更。背景には何があったのでしょうか。
まず第一に、“熱望”度合いが高くなかったということが挙げられます。コロナ禍で学校見学や行事体験も限定的で情報不足。志望校選びがどうしても表面的になりがちです。
そのため、出願時の学校への“なんとしても感”が高まり切らず、合格するための志願変更が増えたことが考えられます。
もちろん、社会を覆う先行き不安感からチャレンジよりも公立に合格することを優先させたいという風潮もあるでしょう。
今年の志願変更は4日・5日・8日というスケジュールが予告されていて、最後に土日で考える時間を設けられていたのも、志願変更への精神的な障壁を下げています。
また、内申インフレが起きている地域が多く、「内申はクリア・得点力には不安」という層が、まずはチャレンジ校に出願し、倍率を見て移動しようと考えていたこともあり得ますね。
いずれにしても一つの要因ではここまで動きません。複数の要因が絡み合っての空前の志願変更数となったと言えるでしょう。
そうは言っても、苦渋の決断だったと思います。
考え抜いて志願変更を選んだ受験生のみなさんの決意は英断です。
あとは、選んだ学校に絶対に合格するために、残りの日々を全力でやりきりましょう。
今年は未曾有の志願変更数となっています。
ただ、過度に動揺する必要はありません。
気をつけてほしいのは、倍率変動が及ぼす合否の影響についてです。高倍率となったときにボーダー付近で何が起きているのか、ということを知った上で残りの日々を過ごしていきましょう。
出来ることは1点でも多くの得点を積み上げるための努力をすること、面接・特色検査への意識の割合を若干変えることでしょうか。
*例年学力検査の数日後にSTEPが塾内平均点を発表します。多くの学校ではこの点数を上回っていれば合格となりますが、トップ校ではそうもいきません。
倍率低下の場合は逆のことが起きると思って良いでしょう。
ボーダーラインの変動については下に詳述してあります。
2021倍率分析に入る前に、巷でよく言われている「倍率が上がると5教科得点でのボーダーラインが切り上がる説」について、最近違和感を持っていたので検証してみました。ご興味があるかたはお付き合いください。
学力検査の全合格者平均点は2018(264.8点)→2019(263.0点)→2020(288.3点)という結果となっていますので、2018→2019→2020の順で学力検査ボーダーラインの数値を見ていくとV字になることが予想されます。
この流れに逆らっている=倍率が影響したと仮説することにします。
特に学力検査が難化した2018→2019を見ると倍率とボーダーラインの関連性が認められやすいと思いますので、そこを中心に見ていきたいと思います。
まずは進学重点校SYAHK(湘南・横浜翠嵐・厚木・柏陽・川和)から見ていきましょう。
倍率が影響を及ぼしていると言えそうなのは柏陽でしょうか。
柏陽は2018→2019で倍率は1.27→1.42と上がっていて、ボーダーラインも368点→371点と上がっていて得点低下傾向に逆らっています。
湘南や川和などは倍率の上下とボーダーラインが逆の動きをしていますし、相関関係はあまり見られないと言えるでしょう。
次に進学重点エントリー校+サイエンスフロンティアです。
グラフも作ってみましたが14校だと入り乱れてしまって、訳が分からないので割愛します。
こちらを見ていくと、倍率が上がるとともにボーダーラインが切り上がっているイメージを持てるのは、2018→2019における光陵、相模原、希望ケ丘、横須賀、鎌倉、横浜平沼、茅ケ崎北陵です。このうち、希望ケ丘と横須賀を除く学校は2019の時点では特色検査を実施していません。
特色検査を実施していない状態では、倍率の上昇とボーダーラインの上昇は正の相関があると言えそうです。
一方、半ば分かっていたことですが、特色検査実施校では、倍率はボーダーラインにはそれほど影響がありません。
特色校では倍率が影響を及ぼすのはあくまでS値。しかも、倍率変動が作用するのは基本的には二次選考に回る人たちですので、学力検査+特色検査の総合点がものを言います。
特色検査実施校では、高倍率になればなるほど特色検査の影響力が大きくなる、と考えておいてください。
最後に個人的に気になる近隣の人気校(市立金沢/市立桜丘+SOFTS)で見てみます。
ボーダーライン推移だけで作成したグラフはこちら。
市立金沢、市立桜丘、大船、湘南台の4校で2018→2019の倍率上昇によるボーダーラインの上昇が見られました。藤沢西も影響があったように見受けられます。全県模試偏差値50~60前後の学校でも倍率とボーダーラインには関係がありそうです。
今回の検証から二つのことが導き出せるかと思います。
1:特色検査実施校では倍率は学力検査のボーダーラインに大きな影響を及ぼさない
2:それ以外の学校では影響が出やすい
特色検査実施校を受験する予定で模擬試験の合否判定がギリギリの方は、特色検査に自信があるかが重要です。例年よりも倍率が高まっている時は志願変更をお勧めします。
特色検査実施校以外で倍率が例年よりも上昇している場合、二次選考のボーダーラインが切り上がります。「内申は合格者平均に達しているが、実力には不安が残る」という方は、志願変更も視野に入れましょう。
前置きが(めちゃくちゃ)長くなりました。それでは、倍率速報と分析です。
隔年現象が起きる学校と、人気が定着した学校の二極化が進んでいます。人気が定着した学校は、「校舎がきれい」「自由」「大人の事情」が絡んでいますね。
目立ったのが、近年の人気に拍車がかかった神奈川総合。新設の舞台芸術も定員数が少なかったとはいえ、驚異の倍率に。
その他、注目ポイントを抑えつつ、出願倍率の分析をして参ります。例によって取り上げる学校に偏りがあるのはご容赦ください。
令和三年度から川和を加えて5校となる学力向上進学重点校。さすがの高倍率が並びます。
ただし、今年は翠嵐・湘南のツートップに割って入る学校はありませんでした。今年も各塾が威信をかけて翠嵐を獲りに行きます。臨海セミナー vs STEPの第二ラウンドとなるでしょうか。
湘南・翠嵐はここから人数が変動します。2019年度最終倍率は湘南1.82→1.64・翠嵐2.22→1.84、2020年度は湘南1.70→1.38・翠嵐2.07→1.71と100人単位で動くことも少なくありません。また、慶應・学芸大の合格で入試後も変動がありそうですし、学芸大の入学確約書の存在も不気味です。
大学進学実績は決して悪くなかったものの、柏陽の勢いは続きませんでしたね。昨年やや湘南から流れ込んだ印象がありましたが、今年はそれもない様子。そして、柏陽よりも少しだけ難易度が低く自由で楽しそうな緑ケ丘という選択をした受験生が今年は多かったのかもしれません。結果的にこの倍率だと柏陽と緑ケ丘の難易度の差は相当縮まってしまいますが。
MARCH合格者数日本一を叩き出し、国公立への進学者数も増え、満を持して進学重点校に指定された川和。人気爆発が予想されましたが、肩透かしをくらった印象。難易度上昇への敬遠が起きたのかもしれません。
進学重点校はコロナ禍での学習への奮起を促す文章を4校連名で出すなど、協働の姿勢が見え、神奈川県の学力向上を牽引していくという意志を感じさせる動きがあります。川和を加えて活動の幅をどう広げていくかに注目が集まりますね。
進学重点エントリー校12校+令和3年度より指定の横浜国際は、明暗がくっきりしました。昨年度から全校で特色検査が実施されていることもあり、受験生に「特色検査避け」の傾向はあまりみられないように思います。
川和と横浜国際を除いた数値で昨年と比較してみると、2020年4,883人→2021年5,100人と昨年よりは5%弱増えています。2018年が5,277人ですので、「進学重点エントリー校に人が戻ってきた」と言えると思います。
法政第二、法政国際の人気は今年も高かったと思われますが、逆に人気が高まりすぎて内申基準が上がり、書類選考基準をクリアできなかった可能性があります。法政第二は44、法政国際は42が基準と考えられ、法政第二は高止まり感がありますが、法政国際は今年も上がる傾向です。
法政大学附属の2校に流れていた層が、法政系の合格ライン上昇に伴って、再び公立受験という選択をし、それが進学重点エントリー校に集まっているというのは、増加している学校の地域を見ても考えられる仮説です。
一方で進学重点校では結構「隔年現象」が見られます。特に横浜地域や鎌倉高校・横須賀高校などは顕著ですね。
横浜緑ケ丘の人気が再燃。一昨年以前の高倍率再びです。柏陽の倍率が低いことからも合格者の内申平均は柏陽を上回ってきそうですね。さすがにここから倍率は下がりますが、動いても1割。志願変更後も2.0倍前後の超高倍率となるでしょう。
横浜国際は下げ基調です。IBコースの設立などこれまでも十分にカラーのある学校づくりをしていましたが、まさかの進学重点エントリー校の指定。コンセプトぶれが気になるところです。倍率の変動に影響を及ぼしたとは考えにくいですが、神奈川総合から今年も流入がありそうですので、国際コースの方はここから少し倍率が上がりそうです。
鎌倉高校はプレハブでの数年間を余儀なくされますが、特色避けが見られた昨年から人気を戻しています。冷暖房完備のプレハブ校舎への抵抗はなく、高3の時に完成する新校舎への期待が高まっているでしょうか。来年はさらに人気が加速しそうな予感もありますね。
相模原・小田原・茅ケ崎北陵は、地域に根ざした人気が手堅い印象です。1.3倍前後の倍率が今後も続くようであれば、安定した学力層での教育活動が可能になり、進学実績の躍進も期待できます。
毎年、学校間での志願者の移動が激しいSOFTSの出願倍率は隔年現象の藤沢西・鶴嶺・湘南台と隔年現象との訣別が見られた大船・七里とくっきりとカラーが分かれた印象です。
大船・七里ガ浜は隔年現象との訣別を果たした感があります。数年前に七里ガ浜が定員を1クラス分減らしたところから、高倍率の七里・低倍率の大船が定着。両校の校風も自由な七里・堅めの大船という印象が固まっていて、自由と海を求めて七里ガ浜を目指す傾向は続きます。小説/アニメ/漫画の影響もあってか、今年は七里ガ浜が例年よりもひときわ人気が高いですね。
校舎の美しさで人気を博す藤沢西は昨年度、久々の低倍率でしたが完全に元に戻しています。昨年同等と考えて受験をすると痛い目にあうかもしれません。逆に昨年度高倍率を記録した鶴嶺は、一昨年以前に近い倍率に。昨年、衝撃が走った湘南台の高倍率はさすがに落ち着きました。ただ、その前は定員スレスレだったことを考えると1.37倍は十分に高い倍率です。
七里ガ浜→大船、藤沢西→鶴嶺の志願変更は一定数いると思われます。
昨年は全て高倍率となった横浜市立の人気校、今年は少しずつ様相が変わっています。
昨年度から中高一貫生と合流する形となったサイエンスフロンティア。2020年度はクラス減の影響からか高倍率となりましたが、今年はある程度事前に織り込まれたことと、昨年の難易度の高さを懸念してか応募者数が減っています。
また、特色検査を忌避している受験生のレベルに、最もマッチしているのが市立金沢。説明会をはじめとした広報の巧さも光り、人気が集まっています。今年も1.5倍。特色検査“非”実施校No.1の座が確固たるものになりつつあります。
市立桜丘は昨年の反動か、少なめ。金沢、緑ケ丘、希望ケ丘から少しずつ志願変更が予想され、最終的には1.3倍弱の倍率で落ち着きそうです。
市立戸塚は引き続き高い人気。校舎のきれいさ、自由さ、活発な部活動が、受験生の心を捉えています。
サイフロは出願者が激減したとはいえ、桜丘を除く3校は今年も高倍率。横浜市立高校の人気は続きます。
例年最高クラスの倍率を叩き出す神奈川総合ですが、今年もその傾向に変わりはありません。
年月が経ったとはいえ、校舎は公立の中では近代的で駅近。自由で国際的な風土が受験生たちの心を捉えて離しません。
ネイティブの先生の授業を受ける機会や第二外国語の受講、また留学生の受け入れも多く、学内に居ながらにして異国情緒を味わえるのも魅力です。
注目の新設「舞台芸術科」については、まずは2.4倍の超高倍率スタート。様子見もなく、いきなり来ましたね。「神奈川総合が舞台芸術をやる」というブランドの勝利でしょう。ベールに包まれた特色検査(身体表現/演技表現)への抵抗もなさそうです。ある程度動くかもしれませんが、熱望組も多そうですので、志願者は注意が必要です。
昨年の出願は非常に「荒れた」印象でした。湘南台の1.81、元石川の1.5、追浜の1.5、鶴嶺の1.37などこれまで低倍率が続いていた学校が急に人を集め、動揺が走りました。今年はそこまでのインパクトはなく、落ち着いた出願となったように思います。
ただ、定員割れの学校は減りません。50校(2019)→52校(2020)→49校(2021)と同水準で推移しています。「特色ある学校づくり」の施策は少しずつ各校に浸透してきているようにも思いますが、高校側の取組と受験生の情報量に差異があるように感じています。
やはり発信力の低さは顕著で、受験生が求めている情報を発信できているようには到底思えません。実際の取り組みを充実させていくことはもちろん、発信力の強化が急務ですね。県教育委員会と地域を巻き込んでの広報活動が必要ではないでしょうか。
また、一方で近年高まる私立人気の傾向も続いています。今年度はコロナによる不安もあり、推薦・書類選考で早めに決めるという動きはさらに加速したと見ています。
定員割れの学校が増えている要因として、私立専願の増加も挙げられるでしょう。
丁寧な指導やサポート、充実した施設・環境、何より就学支援金の拡充が私立への流れを後押ししています。この流れは今後も続きそうですので、県教育委員会は県立高校募集定員の設定により気を遣う必要が出てきましたね。
倍率分析は以上です。
ここで以前別の記事を書こうとしていて全力調査したものの、完全お蔵入りした神奈川県立難関校の偏差値と進学実績2020の相関関係についてのグラフを公開します。
学校が偏っているのはご容赦ください。(気合が足りず……すみません。2021年実績発表後は完全版を作るかも!)
まず、“最難関国立”として東京大・京都大・一橋大・東工大の4校を挙げています。この4校のみを挙げた理由は、早慶上智との傾向の違いがより明らかになった方がいいと考えたからです。他の国公立であれば、学部によって早慶上智よりも難易度が低いということも考えられるためです。
現役進学数にこだわっているのは、最も学校の進学指導力が発揮されるのが現役進学であり、“学校の”進学実績を追うならば、高校三年間で学んだ結果を比較したいという思いがあるからです。もちろん、個人の選択として浪人を選ぶこと自体には意味があると考えていますが、学校が既卒生の進学実績を高らかに謳うのは少し違うと考えています。
“既卒”の範囲って一年だけでもないですしね。
比較するにあたって公平ではないので、現役進学、それも“率”で比較して参ります。
偏差値と難関国立進学実績率は強めの相関関係にあります。(偏差値は全県模試調べ)
翠嵐の断トツ加減も目立ちますね。“現役”で切り取ったことで湘南との差は顕著に開きます。同時に川和の進学実績は厚木を凌ぐものであり、進学重点校の指定は必然だったと言えるでしょう。“御三家”湘南・翠嵐・柏陽が順当な成果を出していることがうかがえます。
また、これを見て一目瞭然なのが、横浜緑ケ丘・サイエンスフロンティアの現役進学実績のまずさ、です。サイエンスフロンティアは、自分の進路を貫き通す受験生が多く、浪人も辞さない構えがあり、その一方で海外大学にも11名が現役で合格しています。これは他の公立高校と完全に一線を画する実績です。単純に難関国立が少ないからサイフロは実績が悪いと断定するわけにはいきません。
横浜緑ケ丘については、言い訳ができませんね。数年前から高倍率が続き、入学難易度が高い水準にあります。かなり学力を持ったメンバーを集めているにもかかわらず、難関国立を目指す層を育てきれなかったという見方も出来ます。
続いて早慶上智です。
偏差値とかなり強く相関が出ています。
逆に偏差値に対して高い実績を出しているのが、川和・横浜緑ケ丘と言えるでしょう。川和は最難関国立に続いてこちらでも高い成果。
2020年卒の川和生の強さが際立ちます。横浜緑ケ丘は、国立ではふるいませんでしたが、早慶上智では良い実績。国立を目指す層が早慶に流れたとも考えられそうです。
厚木は難関国立に引き続き早慶上智でも川和の後塵を拝し、横浜緑ケ丘にも押され気味でやや物足りない実績と言えます。
最後にMARCHです。
ここでも川和は一人勝ち。層の厚さを感じさせます。
MARCHでの実績となると、湘南・翠嵐と希望ケ丘・小田原・鎌倉あたりの実績が並ぶことになりますね。進学重点エントリー校だとMARCHは50%を超えるところが多くなってきますね。
ここでは厚木・柏陽も存在感があります。
学力向上進学重点校として目指していた進学先はどこだったのでしょうか。
ただ、ここでいう進学実績は大学の合格数のみであり、学部だったり、学科だったりは当然考慮に入れていません。
本人がやりたいことを実現するため、また学びたいことを深めるための道が大学進学であり、大学名でないことは自明ですので、そもそも大学進学実績を最重要視する意味はどこにあるのか甚だ疑問です。
果たして進学実績が良かった年に、その学校の人気は跳ね上がるのでしょうか。
「学校選びの基準は?」と聞いた時に真っ先に上がってくることも少なくない「進学実績」。進学実績を重視して選んでいるなら、倍率にも少なからず影響があるはずです。
国立と早慶上智の数値で考えてみましょう。
一人勝ちの川和は倍率爆上げ、小田原もアップ、柏陽は横ばい、厚木・サイエンスフロンティアは下げ基調が予想されます。
あれ? あまり影響ないみたいですね。
この実績を見ても川和は爆上げしない(ちょい上げ)。小田原も上がらない。厚木も下がらない。柏陽は爆下げ。
(あまり実績が振るわなかった希望ケ丘が爆上げ)
みなさん、結局進学実績見てないんですかね?
まさか直近の数値だけ見て他と比較し、変化を追っていないなんてことはありませんよね?
……(流行りの三点リーダ症候群)。
もちろん、意識高いメンバーに囲まれることの効果はあると思いますが、結局は自分次第です。望んでいるものがそこにある、という理由で志望校を選んでほしいものです。
以上、おまけの戯言でした。気にしないでください。
今回も長くなりました。そして、分析すればするほど、倍率って、人気って分かりません。
毎年分析記事を書いていく中で、「校舎がきれいで楽しそう」を上回る理由ってないのではないかと思ったり。進学実績も、教育内容も、特色ある学校づくりもそれを凌駕できない。本音なのかもしれませんが、ちょっと寂しい気もします。
でも一方で、「入りたい」という気持ちは、シンプルでいいような気もします。高校生活もその先の未来も自分でつくっていくものだし、入った場所で楽しめるようになればそれでよろしいかと。
何はともあれ、みなさんが「決めた学校」を応援したいと思います。
コロナに揺さぶられた2021受験生。
もう揺さぶられる必要なんてない。
あとは力を発揮するだけ。そのために集中しよう。
最後まで。
がんばれ、受験生。